平成23年度より小学校で新学習指導要領が完全実施になりました。今回の改訂で特に国語科を各教科や領域の学習の基本におき、「言語活動の充実」の実践を行っていく方針を打ち出しています。新学習指導要領において、各教科や領域の学習で様々な言語活動例が示されていることが、今回の改訂の大きな特徴といえます。
新聞活用についての記述を見ると、小学校で43回(国語19回、社会15回の他、理科・家庭、生活、総合、道徳、特活)、中学校で32回(国語15回、社会6回の他、美術、技術・家庭、道徳、総合、特活)も出てきます。新聞の活用については、これまでは指導内容にも位置づけてなかったことから考えると、今回の改訂でかなり重視していることが伺えます。
そして、指導要領の改訂の基本方針には言語活動の充実について、改善のための留意事項として次の3つのことを述べています。
(1)各教科の教科書において、言語に関する能力を高めていく工夫を凝らす。
(2)読書活動の推進
(3)学校図書館の活用や学校における言語環境の整備の重要性
・言語に関する能力の育成に当たっては辞書、新聞の活用、図書館の利用などについて指導し、子どもたちがこれらを通してさらに情報を得、思考を深めることが重要。
この中で特に注目したいのが、(3)の学校図書館の活用や学校における言語活動の整備の重要性の中で、言語に関する能力の育成に当たって「新聞の活用」を盛り込んでいる点です。これまでも新聞活用に関してはNIE実践教師により先進的な授業実践が行われてきましたが、今回指導要領に新聞活用が盛り込まれたことで、すべての教師が何らかの形で新聞を活用した授業実践を行っていくことになります。
今後、新聞の活用に関する実践が全国的に増えていくようになると考えています。私の勤務する学校のあるさいたま市では、今年度から市内全小中特別支援学校で新聞活用を行っていくことになりました。これは新聞活用を先進的に進めてきた教師にとっては朗報と言えます。しかしながら、まだ新聞を活用した実践をしている教師が多いとはいえません。いくら教科書に新聞活用が盛り込まれたと言っても、単に教科書をなぞるだけの授業になってしまっては新聞活用の大きな効用を得ることができません。新聞活用が本格的に始まるにあたりきちんとした体制を整えていく必要があるといえます。次回の学習指導要領の改訂の際に、新聞の活用を見直していくようなことにしてはなりません。その意味でも私たち教師がこれまでの実践を整理し新聞活用の効用についてしっかりと理解する必要があると考えています。
新聞の活用について特に小学校の低学年の先生方が活用しやすくなるように今後いくつかの事例を示させていただきたいと思います。

菊池 健一(きくち けんいち)
さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。
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