2015.09.22
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『あこがれの先生からの言葉』

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

 学生時代から小学校の教員を目指していた私にはあこがれの先生がいました。それは無着成恭先生です。無着先生は、山形県の山元中学校での「やまびこ学校」(生活綴り方)、明星学園での「続やまびこ学校」や「詩の授業」の実践などで有名です。また、ラジオ番組である「子ども電話相談室」の回答者としても広く知られていらっしゃいます。現在は大分県の大きなお寺の住職を務めていらっしゃいます。

 

 私が教員になった16年前、無着先生は千葉県成田市のお寺の住職でいらっしゃいました。どうしても無着先生に一度お会いしたくて先生のお寺を訪ねたことがあります。教育について、何も分かっていない新任教師の私を無着先生は温かく迎えてくださいました。そして、ほとんど経験のない私は、「あなたは何も知らない!」と無着先生から喝を入れていただきました。

 

 最近は無着先生にお会いする機会が無くなりましたが、ある教育雑誌などで無着先生が取り上げられたことから、当時先生から教えていただいたことを思い出しました。

 

それは、まず、「子どもは昔も今も真実を見せられたときに目を輝かせる」ということです。今の子どもは昔の子どもに比べて無気力になってきたといわれることもあります。しかし、今の子どもも本当に自分が知りたいと思うことは主体的に探究しようとしていくはずです。私も日常の教育活動において、無着先生のお言葉を胸に、授業ではできるだけ学習内容と子どもの経験や生活がリンクするように心がけるようになりました。

 

 それから、「子どもに話をするときには難しいことをやさしく、そして深みを込めていうこと」ということも教えていただきました。私は現在、NIE(教育に新聞を)の活動に取り組んでいます。新聞記事を活用する際にどうしても児童には難しい内容になってしまうことがあります。そこで、普段から難しい内容をできるだけ子どもたちが理解しやすいように噛み砕いたり、わかりやすい例をあげたりして解説をするようにしています。そして、必ず子どもたちに「なぜだろう?」「君たちはどう思う?」と投げかけ、子どもたちに考えさせるようにしています。

 

最後に、「やってあげるではなく、させていただくのである」というお言葉です。教員生活も17年目になると、どうしても慣れが出てきてしまいます。その自分を戒めるために、この言葉を自分の机に貼り付けていつも見られるようにしています。今、受け持ちの子どもたちがいるから、自分は先生という仕事をやることができる。だから、子どもたちのために頑張らなければならないと思うようにしています。

 

 無着先生からこのほかにもたくさんのことを教えていただきました。その教えをもう一度思い出し、これからの教員生活も頑張っていこうと思いました。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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