2015.01.19
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1.17から20年 阪神淡路大震災

兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV) 関田 聖和

  

 1995.1.17からもう20年になります。

あっという間に過ぎ去った感じです。

「えらい,誕生日になったなあ。」

と,缶コーヒー片手に,父と談笑したことを思い出します。

 次の日の1.18が,父の誕生日だったのです。

その父も,もう亡くなっていません。

 

 あの震災がなければ,様々なしんどい経験はしなかったことでしょう。

でもあの震災がなければ,今の私はいません。

 複雑な気持ちです……。

 

 

忘れたい……。しかし……。

 震災から数年後,一生懸命に忘れようとしました。

1.17を語り伝えようと,校内でも学習が進んでいました。

 しかし,PTSD症状を訴える子ども。

また海外で起きた地震のニュースを見て,

フラッシュバックを起こす子どもなど,

震災の学習そのものに,慎重さを求められました。

 その後,震災後に生まれた,いわゆる震災未経験の子どもたちが

入学してきました。

 それから学校で取り組む防災学習のスタンスが変わりました。

震災当時の写真を

「すげえ!高速道路,ビルが倒れてる!」

「めっちゃ,燃えてるやん!」

と,それまでには,考えられないような言葉が,子どもたちから出てくるのです。

 これでは,ダメだ。と思うものの,なかなか直接,震災に直接ふれる学習に

取り組むことが,私には辛かったのです。 はい。避けていましたし,逃げていました。

 校内での震災集会も,目を背けました。見れなかったのです。

震災を経験した教師としては,ダメな人でしょう。取組も,これはこれで大事なのですが,

  昨年の記事は,こちら → 1.17から3.11へ 防災学習「クロスロード」の取組

といった感じです。

 

 

20年を期に……

 1995.1.16に,打合せをした後輩たちと1.17の深夜まで,

車を走らせ,自宅に戻ったのは,3時過ぎ……。当時4年生の担任をしていた

わたしは,書院ワープロを開き,ごんぎつねの初発の感想を入力していてうたた寝。

 

 ドーンという大きな音で目が覚め,オレンジ色に光っている窓を見ると,

そちらに,テレビやパソコンのモニターが飛んでいきました。

本棚が倒れ,わたしは本に埋もれてしまいました。

でも,揺れているさなかに立ち上がり,地震だと気づきました。

 部屋の中はぐちゃぐちゃ……。

大きな声で,母親と妹を呼び,無事を確認しました。

 揺れが収まり,部屋を出ようとしました。

 残念ながら,わたしの部屋の扉が,くの字に曲がり,出れませんでした。

とりあえず,妹に母を外へ連れて出るように指示しました。

 

 13階建ての10階に住んでいたわたしたちは,生きていました。

その後,2軒隣のおじさんが,仕事で使っているバールで,わたしの部屋の扉を

つぶしてくれて外に出ました。

 辺りは真っ暗なので,何だか分かりませんでしたが,住宅のみんなで

駐車場に集まりました。

 うっすらと明るくなってから,住宅内の知り合いを助けようと

いうことになり回りました。

 ひとり暮らしのお婆さん,友人など,助け続けました。

 新聞配達をしている父親が帰ってきてから,避難です。

これは,どこに行って良いのか分からず,様々な場所へ行っては

移動するの繰り返しでした。

 

 そして地域のコミュニティーとして堂々と建っていた建物へ。

そちらでお世話になることになりました。

 まだ20代だった私は,大学生を中心とするボランティアの

リーダーに自然となっていました。

 9時過ぎ。学校へ出勤。

まだ管理員さんと1名の先生しか来ていませんでした。

 鍵を開けるために,職員室へ。何が何だか分からない状態になっていました。

何とか鍵を探し出して,校舎を開放しました。

 体育倉庫にあったマットを出して,運動場に座られていた方に提供しました。

 管理員さんと相談して,運動場から,当時最上階にあった講堂へ

みなさんを案内しました。

 寒くて少しでも,ましだろうと思ったのです。

 しかし,数時間後もう一度外へ出てもらうことに……。

 講堂の床が,少しずつ沈み始めていたからです。校舎がダメになっていて,

床が抜けそうだったのです。あの地震は,学校の校舎をもダメにしていました。

 とりあえず,学校の方が落ち着いてから,クラスの子どもたちを探しに行きました。

と同時に,近隣の友人たちの家にも寄り,声をかけていきました。

 声をかけてもらった友人には全く会えませんでした。

しかし夜,避難所で再会。

 友人みんなが,それぞれの家を訪れていたようで,みんなで探し会っていたことに,

笑いが起こりました。

 クラスの子どもたちの安否を確認できたのは,夜の9時前だったと思います。

すでに,「全員無事です。○○に避難しています。」と,遠くへ出かけた

子どもたちもいました。

 学校で出会った子どももいます。ひとまずほっとしました。

 

 しかし,子どもたちを探している途中,わたしが尊敬していた先輩の家が

燃えていたのです。

 地域の子どもたちから人気があり,私の顔と何となく似ていたこともあり,

おにいちゃんと呼んでいた先輩です。

 先輩のお母さんが泣いていました。中にいると……。

わたしや先輩の友人が中に入ろうとしましたが,周囲の方々に全力で

止められました。

 地域の子どもたちは,無言で火を見ていました。

 

「あなたは,あなたの使命がある。

 今,あなたがしなくてはいけないことは,何なの!

