最近のテレビを見ていると,字幕が入ることが多くなりました。ましてやデジタルテレビになり,
設定をすると,字幕が表示されるようになり,音声を聞き取りにくい状況での視聴が楽になりました。これは,特別支援教育,ユニバーサルデザインという考え方からは,良いことです。
しかし,以前2年生を初めて担任した時にある疑問が浮かんだのです。それは,
片仮名や漢字の表記について
です。ある知人から,
「テレビの雑学クイズに出てるぐらいなんだから,教師なら知っていて当然。」
と言われてしまいました。でもその時間帯,まだ勤務中の先生も多いのでは……(苦笑)
片仮名表記の基本って……
学習指導要領を見てみると,
伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項 (1)「A話すこと・聞くこと」,「B書くこと」及び「C読むこと」の指導を通して, 次の事項について指導する。 ウ 文字に関する事項 文や文章の中で使うこと。 |
とあります。
そこで,片仮名表記の基本を以下に示してみました。
-
いろいろなものの音
-
外国から伝わってきたことば
-
外国の,国の名前や土地の名前,人の名前
-
動物や虫の鳴き声
なのです。これは以下の小学校用教科書に掲載されている事柄なのです。
光村教育図書……2年下 かたかなの広場
教育出版…………2年上 かたかなで書く言葉
三省堂……………2年 かたかな
東京書籍…………2年上 かたかなで書く言葉
の4社です。2年生の国語の教科書に,片仮名の書き方について掲載されています。
だから,
-
ぼくは,雷がゴロゴロと鳴っているので,部屋でごろごろして過ごす。
-
携帯電話が,ブルブルと音を立てて,ぶるぶる震えている。
「部屋でゴロゴロする」や「ブルブル震える」とは表記しないのです。
また,「ボール」を平仮名で書く場合は,
「ぼーる」と書かずにぼうると書きます。
これも,東京書籍の2年上の教科書を例に挙げると,
「片仮名で伸ばす印」
と掲載されています。「ー」は,平仮名ではありません。平仮名と混在させて使わないのが基本です。
だから,
片仮名は,「カタカナ」と書きません。「かたかな」と書く
のです。
片仮名を使う言葉をオノマトペと呼ぶことがあります。これは,擬音語・擬声語という意味です。
日本ではおなじみでない,ミミシスという言われる言葉もあります。これは,擬態語です。
日本は,このミミシスもオノマトペと混ぜて解釈されているので,このようなことが起こっているのかも知れません。
漢字の使い方は……
漢字についても同じようなことがあります。先日,テレビ番組「世界一受けたい授業」でも,以下の事例の1つが問題として出題されていました。
2012/6/9放送 全国一斉2択テスト
まず始めに「あう」です。次のような漢字を用います。すこし明鏡国語辞典(同音語情報)より引用してみました。
「会う」
人に面会する。
会見、会合、会談、再会、面会
「客と会う」「会いに行く」「立ち会う」「会うは別れの始めなり」
「合う」
一つになる。
合致、合流、合体、合併、合意、合計、混合
「意見が合う」「視線が合う」「気が合う」「好みに合う」「助け合う」
「逢う」
主として男女がデートなどで会う。
「恋人と逢う」「逢い引き」「しのび逢う」
*表外字《→会う》
「遭う」
主として好ましくないものに出会う。
遭難、遭遇
「事故に遭う」「災難に遭う」「暴風に遭う」「反対に遭う」「盗難に遭う」
「遇う」
偶然にでくわす。
奇遇、千載一遇
「ばったり旧友と遇う」「偶然恩師に遇う」/「非運に遇う」「事故に遇う」
▽表外音訓《→会う》《→遭う》
次に「しゅぎょう」です。
「修行」
仏道を身につけたり、武芸や芸能を身につけたりするために努力すること。
「仏道修行」「修行僧」「修行中の僧侶」「武者修行をつむ」「柔道の修行に励む」
「修業」
技術を習い、身につけること。
「花嫁修業」「日本料理の修業」「板前修業」「茶道の修業」「まだ修業中の身」
いかがでしょうか。
- 先生にお逢いできて光栄です。
という一文を異性の方に送ってしまうと……。
「あう」の漢字の使われ方の意味を理解している方だったら……。
もしかしたら問題,いや,チャンス……。少しどきどきしますね。
- 花嫁修行を頑張ります。
なんて書くと,お坊さんに嫁ぐのかなと,思ってしまいます。
これらの使い方も,教師なら気をつけたいものです。
教師だから……
片仮名の使い方,テレビや雑誌がそうなんだから,どう使っても良いんじゃないの。
って,思われるかも知れません。
漢字の使い方も大きく違わないんだから,良いんじゃないの。
と,感じるかも知れません。
でも,されど……ではないでしょうか。知っているのと知らないのとは,大きな差が出るでしょう。また,知っている方からすると,教師という仕事柄,「あれ。」と不思議に思われるのではないでしょうか。
基本は大切です。子どもたちに教えるという仕事をしているのですから……。
まさかこんなことで!と足元をすくわれることにならないように,わたしも含めて,
再確認する機会をもちたいものです。
関田 聖和(せきだ きよかず)
兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)
主な単著:『楽しく学んで国語力アップ!「楽習」授業ネタ&ツール』(明治図書)、『新学期から取り組もう!専手必笑 気になる子への60の手立て』(喜楽研)、『専手必笑!インクルーシブ教育の基礎・基本と学級づくり・授業づくり』(黎明書房)、国語・算数が苦手な子どもへの個別支援プリントシリーズ(全10冊:清風堂)
その他、特別支援教育すきまスキル(明治図書)等共著多数。
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