2008.11.10
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

マット運動で「できる!」思いを

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当 菊池 健一

 現在、5年生の体育授業で「マット運動」に取り組んでいます。マット運動や跳び箱、鉄棒といった器械運動に対して苦手意識をもっている児童がたいへん多く、それが原因で体育嫌いになっていることも少なからずあるように思います。そんな問題を解消し、すべての児童が楽しく活動に取り組み、技能も向上できるような授業づくりを目指しました。

 授業の中で、児童の『運動有能感』を伸ばすことを心がけました。『運動有能感』は、「できる!」という思い!(有能感)、「できそうだ!」という思い(統制感)、そして「みんなから受け入れられている!」という思い(受容感)からなります。これらを伸ばしていくことで児童は積極的に楽しく運動し、技能も向上させられると考えています。

 マット運動の実践の中で、まず「有能感」を伸ばすために、重点となる技を「倒立前転」に絞り、そのできばえのレベルを以下のように細分化しました。
(1)かべのぼり倒立ができる 
(2)壁倒立ができる 
(3)足を肩車で補助した倒立前転ができる 
(4)補助倒立をして倒立前転ができる 
(5)倒立前転ができる
 このようにすることで児童全員が自分の目標を立てて、そのレベルに合わせた練習を行うことができます。そして毎回技能の向上を感じながら最終的な目標である(3)以上のレベルを目指すことができました。
また、授業の中で児童が見本となって技を友達に見せる時間を作りました。得意な児童だけでなく、苦手な児童にも授業の中でできるようになったことを発表させました。普段ならばなかなか友達の前で発表したりしない児童も、私の補助を借りながら上手に倒立するところを見せることができました。

 次に、「統制感」を伸ばすために、授業の最初に行う慣れの運動において、倒立の基礎となる「かえる倒立」や「犬歩き」などの練習を十分に行わせるようにしました。毎回の授業で必ず行うので、この後にすぐに倒立前転の練習にスムーズに入ることができました。
また、倒立前転の上手な見本を映像で見せることによって、技のできばえを具体的にイメージさせることができました。

 最後に、「受容感」を伸ばすために、倒立前転の練習ではペアを作り、2人ずつで練習をさせるようにしました。お互いに技を見合ったり、アドバイスをしたり、補助をしたりする中で楽しく活動できました。
また、教師のストローク(声かけ)も多くすることを心がけました。最初の慣れの運動においてはグループをまわり全員の児童に声をかけるようにしました。倒立前転の練習の際には重点を置いて、練習に困っていたり、アドバイスを必要としている児童を中心に声かけを行いました。授業の中で私自身たくさん児童と関われていると実感できました。

 このような工夫をしながら行った今回のマット運動では、児童全員が積極的に運動に取り組むことができました。しかし、反省点として、やはり全員がきちんと倒立前転を行うところまでレベルを上げられなかったことが挙げられます。今後もさらに指導法を研究し、全員がさらに技能を伸ばせる指導をしていきたいと考えています。
081110kikuchi1.jpg081110kikuchi2.jpg081110kikuchi3.jpg

菊池 健一(きくち けんいち)

さいたま市立植竹小学校 教諭・NIE担当
所属校では新聞を活用した学習(NIE)を中心に研究を行う。放送大学大学院生文化科学研究科修士課程修了。日本新聞協会NIEアドバイザー、平成23年度文部科学大臣優秀教員、さいたま市優秀教員、第63回読売教育賞国語教育部門優秀賞。学びの場.com「震災を忘れない」等に寄稿。

同じテーマの執筆者

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop