2013.12.25
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『ディスカッションができる素材としての新聞活用』

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

 

 先日、PISA2012の結果が公表されました。日本の成績はこれまでで最高で、読解力も改善されたとの報告がありました。私はこれまでNIEに取り組み、どのように学校の中で新聞を活用していくかを考えてきたので、PISA型読解力と新聞活用について大変興味がありました。

 

 そこで、元国立教育政策研究所の総括研究官でPISA調査に中心となって関わってこられた、有元秀文先生に教えを請うことにしました。有元先生の著書を読むと、新聞を活用することで、PISA型の読解力が育成できることが分かります。

 

   先生の著書『まともな日本語を教えない勘違いだらけの国語教育』(合同出版)を参考に新聞の活用が有用であることを私なりにまとめてみました。

 

1.「国語はすべての教科の基礎になる教科なのに、他の教科に生きていない」(P.26)

→新聞記事の読み取りは国語だが、内容は様々な教科や領域のものになるので、他の教科等とあわせて指導できる。

2.「文章の目的は何かという質問をしない」

 →新聞スクラップなどを通して、記事を書いた記者が何を伝えたいのかということを考えることで文章の目的を考えるトレーニングになる。

3.「オープンエンドの問いを出すことが大切」

 →新聞記事に取り上げられた内容は、答えが一つのものではなく、多様な考えを出すことができる。

4.「文章を読むのは、理解→解釈→クリティカルリーディングの段階を踏むことが大切。」

 →新聞記事のスクラップ活動を通して、この流れの学習を行うことができる。

5.「非文学的な文章を読む力が重要。分かり切った説明文ばかりが教材になっている。」

 →新聞は多様な内容の記事があり、児童の興味関心を高められる。

6.「文章を読む際にバックグランドナリッジ(文章の背景)を確認する。」

 →バックグランドナリッジを得るために新聞記事が活用できる。

7.「ディスカッションのために質の高いテクストが必要である」

 →新聞記事の中には、現代の日本(世界)が抱える様々な問題に関する記事があるので、ディスカッションに使える資料が多い。

8.「一面的・単眼的ではいけない。」

 →新聞記事から多様な考え方を知ることができる。また、考えを構成するお手本にできる。

9.「授業の中に「なぜ?」という問いがない」

 →新聞記事の中には、「なぜ?」と問える内容の記事が多くある。(例:臓器移植法・特定秘密保護法案)

10.「指導のポイントは文章を正確に理解し、それを元に自分の考えを構成すること」

 →新聞記事は短文で構成されており、正確に理解するトレーニングに適している。また、内容が多岐にわたるので文章を元に自分の考えを構成する意欲が高まる教材となる。

11.「主題が分かることは文章が分かることであるので、そのような指導が大切。」

 →新聞記事は逆三角形の書き方をしているので主題を読み取りやすい。また、見出しなどからも読み取りやすい。

 

 有元先生と、以上のようなことについてお話をすることができたので大変勉強になりました。しかしながら、有元先生から「菊池さんは、NIEを通して新聞を読む・表現するなどの基本的な事項ばかりを重視していて、子どもたちがディスカッションをする素材としての視点が弱い」と御指摘いただきました。

 

 確かに、これまでの指導で、新聞を活用して児童が文章を読んだり書いたりするスキルばかりに注目していたように感じます。これから、ディスカッションの素材としての新聞活用をこれまで以上に考えていきたいと思います。 

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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