2011.03.12
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『新聞を活用した模擬授業』

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

 小学校の新学習指導要領完全実施がいよいよ4月に迫ってきました。今回の学習指導要領で特徴とされている点の1つに様々な教科・領域で「新聞の活用」が盛り込まれたということがあります。これまでも新聞を活用した授業や新聞づくりなどの活動は行われてきましたが、新指導要領では、例えば国語科では中学年で「新聞を作る活動」が、高学年では「新聞を読む活動」が言語活動例として明記され、各教科書にも新聞を教材とした単元が登場しています。これは、PISA調査などで重要視されている実用的な言語力を高めるためであると考えられます。

 今回、5年生国語科の新教科書にある「新聞を読もう」という単元の授業を行いました。児童が新聞からお気に入りの記事を見つけたり、自分の地域の記事を探す活動を行いながら新聞に慣れさせた後に、報道記事の特徴についてていねいに学習しました。
 報道記事は「見出し」「リード文」「本文」といういわゆる逆三角形の構成になっていることや、内容には、いつ・どこで・だれが・なにを・どのように・なぜ、といった5W1Hが書いてあることを学び、実際の新聞記事で確かめました。

 そして、メインの活動として、同じ内容の出来事を取り上げた2つの記事を読み比べて違いを話し合う活動も行いました。オリンピックに関する2つの報道記事のうち、1つはある選手のみの写真が掲載してあり、もう一方はその選手とライバル選手の写真が掲載してありました。児童は、
「こっちの記事は○○選手の写真だけだから、本文にも○○選手のことが中心で書いてあります」
「こっちの記事は○○選手のことだけではなく、ライバルの○○選手のことも書いてあるよ」
と、詳しく記事を読み比べていました。

 授業実践を行う前には小学生にとって新聞を読むことは難しいのではないかという考えがありました。しかし、新聞記事の特徴をしっかり押さえてそれに従って読んでいけば、児童にとって新聞を読むことが難しいことではなくむしろ楽しいことになるということを感じました。きっと児童たちは日常の生活の中で新聞に親しむことが多くなると感じています。

 来年度から新聞を活用する授業が日本中で盛んにおこなわれるようになります。その活動を通して児童が日常的に新聞に触れ、言語力を高められたらと思います。そしてそれだけではなく、家族で新聞を読み、記事の内容について話し合うというように、新聞が家族のコミュニケーションの媒介になることも願っています。
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菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

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