第4回目の配信となります。読んでいただいている方,ありがとうございます。
もう5月が終わりますね。わたくしの担当する学級(4クラス)も,2つの研究授業が終わりました。
1つは,市内のブロック研究授業研修会。もう1つは,校内の全体研修授業でした。どちらの会も,
「学習規律が整っている。」
「課題に対して一生懸命に取り組んでいますね。」
との感想をいただきました。
さて学習は,「書く」・「話す」・「聞く」・「読む」・「計算する」・「推論する」に分かれます。
中でも「読む」「書き」については,学習にとって外せないものです。これらのつまずきは,様々な
学習のつまずきにつながります。そこで,わたしの実践の中からいくつかお話しします。
かな10単語聴写テスト
文字が書くことへのつまずきの原因として,
・記憶しておくことが苦手
・形を細部まで見ることが苦手
・文字と音とがマッチングしていない
・手先が不器用で,うまく鉛筆を使えない
等が挙げられます。
これら読み書きのつまずきをはかるものとして,「森田-愛媛式読み書き検査」があります。
個に対して行い,読み・書きのテストからアセスメントをし,指導に役立てるものです。
これは,森田 安徳先生(現 神戸親和女子大学准教授)が考案され,広く使われています。
先日,その森田先生のお話をうかがう機会がありました。「森田-愛媛式読み書き検査」からの事例を
通して学びました。その中で,
もっと簡単に子どもたちが一斉に取り組み, 実態把握をすることができるものはないか |
と模索され,「かな10単語聴写テスト」がうまれたそうです。
ある市では,市内の全校,1,2年生に実施するところもあるとのこと。
当たり前ですが,このテストは,子どもの学習の定着状態が分かるものです。
だから,発達検査とは少し異なります。平仮名,片仮名,それぞれ10の言葉を聴写するのです。
形と空間を捉える力を高める
テストの結果から,つまずきを予想して手立てを考えます。
例えば,「ツ」と「シ」。よく似ています。2画目の書き方によっては,見た目,どちらか分からなく
なってしまいます。でもつまずいている子どもの中には,書いたように字形を覚えているのです。
そこで,直接「ツ」や「シ」の書き取りを何度もさせるのでは無く,
・字形を正確に認識する力
・一画一画の長さや大きさを認識する力
を高めたいです。
そのために,
形と空間を捉える力を高めることが必要 |
となります。
そのための手立てとして,
「点つなぎ」
という学習に取り組ませます。これは,いくつかの点で結ばれた形の手本を見て,同じ図を書くのです。
文字を覚えるだけで無く,算数の図形問題を解いたりするためには,
・形を細部までみる
・形の全体を正確に把握する
・似ている形の区別ができること
・空間的な把握を正確に行う
などの基礎能力が必要です。これらの能力を高める手立てとして,
手本と同じ形になるように点と点をつないで形を描く「点つなぎ」の学習が有効なのです。
鉛筆を持たずに体を使って
読み書きのつまずきには,促音を省いて書いてしまう場合もあります。それは,
文字と音とがマッチングしていないこと |
が考えられます。特に,「きって」などの促音「っ」は,文字として書かれるものの,
音として発しないため,書き落とされてしまうことがあるのです。
そこで,手拍子などを使って,
・「き」と「て」は,1拍として手をたたく
・「っ」は,音を出さずに手をグーにする
など体を使った手立てで,理解が早まることがあります。
これは,3回目の配信記事で言うところの,「3つの学習型を入れた授業の組み立てを」運動型の学習方法
になります。
国立特別支援教育総合研究所の海津亜希子先生が開発された
「多層指導モデルMIM 読みのアセスメント・指導パッケージ」
では,拗音・促音・長音を手遊びだけでなく記号で示し,理解する方法も紹介されています。
スモールステップのある学習過程とつまずきの原因を意識して
学習を定着させるために,スモールステップを踏みながら,定着させていく考え方があります。
跳び箱を跳び越すと言っても,
助走する → 両足で踏み切る → 着手する → 腕で体を支える → 跳び越える → 着地する
と,これだけの細分化をすることができます。
それぞれの「できる」が積み重なって,跳び箱を跳び越すことが出来ることになると考えています。
読み書きも同じことが言えるでしょう。
上記で紹介した「点つなぎ」も理解を深めるためのスモールステップの1つです。文字を書くまでの準備の
学習と言い換えることができるのかも知れません。
「読むこと」「書くこと」について,スモールステップのある学習過程を意識したいものです。
少しの手立てを取ることで,子どもたちの力の定着につながるのです。
関田 聖和(せきだ きよかず)
兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)
主な単著:『楽しく学んで国語力アップ!「楽習」授業ネタ&ツール』(明治図書)、『新学期から取り組もう!専手必笑 気になる子への60の手立て』(喜楽研)、『専手必笑!インクルーシブ教育の基礎・基本と学級づくり・授業づくり』(黎明書房)、国語・算数が苦手な子どもへの個別支援プリントシリーズ(全10冊:清風堂)
その他、特別支援教育すきまスキル(明治図書)等共著多数。
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