2014.05.22
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今こそ,個別の指導計画作成のすすめ

兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV) 関田 聖和

 大型連休が明け,ジェット気流のように上り調子の学級・学年。

ルールもシステムも確立したはずなのに,なんだか下降線気味の学級・学年。

今こそ,実態把握の絶好のチャンスです。

学級目標を具体的にする

 「あかるく元気なクラスにしよう」

などのような学級目標を立てていることでしょう。

これを始業式から今までに取り組んだ,学級目標達成のための手立てを

書き出してみましょう。

箇条書きで挙げていくと,

自分の実践から,強くこだわって取り組めたことと

意識はしているものの具体的に取り組むことができなかったこと

が,見えてきます。
 

 

ばっさりと捨てることも視野に入れる

 4月当初は,そう思っていても,実際に子どもたちを目の前にすると,

違った。ということがよくあります。

 だから,取り組むことができなかったのは,

自分自身だけのせいではない

ことを知っておいてください。うまくいかなかった取組を,時には,

ばっさりと捨てることも視野に入れて,

学級づくりの再計画をしなくてはいけないでしょう。

 一年間,あるのですから,焦らずゆっくりと,

見通しをもって取り組むことができればいいのです。

そのためには,何度も確認することが大事でしょう。

 

 学校で,学級づくり案などを作って,校内研修に使うところは多いでしょう。

次に見るときは,いつですか。

 もしかして,来年度作成時まで見ない……というところも。あるかも知れません。

ぜひ,今の状態を確認するために,見直したいものです。

自立させるための教育

 学級づくりの手立ての確認の時に考えたいことは,

「何のために教育しているのか」

ということではないでしょうか。

 答えはたくさんあるだろうけれど,わたしは,

自分が生きていく上で,人に迷惑をかけずに

        行動することができること

つまり,

自立すること

だと考えています。

 先日S.E.N.S兵庫のセミナーで,品川裕香先生から自立について

教えていただきました。

(1) 生活自立(身辺自立)

(2) 経済的自立(給料をもらうだけでなく,その組織で活動すること)

(3) 社会的自立(苦手な人と共に行動できること)

(4) 精神的自立(自分ができること,他人の力を借りること,他人に力を貸してあげること)

この4つがあるそうです。

自立させるために教育するための一番の近道は,

学級・学年づくり

なのです。

 

 

子どもたちが思うマイナス面,それを補う面を考える

 今,学級がうまくいっていないところもあるかもしれません。

先生方に子どもに対しての困り感があるのなら,こちらを読んでみてください。

子どもたちの言動には,必ず理由がある

そして学級が,がたがたした雰囲気になってしまった場合,

少し子どもの立場に立って,

子どもたちが思うマイナス面を想像してみましょう。

これをリスク要因と呼びます。

 例えば,「立ち歩いてしまう」のは,

・勉強が分からない

・教室環境が何か落ち着かない

・友だちとの相性が悪い

・学習以外で気になることがある

また少し専門的な視点になりますが,

・授業の進め方が,その子どもの学び方に合っているか

・その子どもの見え方,聞こえ方はどうなのか

・体のバランスや体の軸はどうか

・板書の写し方,鉛筆の持ち方はどうか

・全体を把握してから取り組むタイプか,順を追って取り組むタイプかどうか

・注意力,集中力,衝動性はどうか

・ワーキングメモリや短期記憶はどうか

などの確認をしてみてはどうでしょうか。

 もちろんまだまだ細かく見ると,ほかにもあります。

まずはここから始めて見ると良いのではと思っています。
 

 

だからこそ,個別の指導計画の作成を!

 そこで,個別の指導計画の登場です。

もう存在が当たり前になっているはずなのですが,学校によってはまだまだなようです。

様々なフォームがあるようですが,

・取り組んでよかった手立て

・取り組んで失敗した手立て

も,記録に残しておくといいです。

 本校の個別の指導計画は,チェックリストを盛り込み,その後,

おおむねその子どもへの手立てが自動で出るようにしたものを作っています。

       手立ての見える個別の指導計画を

そのため,特別支援教育コーディネーター(わたしですが……)がいなくても,

手立てを取ることができるようにしています。

 もう4月に作成しているのなら,目標などの見直しもいいでしょう。

個別の指導計画の作成,いや,更新をしてみましょう。

 そして,校内委員会(ケース会議)で,子ども一人ひとりのリスク要因を想像し,

それを解消する要因,補う要因を見つけていきましょう!

 

関田 聖和(せきだ きよかず)

兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)
主な単著:『楽しく学んで国語力アップ!「楽習」授業ネタ&ツール』(明治図書)、『新学期から取り組もう!専手必笑 気になる子への60の手立て』(喜楽研)、『専手必笑!インクルーシブ教育の基礎・基本と学級づくり・授業づくり』(黎明書房)、国語・算数が苦手な子どもへの個別支援プリントシリーズ(全10冊:清風堂)
その他、特別支援教育すきまスキル(明治図書)等共著多数。

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