2012.05.28
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つまずきの原因を考える<読み・書き編>

兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV) 関田 聖和

 第4回目の配信となります。読んでいただいている方,ありがとうございます。

もう5月が終わりますね。わたくしの担当する学級(4クラス)も,2つの研究授業が終わりました。

 1つは,市内のブロック研究授業研修会。もう1つは,校内の全体研修授業でした。どちらの会も,

 

「学習規律が整っている。」

「課題に対して一生懸命に取り組んでいますね。」

 

との感想をいただきました。

 

 さて学習は,「書く」・「話す」・「聞く」・「読む」・「計算する」・「推論する」に分かれます。

中でも「読む」「書き」については,学習にとって外せないものです。これらのつまずきは,様々な

学習のつまずきにつながります。そこで,わたしの実践の中からいくつかお話しします。

 

かな10単語聴写テスト


 文字が書くことへのつまずきの原因として,

・記憶しておくことが苦手

・形を細部まで見ることが苦手

・文字と音とがマッチングしていない

・手先が不器用で,うまく鉛筆を使えない

 等が挙げられます。

 

 これら読み書きのつまずきをはかるものとして,「森田-愛媛式読み書き検査」があります。
個に対して行い,読み・書きのテストからアセスメントをし,指導に役立てるものです。

 これは,森田 安徳先生(現 神戸親和女子大学准教授)が考案され,広く使われています。

 

 先日,その森田先生のお話をうかがう機会がありました。「森田-愛媛式読み書き検査」からの事例を

通して学びました。その中で,

もっと簡単に子どもたちが一斉に取り組み,

実態把握をすることができるものはないか

と模索され,「かな10単語聴写テスト」がうまれたそうです。

 ある市では,市内の全校,1,2年生に実施するところもあるとのこと。

 

 当たり前ですが,このテストは,子どもの学習の定着状態が分かるものです。
だから,発達検査とは少し異なります。平仮名,片仮名,それぞれ10の言葉を聴写するのです。

 

形と空間を捉える力を高める

 テストの結果から,つまずきを予想して手立てを考えます。

 例えば,「ツ」と「シ」。よく似ています。2画目の書き方によっては,見た目,どちらか分からなく

なってしまいます。でもつまずいている子どもの中には,書いたように字形を覚えているのです。

 そこで,直接「ツ」や「シ」の書き取りを何度もさせるのでは無く,

・字形を正確に認識する力

・一画一画の長さや大きさを認識する力

 を高めたいです。

 そのために,

形と空間を捉える力を高めることが必要

 となります。

 

 そのための手立てとして,

「点つなぎ」 

 という学習に取り組ませます。これは,いくつかの点で結ばれた形の手本を見て,同じ図を書くのです。

 

  文字を覚えるだけで無く,算数の図形問題を解いたりするためには,

・形を細部までみる

・形の全体を正確に把握する

・似ている形の区別ができること

・空間的な把握を正確に行う

などの基礎能力が必要です。これらの能力を高める手立てとして,

手本と同じ形になるように点と点をつないで形を描く「点つなぎ」の学習が有効なのです。

 

鉛筆を持たずに体を使って

 読み書きのつまずきには,促音を省いて書いてしまう場合もあります。それは,

文字と音とがマッチングしていないこと

 が考えられます。特に,「きって」などの促音「っ」は,文字として書かれるものの,

音として発しないため,書き落とされてしまうことがあるのです。

 

 そこで,手拍子などを使って,

・「き」と「て」は,1拍として手をたたく

・「っ」は,音を出さずに手をグーにする

 

など体を使った手立てで,理解が早まることがあります。

 これは,3回目の配信記事で言うところの,「3つの学習型を入れた授業の組み立てを」運動型の学習方法

になります。 

 国立特別支援教育総合研究所の海津亜希子先生が開発された

「多層指導モデルMIM 読みのアセスメント・指導パッケージ」

では,拗音・促音・長音を手遊びだけでなく記号で示し,理解する方法も紹介されています。

 

 

スモールステップのある学習過程とつまずきの原因を意識して

 学習を定着させるために,スモールステップを踏みながら,定着させていく考え方があります。

跳び箱を跳び越すと言っても,

 

 助走する → 両足で踏み切る → 着手する → 腕で体を支える → 跳び越える → 着地する

 

と,これだけの細分化をすることができます。

 それぞれの「できる」が積み重なって,跳び箱を跳び越すことが出来ることになると考えています。
 

 読み書きも同じことが言えるでしょう。

上記で紹介した「点つなぎ」も理解を深めるためのスモールステップの1つです。文字を書くまでの準備の

学習と言い換えることができるのかも知れません。

「読むこと」「書くこと」について,スモールステップのある学習過程を意識したいものです。

少しの手立てを取ることで,子どもたちの力の定着につながるのです。
 

関田 聖和(せきだ きよかず)

兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)
主な単著:『楽しく学んで国語力アップ!「楽習」授業ネタ&ツール』(明治図書)、『新学期から取り組もう!専手必笑 気になる子への60の手立て』(喜楽研)、『専手必笑!インクルーシブ教育の基礎・基本と学級づくり・授業づくり』(黎明書房)、国語・算数が苦手な子どもへの個別支援プリントシリーズ(全10冊:清風堂)
その他、特別支援教育すきまスキル(明治図書)等共著多数。

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