2019.04.25
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入学式で伝えたいこと

月の初めに新入生を迎え、新たな気持ちで出発し、数週間が過ぎました。新入生のクラスでなくとも、クラス替えがあったり、担任の先生の異動で新たに担任が変わったりするなど、新たなスタートを切ったクラスは多いのではないでしょうか?私事ですが、前任校 山形県立米沢工業高校定時制から米沢東高校へ異動となり、新任校で1年次担任となりました。そういう意味で、私にとっても、今月は新たなスタートであり、入学式での指導のあり方は、何度も試行錯誤しました。今回の記事は、入学式前後のHRの指導について、今年度私が実際に行ったものを備忘録的に綴ってみました。

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

生徒たちの様子

入学式当日の生徒たちの様子はどうでしょうか?例え、同じ中学校出身者が多数いたとしても、入学式前のHRに行くと、全員がかなり緊張した様子で席に座っていると思います。高校生活への楽しみと不安で胸がイッパイといった状況です。特に、不安については、中学校で不登校だったとか、仲良しの友達と別々のクラスになってしまったとか、そういった生徒はだいぶ大きな不安を抱えているかもしれません。さて、そんな不安や緊張を取り払い、自分の伝えたいことを伝えるには、どんな手法が有効なのでしょうか??

入学式前のSHR

入学式前、教室の雰囲気はガチガチです。教室に入って、とりあえず
「じゃあ、皆さん立ちましょう」
「拍手してみましょう!」
パチパチパチパチ・・・
「では、隣の人とペアを作って向かい合って、拍手してみましょう」
パチパチパチパチ・・・
「今度は、周囲を見渡して、クラス全体に向かって拍手してみましょう」
パチパチパチパチ・・・
「いいですね!では、今なぜ拍手してもらったと思いますか??ちょっと考えてみてください」

~ 回収物集め ~

この日、入学式前の時点で各自の机上に学級通信第0号を置いています。その通信をもとに、ここから次のような話をします。

「皆さんは高校生活で大きく成長するでしょう。しかし、今日、この時点でもすでに成長しているんです。今日、ここに来るという決断をするのはスゴク勇気のいることです。『え?当たり前じゃないの?』と思っている人もいるかもしれません。でも、高校は中学と違い、周囲の友達もまったく新たな人が入ってくるし、通学手段や通学時間も違います。そんな新たな環境に自分から足を踏み出し、今ここにいるということは、それだけで素晴らしいことです。さっきの拍手には、そんな意味が込められています」

~ 入学式の流れを説明 ~

入学式の説明では、呼名練習だけになりがちですが、入学式の次第や会場図などを示してあげることで、不安な生徒も見通しを持って行事に臨むことができると思います。例えば、トイレが近い生徒にしても、来賓挨拶が何人あるのか、式後に担任紹介などがあるのか、といったことを把握しておくだけでもだいぶ違うと思います。

入学式後のSHR

入学式後、やや緊張もほぐれ、安心したような表情の生徒も多いです。ここでは、保護者の方もほぼ全員いらっしゃっているので、クラス経営について話をする絶好の機会だと思います。ただ、新入生オリエンテーションや入学式の式辞などである程度の話は聞いているわけなので、式後に担任からあらためて網羅的に話をされるとウンザリといった感じになってしまう可能性があります。たくさん話しておきたい気持ちは分かりますが、クラス担任として自分はこれを大事にしている!という部分を強調した方が良いと思います。

今年度、私の式後のHRでは、式前のHRで拍手をしてもらったペアに1本ずつ割りばしを渡し、インプロ(即興劇)のワークをしてもらいました。具体的には、人差し指で割りばしの両端を支え、バランスを取りながら、立ったり座ったりしてもらいました。けっこうノリが良かったので、2組のペアにさらに1本割りばしを渡してドッキングさせて4人1組にもして、立ったり座ったり、「4人のうち2人だけ座って」など、様々な動きをやってもらいました。全然知らない人同士のはずが、だいぶ笑顔が見られ、途中で保護者の方が入って来ても盛り上がっていました。

