2013.03.08
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10年経てば,武勇伝

兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV) 関田 聖和

 いよいよ3学期も残り十数日……。
 

次年度への引継や案を考えている頃でしょうか。

しっかりとした準備をしたいものです。

 今は,年度末の3学期(後期)でもありますが,

1学期のスタートのための0学期でもあるからです。

 先日,PTAの会で,

「人生を振り返って,つれづれなるままに,

 話をして欲しい。」

と言われ,小一時間話をしました。

 生まれた時の話から今に至るまで,掻い摘まんで話をしました。

今回はその中から,わたしの教師修業の原点とも言える1つの失敗談を綴ります。

 

 

28分間の沈黙

 わたしが,教師経験7年目の時。

そこそこ学級力のあるクラスをつくり楽しく学校生活を送っていました。

 授業に対しても,うまくなりたいとの一心から,市の公的な研究グループに

所属し,先輩の先生から指導を受けていました。

 

 あるときの研究授業……。国語 「大造じいさんとガン」の授業です。

何かしらの発問をしました。しかし,子どもたちは考え込んだり,

反応がなかったり……。

 

 わたしは,何度も何度も発問を繰り返しました。

しかし,全く同じ発問ではなく,授業後,参観していた他校の先生から,

8回の発問すべて,微妙に違っていたと指摘を受けました。

そしてこのやりとりは,28分間の沈黙に……。

 当然,授業としては???です。大失敗です。

 

 その後の事後研修会では,わたしの話の次に,すぐ指導助言の校長先生が,
 

「今日の授業は,本当にひどかった。

 こんな教師がいるから,日本の国語が衰退するんだ。

 こんな先生,やめた方が良い。」

と発言されました。

 誤解が無いように綴りますが,今でもご指導を仰いでいる素晴らしい先生です。

厳しくも温かく,指導をしてくださっています。

 

 その後,授業を見てくださっていた先輩の先生が,子どもたちの頑張りを

話してくれました。が……。その指導助言の言葉が頭の中で何度も繰り返され,

子どもたちに申し訳ないという気持ちでいっぱいになりました。

 

 

ある女の子の言葉

 一週間ぐらいでしょうか。ずっとこの授業のことを引きずっていて,

何をやってもうまくいかず,自然と笑顔も消えていたそうです。

 本気で教師をやめようかと悩んでいました。そのような時に,わたしより

少し背が低い女の子が,わたしの膝の上にぽんと座り,

「先生,元気ないなあ。

 なんか,言われたんやろう。

 でもな,うちは,

 先生のこと好きやで。」

と声をかけてくれました。そして,

「元気出さな!」

と,背中をパシーンと……(笑)

 救われた一言でした。あっ,まだ教師,していいんや……。と思いました。

その子どもは,きっと,この言葉は,忘れているでしょう。

 今その子は,教職の道に進んでいるとのことです。

 

 

10年経てば武勇伝

 若手が泣きながら,うまくいかない苦しい状況を話してくれることがあります。

そのような時に話す一つが,上記のエピソードです。みんながみんな,

始めからうまくいっていたわけでは無いという意味を込めて……。

 そして,

「10年経てば,武勇伝になるよ。

 しんどいときは,いつでも相談になるから,

 一つ一ついっしょに取り組んでいこう。」

と伝えています。

 

 今年度の残りの日々。失敗もしながら進みましょう。

最後は,必ず笑顔で終わる

ので,大切な一日一日を過ごしていきたいです。

 

関田 聖和(せきだ きよかず)

兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)
主な単著:『楽しく学んで国語力アップ!「楽習」授業ネタ&ツール』(明治図書)、『新学期から取り組もう!専手必笑 気になる子への60の手立て』(喜楽研)、『専手必笑!インクルーシブ教育の基礎・基本と学級づくり・授業づくり』(黎明書房)、国語・算数が苦手な子どもへの個別支援プリントシリーズ(全10冊:清風堂)
その他、特別支援教育すきまスキル(明治図書)等共著多数。

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