2014.08.14
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「叩かれないと分からない」って,本当?

兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV) 関田 聖和

残暑厳しくなっています。みなさん,お変わりはないでしょうか。

わたしも一日を大切にしながら,過ごしています。

 

 

体罰

 夏の教員研修に,体罰がテーマとしてあげられていました。

叩かれないと分からないという考え方には,否定的なわたしです。

 そもそも子どもを育てる時に,叩いたり,蹴ったり……。

暴力は,必要なのでしょうか。

 痛い目をみないと分からないという言葉を聞きます。

これが,叩かれないと分からないとは,同義ではありません。

痛い目をみないと分からないことは,あるかもしれません。

つまり,苦い経験です。

では,叩かれないと分からないということは,あるのでしょうか。

 わたしが考える答えは,「ありません」です。

 大抵のことは,叩かれなくても分かると考えているからです。

 人のものを盗ってはいけない。

 人に暴力を振るってはならない。

 など,叩かれなくても悪いことだと分かります。

 

 

威厳を保つため?

 若いころに,このような話題が上がったことがありました。

そこである指導者が,

「威厳を保つためだよ。なめられたらダメだからさ。」

 と強い口調で言われました。

褒める,注意,叱る,怒る……。

 叱ることには,体罰は要りません。

ある意図をもって,注意し,目標としているところへ導く行為ですから。

叱る人の感情も冷静です。そうでなければ,それは,怒っています。

よく叱ると怒るは,違うと,若手に話すことがあります。

違いの判断規準は,簡単に言うと感情でしょう。冷静か否かです。

 また,感情が高ぶっていれば,それは,もう相手と同等か,それ以下です。

 しかし,叱る,そして,注意,褒めるというのは,違います。

特に褒めることは,次元が変わります。

褒めることは,上の立場から下の立場へ行う行為です。

つまり,権威を高める行為なのです。

 だから,威厳を保つためならば,その最大の早道は,

褒めること

だと考えています。

 

 

躾という名の叩く行為

 体罰の議論は,大方,否定派が勝利するでしょう。

しかし,家庭でのしつけとなると,違うようです。

叩いて躾をするということに対して,否定派のわたしです。

  突然,額に何針も縫った子どもや唇を腫らした子ども,

鼓膜が裂けたという子どもが登校してきたことがあります。

 子どもたちは,生きるために,保護者から見捨てられてはならないことを

本能的に理解していますから,

 わたしが,悪いことをしたんだ……。

と,話します。

 しかし,このような場合でも,

本当に叩かれないと分からないのでしょうか。

 

 

親業も経験値を積みながら……

 すぐにたたいてしまう性格の方は,叩かないような手立てを

模索しないといけません。

そうして親業も経験値を積んでいかないといけないのでしょう。

 ある方法を用いても,子どもたちが言うことをきかないのは,

本当に子どものためなのか……と,深呼吸を一つして考えてみれば

冷静になれるかもしれません。

 言うことを聞いて欲しいことの多くは,大人,自分の都合ってことが

見えてきます。

 現在わたしにも,4歳2か月と1歳0か月の子どもがいます。

まあ,本当に次から次へとやらかしてくれます(笑)

 でもこれは,大人になるための経験値を積んでいると考え,

少々のミスは,受け入れないとダメだと考えています。

成功の数より,失敗の数の方が多いからです。

 もちろん,

・命に関わること

・人が生きる権利を奪うような行為

・3度言ってもしないとき(大人の都合ではなく)

は,大きな声を出していいでしょう。でも叩くのは,ダメです(笑)

 

 

「ふうん,そうくるかあ。」

深呼吸をして,

「ふうん,そうくるかあ。」と思いながら,

「どないしたん?」

と笑顔で問います。

そして,状況を聞き,適切な行為を教え,

いっしょにやってみせればいいでしょう。

これを積んでいけば,いらいらして怒りたくなる場面も減ってきます。

 もちろん,発達の凸凹も,関係するので見極めなくてはなりません。

まだ出来ないと感じたら,

そのことに繋がる一つ前の段階の経験を

積ませてあげたいものです。

  叩いて躾をする人の中に,旦那にいらいらしていて,

子どもを叩いたという声も聞いたことがあります。

また子どもが成長すると,小さいころよりも,体力もつくので

叩く力も自然と増すようです。

そうです,それが虐待につながります。

 そして,子どもと親の力の強さが逆転したら……

家庭内暴力にもつながり,反社会的行為につながることもあります。

 

 

「先手必笑」

 子どもたちが,何か失敗,いけないことをしたら,

「先手必笑」がキーワード。

まず笑って,

「どないしたん(どうしたの)。」

と聞いてみては,いかがでしょうか。

 時には,吹き出してしまうような,子どもらしい話も聞けますよ。

ああ,自分の子どものころもやったなあって……(笑)

 子どもを育てることは,すぐに結果は出ません。

ゆっくりとのんびりと,取り組まないといけないものなのかも知れません。

 

関田 聖和(せきだ きよかず)

兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)
主な単著:『楽しく学んで国語力アップ!「楽習」授業ネタ&ツール』(明治図書)、『新学期から取り組もう!専手必笑 気になる子への60の手立て』(喜楽研)、『専手必笑!インクルーシブ教育の基礎・基本と学級づくり・授業づくり』(黎明書房)、国語・算数が苦手な子どもへの個別支援プリントシリーズ(全10冊:清風堂)
その他、特別支援教育すきまスキル(明治図書)等共著多数。

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