マネー教育特集
子どもにお金のことを教えるのに抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、幼い頃から正しい金銭感覚を身に付けさせるのは、とても重要なことです。お金を計画的に使うことを体験しておかないと、大きくなってから、カード破産に陥ったり、悪徳商法に引っかかったりする怖れもあります。そのような中、ファイナンシャルプランナーの方が講師となって、学校でも子ども向けセミナーが開催されるなど、マネー教育が行われる機会が増えています。そこで今回は、マネー教育を行う際に使われる教材を紹介していきます。
株式学習ゲーム
実際の企業の株価をもとにゲームを進める
http://www.ssg.ne.jp/
東京証券取引所
東京証券取引所、日本証券業協会、証券広報センターの3団体により行われている教育プログラムが「株式学習ゲーム」。基本的に中学校および高等学校の社会科授業で活用されることを念頭において作られたもので、実際の株式市場で取引されている主要企業300社の株価を用いて模擬売買を行っていく。
ゲーム参加の申し込みをすると、ゲームの進め方を説明した「ガイドブック」、株式市場の基本的な仕組みを解説した「株式ABC」、売買対象となる300社の企業内容や株価動向などをまとめた「売買対象企業一覧」などの教材が、1週間ほどで学校に送られてくる。
各チームの売買内容を郵送または送信すると、後日その結果が出てくるが、参加最終日の時点で資産合計額が最も多かったチームが優勝となる。こうして現実の株価変動に注目することで、その背景となっている現実の経済や社会の動きに興味が持てるようになる。
証券クエスト
証券の学校と証券の街で知識を身に付ける
http://www.shokenquest.jp/
証券知識普及プロジェクト
主に中学生・高校生向けに証券に関する知識を学んでもらうためのサイトが「証券クエスト」。日本証券業協会、東京証券取引所、投資信託協会、証券広報センターからなる証券知識普及プロジェクトにより運営されている証券界の公式ホームページである。「証券の学校」で株式などに関する講座を受けたり、「証券の街」で証券に関係する場所を訪ねて、証券会社は何をしているところかや、証券は私たちとどのような関わりがあるかなどを学んでいく。
「証券の学校」には、「金融の基礎知識」、「株式」、「債券」、「資産運用と投資信託」の4つの講座があり、証券博士の案内で証券についての知識を身に付ける。そして、「証券の街」では、「わたしの家」、「株式会社」、「証券会社」、「証券取引所」、「投資信託会社」、「銀行」、「郵便局」、「財務省」、「日本銀行」、「金融庁」を訪れ、それぞれの役割を学習する。
また、教育現場で証券クエストをより多く活用してもらうため、教職員を対象とした「職員室」のページが設けられており、利用申込書を提出すると入室・利用に必要な専用IDと専用パスワードが発行される。この「職員室」に入室すれば、株式学習ゲーム関連レポートやエッセイ、Q&Aのコーナーなどを見ることができるほか、掲示板を使って先生方の交流もできる。
man@bow
経済について楽しく学ぶためのサイト
http://manabow.com/
日本経済新聞社、野村證券
「man@bow」は経済を楽しく学んでもらうことを目的に作られたサイトで、日本経済新聞社と野村證券によって運営されている。この中の「スタート!けいざい」のコーナーを見れば、お金の上手な使い方や、インフレとデフレとは何かなどが簡単に分かるようになっている。また、「ニュースがわかる?!」のコーナーでは、常に変動するマーケットに対応すべく、その時々に合った最新の情報が提供されるほか、日本経済新聞の読み方を分かりやすく解説してくれる。
そして、「簡単?難しい?株知識」のコーナーでは、株式とは何か、株式運用とはどういうものかを教えてくれる。「ひ・と・や・す・み」は経済に関する豆知識のコーナーとなっており、19世紀アメリカのゴールドラッシュなど、お金に関する話しや、企業の創始者たちの足跡が紹介されている。
100万円あったら、どうする? ほか
金銭教育に向けて冊子やビデオを配布
http://www.shiruporuto.jp/
金融広報中央委員会
「マネー情報 知るぽると」の愛称でも知られる金融広報中央委員会では、金融・経済に関する正しい知識を身に付けてもらうための情報の提供や、金銭や物に関する健全な価値観の育成を目的とした、金融経済学習の支援などに努めている。
その金融広報中央委員会が重点活動の一つとして取組んでいるのが学校における金融教育。幼児・児童・生徒が、物やお金を大切にすることを通じて正しい金銭感覚を身につけること、また「金融経済の仕組み」「生活設計」「消費者教育(トラブル予防的視点)」「キャリア教育」などの観点から「生きる力を養う」教育として「金融教育」に取組んでいる。その金融教育の推進に向けて、金銭・金融教育研究校制度を実施しているほか、各種講演会やシンポジウムの開催、学校や学習会への講師の派遣などの活動を展開している。