 早く行きなさい!」

 

と先輩のお母さんに言われ,わたしは,子どもたちを探しに行きました。

 

 神戸市東灘区の2号線よりも少し北側が校区だったところです。

 1階がつぶれ,なくなっていたアパートを見ました。

うちのクラスの子どもの家です。もちろん,この子ども以外の家も,

たくさん壊れていました。

 どうやって助かったんだろうと思いながら,通り過ぎました。子どもには,

学校で会っていたからです。

 

 しかし,後日話を聞くと,その下に保護者が埋もれていたのです。

わたしは,それを確認もせずに,子どものことしか考えずに過ぎ去ったのです。

もしかすると,助けられたかも知れないのに……。

 

 後輩のお姉さんが,家の下敷きになっている。

 友人がすでに遺体として運ばれた。

……と,どうして良いか分からない情報がその日のうちにどんどん入ってきました。

 避難しているところに戻ったのは,22時前だったでしょうか……。

何回も余震に驚かされながらの涙の家庭訪問でした。

 

 避難しているところで,学生たちと話をしていると,

22時過ぎ,岡山県からトラックが到着しました。

おにぎりやお茶,日用品などが届いたのです。

 そのドライバーによると,地震をニュースで見て,地域に一斉に声をかけ,

とにかく運んできたと。

 そのおにぎりは,冷たかったのを覚えています。でも,ドライバーさんたちの

「大丈夫や,負けたらあかん。冬は必ず,春となるんや。」

と……。

 まずは,お年寄りと子ども,女性ということで,配布させていただきました。

配布が終わると,次は,広島からのトラックがやって来たのです。

自然に,涙が出たのを覚えています。

 

 そして全国からたくさんの物資が届けられました。

 不安で不安で仕方が無かったと感じる暇は,わたしにはありませんでした。

あっという間に終わった1.17。何度もやってくる余震にも,

お年寄りや子どもの不安を取り除くように,動き回っていたからです。

 

 ここまであっという間に打ちました。

かなり校正で削除してしまったところもありますが,わたしの震災当日です。

 この内容は,まだ1回しか話したことがありません。

20年を期に,やっと話せるように,動けるようになったのかも知れません。

 

「阪神・淡路大震災から20年。それぞれの人に,それぞれの震災がある。」

 

という言葉を先日聞きました。

 わたしよりも生きていた方がいい人がいたかもしれません。

でも何の因果か,わたしは,生きています。

 

 だから亡くなった方々の分も,一生懸命に生きていかなくてはいけないのでしょう。

 わたしも,勇気を振り絞って,少しずつ話をしたいと考えられるようになりました。

伝えられるところからですが,目の前の子どもたちに,そして若い先生方に,

阪神・淡路大震災を伝えていくことにします。

 写真や映像も一切見ていませんでした。

思い出したくないので,真に振り返るのは,当時以来です。

 

写真は,阪神・淡路大震災「1.17の記録」より掲載しています。

わたしが住んでいた周辺と校区の一部です。

他にも,たくさんの資料があるので,防災学習で使うことができるでしょう。

わたしなりに,頑張ります……。 

 

 

神戸で行うセミナーの案内です。

2015年2月14日(土)講師 土作彰先生
http://kokucheese.com/event/index/250921/

 2015年3月29日(日)講師 中尾繁樹先生・菊池省三先生
http://kokucheese.com/event/index/250923/

 2015年5月2日(土)講師 横山験也先生・古川光弘先生・俵原正仁先生
http://kokucheese.com/event/index/250926/

 2015年10月17日(土)講師 野口芳宏先生・横山験也先生
http://kokucheese.com/event/index/250917/

 みなさんといっしょに学びたいです!

関田 聖和(せきだ きよかず)

兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)
主な単著:『楽しく学んで国語力アップ!「楽習」授業ネタ&ツール』(明治図書)、『新学期から取り組もう!専手必笑 気になる子への60の手立て』(喜楽研)、『専手必笑!インクルーシブ教育の基礎・基本と学級づくり・授業づくり』(黎明書房)、国語・算数が苦手な子どもへの個別支援プリントシリーズ(全10冊:清風堂)
その他、特別支援教育すきまスキル(明治図書)等共著多数。

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