今期のつれづれ日誌では、特別に支援を要する児童が多く在籍する学級を受け持った際に取り組んでみた実践を紹介しています。これまで担任した学級の中で、教師の話を集中して聞くことができなかったり、授業中に奇声をあげたりしてしまう児童が多い学級がありました。授業をしていても学習に集中しない、忘れ物は多い、遅刻する児童は多い・・・など、困ったことが多々ありました。私自身どこからどう手をつけてよいかわからない状態でした。すべてを注意するとなると、1日中叱責を繰り返すことになり、児童とのよい関係が築けない心配もありました。
そこで考えたのが、とにかく1つのことに絞って児童と取り組んでみようということでした。ターゲットに定めたのは「給食のマナー徹底」です。最初のうちは、給食の時間になっても着替えをしない、給食中におしゃべりやたち歩きが止まらない、ごちそうさまをしても延々と食べ続けている児童がいる、食器などの片付けが雑でばらばらになってしまう・・・など、困った点が多くありました。
それらを改めて、きちんとマナーを徹底させました。児童の生活班の給食リーダーという役を決め、給食のゴミを落とさないようにさせたり、食器を丁寧に片付けさせたりしました。また、時間を守ることを徹底し、「いただきます」「もぐもぐタイム」(おしゃべりをしないで食べる時間)「ごちそうさま」「はみがき」をきちんと行うことを何度も何度も繰り返し指導しました。
すると、最初のうちはほとんどの児童が時間通りに行動できなかったところが、3分の1ぐらいの児童ができるようになってきます。その児童たちを見本としてさらに実践を続けると、半分以上の児童が時間通りに行動できるようになってきました。もちろん、特別に支援を要する児童は時間通りに行動するのが難しいため、完璧にはなりませんでしたが、給食の時間のマナーがほぼ守られるようになってきました。この実践の後に、給食以外の取り組みにも広げていき、少しずつ学級がまとまっていくようにしていきました。
今回の実践を通して、困難なことが多い場合には、とにかく1つにターゲットを絞って、徹底して取り組んでいくことが効果的であることがわかりました。兎角、問題の多い学級では、注意や叱責が多くなってしまいます。しかし、それが続くと、児童の自己肯定感が下がり、学級のまとまりが悪くなってしまうという経験を私自身がしてきました。今回のように、ある1つのターゲットから突破口を開いていくことが問題のある学級を立て直していく方策になると考えています。

菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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