また、教育現場で活用してもらうため、冊子やビデオを作成し、学校や教育関係者等に無償配布(ビデオは貸出)を行っている。高校生向けには、お金やカードなどのトラブル、また多重債務に陥らないため、正しい知識を身に付けてもらうための「きみはリッチ?」「これであなたもひとり立ち」を提供している。また、中・高校生向けに市場の動きや貯蓄など、金融や消費生活の基礎知識を説明するとともに、金融・経済に関する用語を解説した冊子を作成・配布している。
「100万円あったら、どうする?」は、小学生4人組がお金の使い道や銀行の役割などについていろいろ考えていく物語で、冊子とビデオをそれぞれ配布・貸出を行なっている。
マネースマート typeR
株やビジネスに投資して夢を実現させるゲーム
株式会社マスヤマコム
以前にビジネスシミュレーション特集でも紹介した「マネースマート」は、少年マガジンの連載マンガ"M.I.Q"の原作を担当するマスヤマコムさんが開発した、楽しみながら経済の仕組みを分かってもらうためのパソコンゲーム。マスヤマコムさんが運営するクロパンダ・ジェーピーのサイトからは、キャラクター、シナリオ、ゴールが1種類で、4年以内にクリアしないとゲームオーバーの機能を制限したお試し版が無料でプレイできる。
「マネースマート」は、キャラクターを動かして自分の夢を実現させるゲームで、株、不動産、ビジネスを投資しながら、ゴールを目指していく。
CD-ROM版には9種類のキャラクター、5種類のシナリオ、9種類のゴールが用意されており、最初は1種類しか選べないのが、クリアするごとにより多く選択できるようになり、最終的には405通りの組み合わせをプレイすることができる。ゲーム上のマップを5歩移動すると1か月が過ぎ、その度に収入が入ってくる。ただし、その収入だけでは目標を達成することができないので、株や不動産を売買し、所持金を増やす。
また、サイトではマネースマートの内容を本にまとめた小説「マネースマート ~ほしいものが手に入る方法教えます」なども販売されている。
現在、マスヤマコムさんは全国の中学や高校などにゲスト講師として招かれ、マネー教育の授業を行っている。
こづかいゲーム
ボードゲームで楽しみながらお金の価値を学ぶ
http://www.moneyjuku.jp/
マネーじゅく
子どもの金銭教育に携わりたいという仲間たちが集まって生まれた「マネーじゅく」。代表である陣内恭子さんが福岡でスタートさせた個人活動は、着実に仲間を増やし、その活動は全国に広がっている。その「マネーじゅく」では、「子どもとお金のよい関係づくり」を提案するためのワークショップを展開しているが、そこではオリジナルのゲームを使って、子どもにお金の価値観を伝えている。
「こづかいゲーム」は、サイコロを振ってコマを進めていくボードゲーム。まずゲームを始める前に、子ども達は、自分が買いたい物と、その値段を決めて付箋に書いていく。
こうして子ども自身に選ばせる要素を持たせていることが、単なる遊びに終わらず意識を高めることにつながっている。そして、ワークショップに協力するファシリテーターがバンカー役となって、子ども達にお金の受渡しを行いながら、子どもたちは、自分が幾ら使ったかなど、保護者にサポートしてもらいながらも、自分で計算シートに記入していく。
低学年の子どもに、お金の計算は難しいように思われるが、実際のワークショップでは、金額の増減を書き込みながら、楽しそうにゲームを進める子どもの姿が見られた。
マネーじゅくでは、ワークショップに出て終わりというのではなく、そこで覚えたことを、家に帰ってから実践してもらうように、保護者の方に提案している。そうした機会を設けていかないと、子どもに正しい金銭感覚を身に付けさせるのは難しいという。
たまごとお金のはなし
家族が協力して収入を得る姿を書いた紙芝居
子どもとお金の教室
子ども達にお金の大切さを分かってもらおうと、泉美智子さんが代表を務める「子どもとお金の教室」では、保護者や教育機関に向けて、全国各地で金銭教育講座やパネルディスカッションなどを行っている。こうした活動を通じて、子どもたちに健全な金銭感覚を身につけさせ、社会人としての大切な資質を育んでもらうのがねらい。
そうした親子参加型セミナーなどで、上演するために作られた紙芝居教材が「たまごとお金のはなし」。この紙芝居では、たまごを生産している家族が、ニワトリの病気や、環境問題、たまごの価格などの問題を、家族が協力して乗り越える姿が物語となっている。
