本校ではさいたま市の研究指定を受けて「学校における食育」の研究に取り組んでいます。食育については平成17年の食育基本法制定から様々な方策がとられ、学校教育においても栄養教諭制度が創設されたり、学習指導要領にも食育の視点が盛り込まれたりしました。食育は今では日本全体の大きな課題の一つだと言えます。
本校はさいたま市の学校の中でも敷地が広く、学校内に広い教育ファームがあります。そこで、年間を通して野菜が栽培されています。また、地域の方の協力を得て、学校のふれあい田で全校田植えや稲刈りが行われています。食育が今のようにクローズアップされる前から学校ファームを中心とした体験活動が行われていました。
また、学校の栄養職員が先進的に児童に食を味わわせる取組を行っています。その一例として、各学年の児童が給食の食材の調理の一端を担う体験をする活動が挙げられます。自分で給食の食材にかかわることで児童の食への関心が高まります。
私の担任をする1年生では、トウモロコシの皮むき体験が行われました。体験を行う前に、児童は学校ファームへ行き、トウモロコシがどのように育てられているのかを見てきました。
「先生、トウモロコシはとっても背が高くなるんだね。」
「こんなふうにできるなんて知らなかった」
と、感想を話し合っていました。
学校ファームへ行ったあとは早速トウモロコシの皮むきに挑戦をしました。厚い皮をむいていくと、きれいなトウモロコシの身が見えてくるので、子どもたちは歓声を上げていました。いつもなら学習に進んで取り組めない子も夢中になって皮むきをしていました。
「先生、早くこのトウモロコシを食べたいなあ」
「どんな味がするかなあ」
と、大変よい表情で活動することができました。その日の給食には子どもたちが皮むきをしたトウモロコシが出され、みんなで喜んで食べることができました。普段は野菜を残すことの多い子も残さずに食べることができました。
食に関する指導は理屈だけでは理解しにくいところがあると感じます。好き嫌いなく食べることは大切だということは分かっていてもなかなか実践できないものだと思います。しかし、本校での実践のように、豊かな体験を行うことによって、児童が直接食材などに関わることで、食に関する関心が高まり、自分の食生活を見直す意欲につながると考えています。これからも豊かな体験をたくさん味わわせていきたいと思います。
しかし、食に関する指導について、課題もあります。それは、豊かな体験が教科等の学習に必ずしも結びついていない点です。体験を体験だけで終わらせないために、きちんと体験を学習につなげていくことが必要だと考えています。昨年度、ねぎを食べる体験を社会科につなげて指導をする授業を行いましたが、そのような取組をこれからも広げていきたいと思います。

菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
同じテーマの執筆者
-
兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)
-
京都教育大学附属桃山小学校 教諭
-
大阪府公立小学校 主幹教諭・大阪府小学校国語科教育研究会 研究部長
-
戸田市立戸田第二小学校 教諭・日本授業UD学会埼玉支部代表
-
小平市立小平第五中学校 主幹教諭
-
西宮市教育委員会 勤務
-
明石市立高丘西小学校 教諭
-
木更津市立鎌足小学校
-
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
-
愛知県公立中学校勤務
-
大阪大谷大学 教育学部 教授
-
神奈川県公立小学校勤務
-
寝屋川市立小学校
-
明石市立鳥羽小学校 教諭
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)
「教育エッセイ」の最新記事
