2014.10.27
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『夢中になれる教材』

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

   今期のつれづれ日誌では、現在、勤務校で課題研修として取り組んでいる「特別支援教育」についての実践や私自身が取り上げてきた方策などを紹介しています。今回は、学習意欲を示さない児童を学習へいざなうための工夫について報告します。

 

 数年前より、中部大学准教授でいらっしゃる深谷圭助先生にご指導をいただきながら、辞書引き学習に取り組んでいます。辞書引き学習とは、国語辞典や漢字字典を活用する学習で、辞書の中から知っている言葉や漢字を見つけ、その印として辞書のページに付箋をつけていく学習法です。この学習を通して言葉の力がつくことはもとより、自分で学ぶ力がついてくるということを深谷先生は指摘していらっしゃいます。私も、担当するクラスで辞書引き学習を実践し、そのことをひしひしと感じています。

 

(辞書引き学習について詳しくは以下をご覧ください)

 http://www.manabinoba.com/index.cfm/6,18282,14,html

 

 辞書引き学習をスタートしようと思ったきっかけは、まさに特別支援が必要な児童を担当したことでした。クラスの中に奇声を上げたり、席に座っていられなかったりする児童が何人もいて、授業が成り立ちにくいことがありました。そこで何か落ち着かない児童も取り組める学習はないかと考えていたところに辞書引き学習と出会いました。

 

 子どもは(特に男子は)、ものを集めることが好きです。辞書から知っている言葉を見つけて付箋をつけていくことで、好きなシールなどを集めているのと同じ感覚を味わわせることができます。また、付箋をどんどん増やすことで、自分のがんばりが目に見えるのでさらにやる気が出てきます。また、普段、注意をされたり叱られたりすることが多い児童に、褒める材料を増やすことができます。特別支援を要する児童の多くがこの辞書引き学習を実践することができました。もちろん、ほとんど取り組めない児童もいましたが、辞書引き学習が特別支援教育にも効果を示すことが分かりました。

 

 特別支援教育の視点から考えると、この取り組みは「学習方法の構造化」であり「参加の促進」への取組であると考えます。学習方法を辞書から言葉を見つけて付箋を貼るという単純な作業にすることによって、児童が迷いなく、興味をもって取り組むことができました。また、どの児童も取り組める学習であるので、普段はなかなか学習に参加できない児童も辞書から言葉を見つけて友達と発表し合ったり、交流したりすることができます。学習への参加を促進する取組になっていると考えます。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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