2014.10.08
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『時間の構造化』

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

 今期のつれづれ日誌では、現在、勤務校で課題研修として取り組んでいる「特別支援教育」についての実践を取り上げてみたいと思います。近年、特別支援教育についてクローズアップした実践が数多く見られるようになりました。この「つれづれ日誌」においても特別支援教育を専門にされる執筆者の先生方が多くいらっしゃいます。以前、執筆者のお一人でいらっしゃった東京のK先生には、個人的にご指導をいただき、クラス経営に役立ててきたこともありました。

 

 これまでの教員生活を振り返ってみると、私自身、あまり特別支援教育の視点を取り上げた実践を行ってきませんでした。前任校に勤務していた時に、高機能自閉症やADHDの発達障害をもつ児童を受け持ったことがあったのですが、保護者の方のフォローもあり、クラスの中でそれほど苦労をすることなく授業や生活指導を行うことができました。しかし、その後、通常学級の中にも発達障害をもつ児童の特徴を示す児童と多く出会うようになる中で、特別支援教育の視点をもちながら教育にあたる必要性を感じるようになりました。そして、以前担任をした発達障害をもつ児童にももっとよい指導ができたのではないかと反省しました。これから、特別支援の視点を取り入れた実践を心がけていこうと考えています。しかし、私自身が特別支援教育については専門ではないので、実践の中で数多くの試行錯誤や失敗もあります。そのようなこともご報告させていただければと考えています。

 

 今回は、「時間の構造化」の大切さということを報告したいと思います。「構造化」とは、特別に支援が必要となる児童に対して、その児童が活動しやすくなるようにする方策のことだそうです。以前、担任していた学級で、時間が守れない児童が多かったことがありました。児童の様子を観察すると、例えば給食の片付けの際に、すぐに取り組むことができずにいつまでも友達とおしゃべりをしていたり、友達のところに行って遊びだしたりする児童が多いことに気が付きました。

 

「時間を守る」ということは、学級経営をする上でもっとも大切なことの一つであると考えています。児童には、「〇時〇分までに片付けて席に座りなさい!」と厳しく指導しました。しかし、なかなか効果が表れません。私は焦って、児童を叱責することが多くなりました。ここで気が付いたことは、児童は叱責されて反省をするわけではなく、大変嫌な顔をし、どうして叱られたか分からないという表情を示すことです。叱責をすることがあまり効果的ではないと気が付きました。

 

 そこで、取り上げたのが「タイムタイマー」です。残り時間が赤色で示され、時間が終わるとブザーが鳴るようになっています。これを児童に示し、「5分で片付けをしましょう。ブザーが鳴った時には席についているようにしましょう。」と指示をしました。すると、児童は給食の片付けをしながら、ちらちらとタイムタイマーを見ていました。そして、時間が少なくなってくると自然に急いで片付けをするようになりました。全員が片付けを終えるところまでは行きませんでしたが、以前に比べて時間通りに片付けができるようになりました。このタイムタイマーによる「時間の構造化」が、時間を意識しにくい児童には効果的であるのだと感じた経験でした。

 

 正直な感想を言うと、時間を測って児童が動くようにさせるという指導があまり好きではありませんでした。自分を自分で成長させることができる「自立型の人間」に育てることが私の教師としての大きな目標です。そこで、児童には自分で考え、判断して行動できるようになってほしいと願っています。しかし、時間を守ることに関して意識ができにくい児童には、前述したような方法を繰り返しながら、「自分はきちんとやれた!」という成功体験を積ませることが大切なのだとも感じます。

 

 これからも、よりよい指導を目指していきたいと思います。次回は児童を集中させるための方策について報告をしたいと思います。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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