先日,2つの中学校,3つの小学校・3つの幼稚園の研修でお話をさせていただきました。
先生方が拙い話を熱心に聴いてくださり,本当に有り難いなと思いました。
聴き手が上手だと,話し手も滑らかに話すことができるそうです。わたしも少し時間が足りなかったなって,
感じるぐらい,あっという間の時間でした。その中から1つ話題にしてみます。
その子どもが取る行動には,必ず理由がある
子どもが取る行動に対して,一喜一憂してしまうことがあります。でも,ちょっと待った!なのです。
普段はできていても,ある場面になると,できない子どもがいます。
つまり不適切な行動をを取る子どもたちのことです。
A) 自習課題でも,真面目に取り組む子ども。
B) 自習課題になると,さぼってしまう子ども。
このような場面に出合ったことはありませんか。
でもそのような行動を取るのには,
必ず理由がある
のです。それは,経験や心情によって差があります。
A-1) 自習課題に取り組んでいなくて,叱られた経験がある。
または,
A-2) 自習課題に真面目に取り組んで,良い事があった。
などの経験があったらどうでしょうか。
また次のような場合もあるでしょう。
B-1) 自習課題をしなかったのに,休み時間になり,しなくてもよくなった。
B-2) 自習課題をしなかったため,先生が叱ったことで,先生と関わりがもてた。
といった視点です。
A-1 については,叱られた経験から,しなくてはいけないという行動を取りました。
叱られるということは,弱化(嫌子を与えること)を与えられたと言います。
A-2 については,良いことがあった経験から,課題に取り組みました。
良い事は,強化(好子を与えること)与えられたと言います。
この強化と弱化をうまくつかうのです。
最低1週間は,観察する
子どもの行動1つだけを取って,あの子どもは,こうだ!と決めてしまうのは,
ラベリングとなってしまい,決めつけです。最低でも,一週間は,観察したいものです。
不適切な行動が起きたときの
・時刻
・どんなとき
・どんな行動
・その時の対応
・対応後の様子
の5つの観点です。
この記録をとり続けていくと,傾向が見えてきます。
そして,子どもの行動のうらにあるもの,そして,その行動が起こるきっかけに見当をつけるのです。
背景要因と誘発要因の見当をつける
たとえば,
「授業中,友だちに話しかける」 と言った不適切行動が起こったことを例に挙げます。
数学の時間中に,少し時間のかかる計算問題を提示すると,
ある子どもは,友だちに話しかけて,しようとしませんでした。
そこで,担当の先生が,注意をしました。そうすると休み時間のチャイムが鳴り,
その子どもは遊びに行ってしまいました。
実は,この子どものかんさつを続けていると,
慢性的な睡眠不足と計算問題が苦手だったのです。
体調と学習経験からくる課題です。
場合によっては,発達障がいからくる課題もあるでしょう。
これが,子どもの背景要因です。
そこで,練習課題として,時間のかかる計算問題が提示されました。
苦手意識があればあるほど,嫌だという気持ちが湧き起こったことでしょう。
この過程までを先行条件とも言います。
次にその子どもは,友だちに話しかける行動を取りました。
これは,不適切行動です。こういった行動は減らしたいです。
しかし観察記録からは,国語や社会では,こういった行動が見られなかったのです。
そこで,友だちに話しかけると言った不適切行動が,とられたきっかけは,
時間のかかる計算問題のようです。これは,誘発要因と言えます。
その不適切行動に,先生が注意しました。そのことにより,その子どもは,
先生と話をすることができ,独占することができた
のです。そして,
チャイムが鳴り,休み時間になった。
だから課題をしなくて良くなった。
のです。
この先生が注意し,しなくて良くなったところまでを結果条件と言います。
これらの行動を分析すると,
背景要因……睡眠不足・計算問題が苦手
誘発要因……時間のかかる計算問題
そして,
先行条件(Antecedent)
……睡眠不足で,計算問題が苦手な上に,
時間のかかる計算問題が出題された
行動(Behavior)
……友だちに話しかけた
結果条件(Consequence)
……先生と話ができ,課題をしなくて良くなった
と分析することができます。こういう分析の仕方を頭文字を取り,
ABC分析(応用行動分析)と言います。
強化と弱化の好子,嫌子を組み合わせる
こうした不適切な行動を取ることを防ぐために,先述した,
強化と弱化を組み合わせて,指導に当たります。
例えば
強化(好子を与える)
課題を始める → ごほうび
強化(嫌子を除去)
課題を始める → 叱るのをやめる
弱化(嫌子を与える)
課題をさぼる → 叱る
弱化(好子を除去)
課題をさぼる → 休み時間が減る
などです。
不適切行動に替わる代替行動を提示しなくてはいけません。
もちろん,代替行動が強化されることが目標です。だから,
不適切行動をすると,好子がもらえにくく,
代替行動を取りやすい援助をすること
が,ポイントになります。
代替行動がとれたら,すぐに同じ好子を与えます。
「○○ちゃんだけずるい」といったことにならないように,
どの子どもも同じルールにできるといいですね。
プライドが許されるのならば,課題数を減らすことも可能でしょう。
クラス内で,時間のかかる課題を1種類では無く,難易度に分けた3種類を提示する
課題の選択制も良いでしょう。
予防的な学習・生活環境を
頭ごなしに怒鳴りつけたり,押さえつけたりするような指導は,対処療法です。
命に関わるようなときや何度言っても改善しない場合に,大きな声を出すということは,ありでしょうが,
叱る側が感情的に怒鳴る指導は,教師指導の敗北
だと考えています。
また,叱った先生などに嫌悪感が高まる子どももいます。
その場を治めるために「まあまあ。」といって沈静化をはかってしまうとそれは,容認したことになります。
説教・説得のほとんどは,理解されません。「分かりました」と言っても,行動に反映されないことが多いです。
不適切な行動を起こさなくても済む,予防的な学習・生活環境をつくっていきたいものです。
関田 聖和(せきだ きよかず)
兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)
主な単著:『楽しく学んで国語力アップ!「楽習」授業ネタ&ツール』(明治図書)、『新学期から取り組もう!専手必笑 気になる子への60の手立て』(喜楽研)、『専手必笑!インクルーシブ教育の基礎・基本と学級づくり・授業づくり』(黎明書房)、国語・算数が苦手な子どもへの個別支援プリントシリーズ(全10冊:清風堂)
その他、特別支援教育すきまスキル(明治図書)等共著多数。
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