さて、保護者の方が入ってきたところでワークは終了し、タネ明かしです。
「このワークの目的は、緊張をほぐすこともありますが、相手がなかなか思い通りにならないことを体験してもらいたかったんです。『座って』『立って』と言われたときの相手の動きやタイミングは、自分とだいぶ違ったのではないですか??自分が当たり前だと思っていた感覚が、実は当たり前ではなく、まさに“みんな違ってみんないい”、人それぞれなんです。特に、中学と違い高校は、いろんな環境で生活してきた人が集まります。おそらく『この人ちょっと違うな』『え?そんな考えアリ?』などと思うこともあるでしょう。でも、そんなときに他者を排除するのではなく、『そういう考えもあるんだな~』と受け入れ、自分にも取り入れてみるなど、プラスに捉えてほしいと思います」

という感じで、私がクラス担任として最も伝えたい事項は「多様性を認め合う」ということなので、このようなワークをして、タネ明かしをしたところです。ここは、それぞれの先生の個性が出るところなので、腕の見せ所ではないでしょうか?

なお、インプロのワークについては以前の記事でも紹介していますので、良かったらそちらもご覧ください。ちなみに、今回HRで行った拍手や割りばしのワークは、どちらも非言語のワークであり、いきなり「自己紹介し合いましょう」などといった言語のワークに比べて、初対面でも取り組みやすいという特徴があります。場の雰囲気にもよりますが、授業者がこの順序を意識することはかなり重要だと思います。
「インプロのススメ」

保護者への協力依頼

入学式にはほぼ全員の保護者の方が出席しているので、伝えたいことはたくさんあります。あまり細かいこと(校則の細かな規定など)を説明していると時間がなくなるので、私は「中学より遠いけど、連携は密に!特に、授業を見に来てほしい」と伝えています。4月末あたりにPTA総会と授業参観を企画している学校が多いので、入学式の際にそれも伝えます。

授業参観については、「ぜひ!生徒の表情を見に来てください」という話をします。入学式後のHRでは保護者の方は後方で話を聞いているケースが多いですが、「特等席はそこじゃありません!教室の前方です。ここから教員でなく、お子さんの表情を見てください!」と言います。後方からだと「やはり高校は難しい内容をやっていてスゴイな~」「〇〇先生の授業はかなり高度なことをやっている」などといった生徒主体でない感想を持ちがちです。自分の子どもが寝ていても、つまらなそうにしていても後方からだと表情が見えないので、授業者の話術で誤魔化されてしまいます。前方から見ることで、「生徒はどうだったのか?」という、生徒主体の見取りができると思います。先生がどれだけ高度な内容を必死にしゃべっていても、生徒はまったく関心を示していないなど、その授業での生徒の学びの様子がすべて明らかになります。これは、保護者の方に限らず、私たち教員が授業を見学する場合も効果的だと思います。

入学式の翌日

入学式の翌日、どんな話をしますか?今年度、学年集会で次のような話をしてみました。

「皆さん、手を挙げてもらってもいいですか」
「入学式の日に〇〇先生が最初に話した言葉を覚えている人、そのまま手をあげていてください」
・・・全員が手を降ろす・・・
「では、もう一度、全員手をあげてください」
「今度は、自分の出席番号を覚えている人、そのまま手をあげていてください」
・・・全員が手をあげたまま・・・


「この違いは、何だと思いますか??」

「他の人の話を受け身で聞いていると、それはほぼ忘れるんです。でも、出席番号は、張り出されている紙を自分で探して見て、下駄箱や教室の座席の位置も確認したと思います。このように、自分で探したり、調べたり、あれこれ考え試行錯誤したりしたことは身につくんです。学習も同じです。そんな学習ができるようにしましょう!」

ちなみに、「入学式で〇〇先生が最初に言った言葉を覚えてる人、手をあげて」とか「自分の出席番号を覚えている人、手をあげて」としなかったのは、とりあえず全員に手をあげるという動作をさせることでウォームアップしたかったことと、ほぼ全員が初対面の緊張した場面で、自分から率先して手をあげるより、全員が手をあげた状態からNOの人だけ降ろすという方がはるかにハードルが低いからです。

ということで、今回は入学式前後のHRで今年度やってみたこと、伝えてみたことを綴ってみました。
昨年度まで夜間定時制高校から全日制普通高校へと異動し、新たな環境となりましたが、引き続き、様々な気づきを記事にしていきたいと思います。今年度もよろしくお願いします。

高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

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