わたしが,研究のテーマとしている「楽書き」・「楽習」。どちらの言葉も,古くから使われている言葉だ。
どちらも,調べた限りでは,わたしが子どもの頃から存在する言葉である。
当たり前の話だが,現役教師が作り出した言葉ではない。
どちらの言葉も,Amazonや楽天ブックス,Yahoo!ショッピングなどの通販サイトで検索すればよく分かる。
たくさんの著書が出てくるからだ。
会ったことも話したこともない先輩たちが作り出したこの言葉…。
どこまで意志を継いでいるかははなはだ疑問だが,わたしの研究テーマ,信条,こだわりなどから,大切にしたい言葉だ。
空気を吸うように,当たり前のように,楽に書く,それが「楽書き」
「空気を吸うように書く」
これは,教師になった初めての勤務校で,先輩の学級通信で見つけた言葉だった。
直感的に,このような感覚で自分の思いを書き綴れる子どもたちに育てたいと思った。
そして手にしたのは,野口芳宏先生の著書「作文で鍛える」(明治図書)だった。
今は,「作文力を伸ばす、鍛える増補版」(明治図書)となって販売されている。
この著書を拝読し驚いた。それは,作文指導の13の項目についてであった。
- 小作に安んぜよ
- 娯楽として書け
- 精しく読むな
- 評語を書くな
- 添削するな
- やたら書かせよ
- 丁寧に書かせるな
- いつでも書かせる
- どこでも書かせる
- やたらほめまくる
- おもしろがらせる
- 用紙を手元に置く
- 基礎を教える
一つひとつの解説は,上記の著書を見ていただければ良いだろう。
これらの項目は,子どもたちにとっても,教師にとっても,「楽しい」ものである。
大作でも無くて良く,丁寧に書かなくてもいい。そして評語は,書くなである(笑)
勘違いしてはいけないのは,作文指導と日記指導の区別だ。混同してはいけない。
わたしは,区別して考えている。
これらのことを様々な実践を通し体感する中で,
書くということは,楽しんでするものだ。
空気を吸うように,当たり前のように,楽に書く それが「楽書き」。
と考えるようになった。
落ち着く 整理できる
もう一つの側面に,書くことで,
気持ちが落ち着く
考えが整理できる
ことも,見落とせない。
書く活動を授業に取り入れると,自然と静かになる。
カリカリと,鉛筆の音だけが,教室に響く。
長い時間取らなくても良いだろう。
短い書く時間を繰り返し行い,その姿や行為を褒めていく。
そうすることによって,子どもたちは,書く時間が心地よいものとなる。
それがそのまま学習時の自然な行為へとつながっていく。
次第に様々な活動で,書くことを取り入れるようになる。
子どもたちの向上的変容が見られるのである。
楽しく学習する だから「楽習」
書くことは,学習には欠かせない活動である。
しかし,「楽書き」を成立させるために,欠かせないことは,
「楽しい」
ということである。これは,学習の第一歩と捉えている。そしてわたしは,子どもたちの学習の定着過程を
次の4段階で考えている。
楽しい! 分かった! できた! さらに!
である。
何かするにも,「楽しい」と感じると意欲,関心が増すものである。
そして,課題が「分かり」,「できる」ようになる。
確かに嫌々であっても,この過程は成立する。しかし,学習効果が低いのだ。
ある作業を楽しいと感じている人とそうでない人に,同じだけ与えたときに,
より作業の成果が高いのは,「楽しい」と感じている人なのだ。
そして,「できた」で,とどめるのではなく,「さらに」次のステップへ進ませたい。
それは,跳び箱を跳び越せた子どもが,次の技に挑戦するように……。
そのためにも,
「学は,楽(がく)にも通ず」
学習を「楽習」と呼べるように,楽しいものとしたい。
「楽書き」・「楽習」
昔からある言葉だが,わたしにとっては,奥深く突き詰めていきたい事柄だ……。
関田 聖和(せきだ きよかず)
兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)
主な単著:『楽しく学んで国語力アップ!「楽習」授業ネタ&ツール』(明治図書)、『新学期から取り組もう!専手必笑 気になる子への60の手立て』(喜楽研)、『専手必笑!インクルーシブ教育の基礎・基本と学級づくり・授業づくり』(黎明書房)、国語・算数が苦手な子どもへの個別支援プリントシリーズ(全10冊:清風堂)
その他、特別支援教育すきまスキル(明治図書)等共著多数。
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