18期のつれづれ日誌では、これまでの私の教師生活で大きな影響を与えられた言葉について紹介をしています。今回は私が尊敬する、無着成恭先生からいただいた言葉について紹介したいと思います。
無着成恭先生は山形県山元中学校での生活綴り方の実践で有名です。先生の著書である「やまびこ学校」は当時の子どもたちが綴った作文や詩がたくさん掲載され、読者を感動させます。私も学生時代にこの本を読んで深く感動したのを今でも覚えています。また、明星学園での「続やまびこ学校」の実践や「詩の授業」の実践、そして、TBSラジオの「こども電話相談室」の回答者を長年務められたことでも有名です。
16年前、教員になりたての私は、千葉県のお寺に無着成恭先生を訪ねたことがあります。「やまびこ学校」で作文を書いた子どもたちのこと、詩の授業のことなどたくさんお聞きしたいことがありました。また、生意気にも教育について自分が考えていることを聞いてほしいと思っていました。無着先生はお忙しい中、時間を作って私と会ってくださいました。しかし、いざ無着先生を目の前にすると、緊張でしどろもどろになり、自分で何を言っているのかさえ分からなくなってしまいました。先生からは、「あなたはここへ何をしに来たの?」「あなたは何も知らない!」と厳しいお言葉をいただきました。
無着先生とのお話が終わり、帰るときになって先生から頂戴したのが、
「子どもは真実を見せられた時に目を輝かせる。それは今も昔も変わらない」
というお言葉でした。その頃は私も教員になりたてでうまくいかないことが多く悩んでいました。しかし、この言葉をいただいて、もっと子どもたちが面白いと思うような授業をしていかなければならないと感じたのを覚えています。
あれから16年、今でも無着先生の言葉が私の実践の支えになっています。現在取り組んでいるNIE(新聞教育)では、児童が新聞から現在の社会についての情報を得て、自分なりの考えをもってほしいと思って取り組んでいる活動です。また、国語辞典を活用した辞書引き学習は、児童が自分の知りたいと思うことを自分から調べようとする姿勢を身につけてほしいと思って取り組んでいます。
これからも、いろんな実践に取り組んでいこうと考えています。そして、いつまでも無着先生からいただいた言葉を忘れずにいたいと考えています。
「子どもは真実を見せられた時に目を輝かせる。それは今も昔も変わらない。」

菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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