3月11日で東日本大震災から2年を迎えました。今現在でも被災地の方は避難生活を強いられていたり、帰郷のめどが立っていなかったりと御苦労が多いと思います。新聞やテレビで被災地に関する報道が多くありますが、被災地から離れているさいたまではもう震災が過去のものになってきてしまっていると感じることがあります。担任する学級で震災関連の話をしてもあまり子どもたちの反応がよくありません。おそらく、子どもたちは震災を「自分事」として捉えられなくなっているのではないかと考えました。
そこで、3月11日を迎えるにあたって、何度か被災地の現在の状況に関する新聞記事をスクラップする活動を行いました。「新聞を開くことは社会の窓を開くこと」と、さいたま市教委教育長がおっしゃっていますが、被災地を取り上げた記事を読むことで子どもたちは被災されている方の思いを自分事として考えることができると思いました。
スクラップの3回目に、岩手県の釜石市で、お母さんとお兄さんを亡くした5歳の女の子が書いた手紙の写真が載っている記事を活用しました。亡くなってしまったお母さんやお兄さんに向けて「はやくかえってきてね」というメッセージが添えられていました。
子どもたちは、
「まだ、お母さんとお兄さんが死んでしまったことを理解できないんだね。」
「これからどうなるんだろう」
「自分がこの子だったら絶対にたえられない。」
「自分も大好きなおじいさんを今年なくしたけれど、この子は2人も大好きな人をなくしてかわいそう。」
と、思い思いに感想を書いていました。
被災地に関する新聞を読みながら子どもたちは被災地の方々の気持ちを考えることができました。また、記事を読みながら、取り上げられている地名を地図で調べたり、震災関連の言葉で分からない言葉を辞書で調べたりもしました。
きっと、表面的な理解だけではなく、被災地がどんな場所でどんな状況になっているのかということを立体的に理解できたのではないかと考えています。
これからも、震災の記事を子どもたちに読ませていきたいと考えています。

菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
同じテーマの執筆者
-
兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)
-
京都教育大学附属桃山小学校 教諭
-
大阪府公立小学校 主幹教諭・大阪府小学校国語科教育研究会 研究部長
-
戸田市立戸田第二小学校 教諭・日本授業UD学会埼玉支部代表
-
小平市立小平第五中学校 主幹教諭
-
西宮市教育委員会 勤務
-
明石市立高丘西小学校 教諭
-
木更津市立鎌足小学校
-
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
-
愛知県公立中学校勤務
-
大阪大谷大学 教育学部 教授
-
神奈川県公立小学校勤務
-
寝屋川市立小学校
-
明石市立鳥羽小学校 教諭
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)
「教育エッセイ」の最新記事
