2012.06.11
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取組1つと魔法の言葉

兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV) 関田 聖和

 いよいよ6月に入りました。小学校では,この6月を大切に過ごします。場合によっては,荒れにつながる可能性が高い時期だからです。1学期に運動会などの行事が入る学校もあります。そういった学校は,目標ができていいのかもしれません。

 

 4月で指導した学級・学校のルール。それを大型連休明けに再確認と修正。なかだるみになりがちな6月へとつながります。それでは,実践の中から2つのことについてお話をします。今号もおつきあいをください。

 

伸びたか,伸びていないか

 ベテランになると,このようななかだるみはなくなります。それは学級の課題が見え,次のステップが分かるからです。しかし若手の先生は,

 

「前に言ったでしょ。」

「どうして,できないの。」

 

という声かけが多くなってくると言います。

 この時期は,子どもたち,そして学級の伸びを確認したいものです。その視点で大切にしたいことは,

「できたか,できていないか」

ではなく,

 

「伸びたか,伸びていないか」

 

で……。そのためには,小さなことでもいいので,継続を必要とする取組を1つ取り入れてはどうでしょうか。遊びでの協力ごとでもいいですし,学習でのことでもいいです。

 

 
 今日の授業で君たちは,できるようになるからね。

 今本校では,研究授業が盛んです。実習生や若手教員への指導授業や自身の教師修業のための自主公開や全体研修,市内の研究グループの公開授業などが行われました。

 

 若手向けについては,放課後に,「寺子屋」と称して,授業について話す会を行っています。

 数えると,6月第1週現在で25本。もちろん,指導案,略案などを配布します。わたしも,先日,今年度3度目の研究授業を公開しました。

 

 3年生の教室にお邪魔し,光村図書 国語「声に出して読もう」の授業を公開しました。松尾芭蕉や小林一茶などの短歌や俳句が,教材として掲載されています。

 まずはじめに短歌を提示。単元名が,「声に出して読もう」なので,45分間の授業の中で,数度しか読んでいないのでは,話にならない授業となってしまいます。でもいきなり短歌を紹介して,そのまま提示してしまってはおもしろくありません。そこで先日先輩教師から聞いた方法を試してみました。

 

「先生に,こんなお手紙をもらったんだ。」

 

と,短歌の31音を平仮名で,1行につなげたものを子どもたちに見せました。そして一緒に音読。

当たり前ですが上手に読むことはできません。棒読みです。でもこれでいいのです。そして,子どもたちへ魔法の言葉を話します(笑)

 

 「今日の授業で君たちは,この手紙がすらすら読むことができるようになるからね。」

 

と。そうです。ここでしかけます。45分間,音読を繰り返せば,必ず上手になります。もちろんそれだけの音読をするのですが……。実際には,何度も何度も音読をしました。

 

先生といっしょに勉強したら,できるようになる。

 「今日の授業で君たちは,この手紙がすらすら読むことができるようになるからね。」という言葉かけについて子どもたちは,

 

「本当なのかなあ。」

 

と首をかしげます。特にこの学級で授業をするのは,初めて。通常ならこの時期なら子どもたちとの関係ができているので,

 

「ちょっと今日の授業は,準備してきたから,全員できるようになるよ。」

 

などと話すのもありかもしれません。

 

 こんなことを「寺子屋」(本校の放課後研修)で,話していると体育を研究されている先輩先生が,

 
「跳び箱と同じやなあ。絶対全員跳べるようになるよって,(子どもたちの前で)宣言して,取り組ませるとおもろいんやなあ。」

 

 と。

 子どもたちにとっては,魔法のように感じる出来事かもしれませんが,こういった授業が繰り返され,努力している子どもを指導していく中で,

 

「先生といっしょに勉強したら,できるようになる。」 
 

って思うことでしょう。そして先生と子どもとの関係は信頼が増し,特別支援教育の視点から言いますと,子どもたちにとって,カリスマティックアダルトになるかもしれないのです。

 


カリスマティックアダルト

カリスマティックアダルトとは,

 

・自分を理解してくれている

・大人になったらあのようになりたい
 

といった

 
子どもにとってモデルのような存在

 

です。特にADHDの子どもには,二次障害にはつながらず,様々な反社会行動への抑止力になると言われています。

 

 何か継続できることに取り組んで,子どもたちの「できる」そして,「分かった」を増やすことで,すてきな学級に育つことでしょう。

 

関田 聖和(せきだ きよかず)

兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)
主な単著:『楽しく学んで国語力アップ!「楽習」授業ネタ&ツール』(明治図書)、『新学期から取り組もう!専手必笑 気になる子への60の手立て』(喜楽研)、『専手必笑!インクルーシブ教育の基礎・基本と学級づくり・授業づくり』(黎明書房)、国語・算数が苦手な子どもへの個別支援プリントシリーズ(全10冊:清風堂)
その他、特別支援教育すきまスキル(明治図書)等共著多数。

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