通常学級で特別に支援を要する児童が多く在籍している場合、通り一辺倒の指導ではうまくいかないことが多くあります。現在は授業のユニバーサルデザイン化の必要性が叫ばれ、様々な教科等で実践されていますが、支援の要する児童への対応がその他の児童の学びやすさにもつながるということで大変注目されています。今回の報告では、全ての児童が学びやすくなるための工夫を行うことで、全児童のスタートをそろえ、授業に積極的に参加できるようになった事例を示したいと思います。
私が担任していた学級では、友達に自分の考えたことを伝えたり、自分が思ったことを話したりすることが苦手な児童が多く在籍していました。例えば、朝の会のスピーチでは、自分が言いたいことは決まっていても、それをどのように伝えてよいか分からない様子が見られました。また、授業中に自分の考えを発表できる児童が限られており、大部分の児童はほとんど発言をしない状態でした。これでは、児童が積極的に授業参加を行っているとは言えないので、何らかの対策が必要だと感じました。
そこで、ヒントになったのが特別支援教育の研修会で学んだ「スタートをそろえる」という考え方でした。例えば3年生国語の学習で、主語と述語だけの文に修飾語をつけるという学習を行った際に、単に「修飾語のついた文を作りましょう」ではわからない児童が多いと考えられたため工夫を行いました。まず、児童が興味を示す写真を示し、クラス全員で共通して取り組める場面を設定しました。そして、ワークシートを作成し、「○○が、・・・した。」という主語と述語だけの文を書き、児童が主語と述語の間にいろんな修飾語をかけるように工夫しました。このようにすることで、ほとんどの児童が自分なりに考え、修飾語のついた文を書くことができました。
さらに、自分が作った文を友達に発表をするために、発表のモデルもワークシートに示すようにしました。「私は・・・・・という文を考えました。修飾語は・・・・・です。」というようにモデルを示すようにすることで、普段はなかなか発表できない児童もきちんと発表できるようになりました。
今回の工夫のように、何かしらの課題に対して児童全員が取り組めるための土台となるものを作ることで(今回の例ではワークシートや発表のモデル)児童たちの学習に対するスタートがそろい、どの児童も進んで学習に取り組めるようになると考えています。これからも、児童全員が進んで学習に参加できるようにするための工夫を考えていきたいと思います。
(写真は国語の授業で修飾語を学ぶ際に用いたワークシートです。)

菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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