2012.09.17
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A させたいなら, B,C,D,E......の手立てをもて

兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV) 関田 聖和

 特別支援教育のセミナーなどに行くと,時折,

 

「A させたいなら B です」

 

という話を聞きます。これは,みなさんご存じの

 

AさせたいならBと言え」(明治図書)

続AさせたいならBと言え―教師の言葉が生きる瞬間(とき)」(明治図書)

 岩下修先生お言葉です。


わたしは,そのお言葉の少しを頂戴して,


「A させたいなら, B,C,D,E……の手立てをもて」


と話をしています。Eの後の……は,あればあるだけ,なお良いものです。

 

子どもの特性には,百人百色

ADHDの特性のある子どもは,良く動く傾向が強いから,

           授業時間の中で意図的に動く時間を取ろう

 

と工夫した先生。これはこれで効果のある指導の一つです。

しかし,

「ADHDのお子さんすべてに,これでいく!」

とは,言い切れない

のです。

 それは,ADHDには,

  • 不注意優勢型
  • 多動性-衝動性優勢型
  • 混合型

に分けられます。だから,タイトルにしている,

「A させたいなら, B,C,D,E……の手立てをもて」

なのです。百人いれば,百通り……。様々なタイプに分かれます。

 

複数の手立てをもっておこう

意図的に動いても良い時間をつくることだけでなく,以下のような手立てをもっていてはどうでしょうか。

 

・ 活動の確認のために,立ったり座ったりする

・ 班やペアで話し合いをするときに移動する

・ 視覚,聴覚刺激の強い情報を徹底的に減らす(掲示物などの精選)

・ 自信をもたせられる経験,達成感が感じられる経験を積むための手立てをとる

・ 具体的に伝える

  (NGワード:ちゃんと,しっかりと,きちんと,

   がんばって,かしこくして,しずかに,何度言ったら

   分かるの,ぐずぐずしないなど)

・ 座席の位置を工夫する

  (低学年なら,教師のすぐ近く,視界に入りやすいところ)

・ しようとする行動を言葉で言わせる

・ 課題は,目的をはっきりさせる 

・ 短く,単純で,教示が簡潔な物を1つだけ与える

・ 学習活動は,困難なところで終えず,自信をもった

  ところで終わる

・ 可能ならば,静かな環境での個別指導も有効

 

などが挙げられます。

教師が,このように複数の手立てをもっていると,様々な子どもに対応できると言うだけで無く,

教師自身にゆとりがうまれます

ゆとりがあると,顔もほころび,子どもに対する笑顔も増え,突発的なことが起こっても動揺が少ないと考えています。


 

子どもも,教師も……

 わたしは,この指導で学習を進めるのだ。

だから,新しい話は別に聞かなくていい。

 

と,明言される方は少ないかも知れませんが,

1つの考え方,指導法に固執すると,さらに良い実践と出合ったときに,

認めにくいと言うことが起こるのかも知れません。

子どもも教師も,ゆとりを生むために,そしてどちらも笑顔で過ごすために,

 

複数の手立てをもつ

つまり,

教師として指導の引き出しを,引き出しの中身を増やすこと

それが,

「A させたいなら,B,C,D,E……の手立てをもて」

なのです。

 だからわたしは,様々なところに出かけて,たくさんの先生方から学び,

引き出しを引き出しの中身を増やし,たくさんの手立てをもち続けたいです。 


 

関田 聖和(せきだ きよかず)

兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)
主な単著:『楽しく学んで国語力アップ!「楽習」授業ネタ&ツール』(明治図書)、『新学期から取り組もう!専手必笑 気になる子への60の手立て』(喜楽研)、『専手必笑!インクルーシブ教育の基礎・基本と学級づくり・授業づくり』(黎明書房)、国語・算数が苦手な子どもへの個別支援プリントシリーズ(全10冊:清風堂)
その他、特別支援教育すきまスキル(明治図書)等共著多数。

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