2011.11.19
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『新聞スクラップに必要なもの』(低学年の先生方へ(2))

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

 

   新聞活用を実践している学校でまず取り組み始めるのが新聞記事のスクラップだと思います。新聞活用の効果を出すには継続した活動を行い、児童生徒にとって新聞が身近なものになるようにしていかなければなりません。その意味からも新聞のスクラップはとても取り組みやすい活動であり、大切な活動であると言えます。

 

   しかしながら、低学年ではまだ記事の内容が大変難しく、難解な漢字も出てきます。以前に比べて新聞の活字も大きくなり読みやすくはなりましたが、児童が普段読んでいる本などの活字と比べると各段に小さく、しかも字と字の間の余白も少なく、児童にとってはまだ大変読みにくいものだと言えます。

 

   そこで、目をつけたいのが新聞の写真です。新聞には多くの写真が使われています。私が子どものころにはカラーの写真などなかったのですが、最近はカラー写真が多く載るようになりました。百聞は一見に如かずと言いますが、写真を見ることによって児童も「この記事はこんな内容なのではないか」と想像することができます。また、写真から自分なりのストーリーを考えることもできます。写真と写真につけられたキャプションを生かして新聞スクラップを行うのが新聞活用の入り口として大変効果的であると考えています。

 

   学校や学級で新聞スクラップに取り組む際に大切なことはまず、『スクラップを行う時間を決める』ことです。なんとなく気が向いたら行うということではなかなか実践できません。また、慣れてくると、児童もスクラップを行う日に向かって記事や写真を探すようになってきますから、スクラップを行う曜日や時間をあらかじめ決めてしまう必要があると思います。

   最初は大変時間がかかりますが、慣れてくると児童はすぐに記事や写真をはり付け感想などをまとめるようになります。今は授業時間も増え、教える内容も大変増えてきており授業をスクラップに割く余裕はなくなってきていると思います。そこで、朝自習などの時間を活用することが大変効果的であると考えます。朝自習などに組み込んでおけば指導計画を大幅に変える必要などなく新聞活用を自由な裁量で導入しやすいと思います。ぜひ取り組んでみてください。

 

   これから数回に分けてスクラップのコツや実際の実践について紹介をしていこうと思います。今回はスクラップに必要な道具を紹介します。

 

   スクラップに用意しておきたいものは以下のものです。家庭にもお知らせしていつでも使えるように道具袋などに入れておくとよいでしょう。また、家庭でも取り組んでもらえるように家庭にももう1セットあるようにするとなおよいと思います。

 

・はさみ、カッター

   スクラップするのにはさみは必需品です。カッターでも構いませんが低学年の場合はまずはさみで取り組む方がよいと思います。低学年で記事のスクラップを始めると、記事を切り取るのがなかなかうまくいかない児童が多くいることに気が付きます。もしかしたら、手先を器用にして道具を上手に使えるようになる効果もあるかもしれません。

・のり(スティックのり)

 記事を切り取ったらノートやワークシートに貼り付けます。その際に私はスティックのりを使うことを勧めています。教室で通常使用している液体のりですとのりがはみ出したりしてノートのページとページがくっついてしまうことがあったり、のりをつけたところには書き込みができなくなってしまうことがあるからです。スティックのりですとつけやすく手も汚れずに済みます。その他テープタイプののりなどいろいろな文房具が出ていますので、児童の実態に合わせて工夫してみてください。

 

・ラインマーカー

 記事を読む(低学年は写真を見たり、写真のキャプションを読んだり)際に、あとで要約をしたり感想をまとめたりする活動を行うと思います。そこで記事の大切なところや自分の印象に残ったところをチェックするためにラインマーカーをそろえるとよいでしょう。ただ、児童に「大切なところに線を引きましょう」と言うとどんどん線を引いてしまい、どこが大切なのかわかりにくくなってしまいますので、3色ぐらいを用意して、記事で一番太切なところ(5W1H・前の方に書いてある)は赤、自分が心に残ったところは黄色、言葉など自分の作文などで使えそうなものを青、などのように色分けするとよいでしょう。ただし、低学年のうちは1色で写真のキャプションや見出しのみにチェックをさせてもよいかもしれません。

 

・国語辞典、地図帳

   通常は国語辞典の学習は小学校3年生からですが、最近は1年生から国語辞典を、もたせるようにしましょうという動きが出ています。中部大学現代教育学部准教授でいらっしゃる深谷圭助先生が提唱され、今では全国に広まっています。辞典から知っている言葉をどんどん引き、付箋をつけていくことによって言葉の力や学習意欲まで飛躍的に伸ばすことができることで注目を浴びています。私も学級で深谷先生のご指導をいただきながら辞書引き学習を実践しています。その辞書をいつでも使える位置に置き、新聞記事や写真をスクラップする際には知らない言葉や調べてみたい言葉を調べるようにさせたいものです。

   また、低学年ではまだ難しいかもしれませんが地図帳も近くに置いておきたいものです。新聞には日本全国、そして世界中の情報を掲載されます。掲載された地について地図帳で位置を確認することで世界、日本への興味や認識が広がってきます。

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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