物語の主人公となる養鶏場を営む小間田一家は、お父さんとカオルママ、小学生の一平くん、キミおばあさん、そして番犬ゲルの4人と1匹。にわとりが生んだたまごを養鶏センターに売りに行くのがお父さんの仕事だが、ある日、サルモネラ菌の感染により養鶏場は大打撃を受けてしまう。そんな収入が途絶えてしまった状態から、新しい鶏舎で栄養のあるたまごを生産し、それをお金に変えて再起を図っていく様子を子ども達に語る。
「子どもとお金の教室」のホームページでは、この「たまごとお金のはなし」がWEB上で紹介されているほか、「たまご博士情報リンク集」として、たまごの相場や栄養分のことが分かるサイトなどにリンクが張られている。
積み立て投資ゲーム うさぎとかめ
うさぎになってかめと株式を競い合う
野村證券
株式投資に関する知識を深めてもらうことを目的に、野村證券がサイト上で行っているサービスが積み立て投資ゲーム「うさぎとかめ」。利用者はうさぎになって対戦者であるかめと、どちらが同じ株式銘柄をいかに安く買うことができるかを競い合う。
ゲーム上で設定されている投資期間は3年間で、うさぎとなった利用者は、6ヶ月に1度、タイミングを見て好きな時に100株を買うことができ、これを6回繰り返していく。そして対戦者のかめは、月々1万円づつ、3年かけて積み立て投資を行っていく。
ゲームをスタートすると、3種類の株価チャートが表示される。このチャートはゲームスタート直近6ヵ月の株価の動きを表したもので、平成14年10月末における、東証一部上場銘柄の時価総額上位100社から抽出された実在する銘柄。このチャートの動きを参考にしながら銘柄を選択する。
そして、ゲームが終了すると、使ったお金を持っている株数で割って、1株あたりの購入金額が安い方が勝ちと判定される。競争相手であるかめは、毎月1万円ずつ金額を決めて、その買える範囲で株式を購入する株式積立て。株価が高いときには少しの株式を、逆に安い時はより多くの株式を買っていくので、それに勝つためには、株価の動向を予測して、よほど的確なタイミングで購入しないと難しいということが分かる。
いつでも欲しい物を買ってもらえる子どもにとって、計画的にお金を使うということは、なかなか実感できるものではありません。中学生や高校生にとっても、銀行や株式の仕組みなどは、自分にとって関係無いものと感じるかも知れません。しかし、お金について学ぶことは、社会の仕組みを学ぶことにつながります。子どもが、社会に足を踏み出す前に、お金や経済について教える機会を作ってあげてください。
マネー教育特集
教材名 | 株式学習ゲーム | 証券クエスト |
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運営企業・団体名 | 東京証券取引所、日本証券業協会、証券広報センター | 証券知識普及プロジェクト |
内容 | 株式市場で取引されている実際の企業の株式を用いて、チームで株式の模擬売買を行う | 証券に関することが学べるサイト |
特徴とねらい | 株価の変動を通じて、経済や社会の動きに興味を持たせる | 「証券の学校」で証券に関する講座を受け、「証券の街」で私たちと証券の関わりを学ぶ |
入手方法 | 株式学習ゲームのサイトにアクセスし、参加申込用紙を出力、記入しFAXで申し込む | 「証券クエスト」のサイトにアクセス。教職員専用ページの「職員室」を利用する場合は、利用申込書をFAXし、専用IDおよび専用パスワードを発行してもらう |
主な対象 | 中学生、高校生(学校限定の教材) | 中学生、高校生、大学生(「職員室」は教職員のみ) |
教材名 | man@bow | 100万円あったら、どうする? ほか |
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運営企業・団体名 | 日本経済新聞社、野村證券 | 金融広報中央委員会 |
内容 | 学生に経済のことを楽しく学んでもらうためのサイト | 金融・経済に関する冊子やビデオを学校や教育関係者に配布 |
特徴とねらい | お金や経済、株式に関する知識を身に付ける | 冊子やビデオを見ながら、正しいお金の使い方やカード、悪質商法などについて学ぶ |
入手方法 | man@bowのサイトにアクセスする | 無償刊行物については、メール、FAX、ハガキで請求 |
主な対象 | 中学生、高校生 | 幼児~高校生 |
教材名 | たまごとお金の話 | 積み立て投資ゲーム うさぎとかめ |
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運営企業・団体名 | 子どもとお金の教室 | 野村證券 |
内容 | 養鶏業を営む家族の姿を描いた紙芝居 | うさぎになって対戦者のかめと株式を安く買うことを競い合うサイト上のゲーム |
特徴とねらい | 家族が協力してたまごを生産し、収入を得る姿からお金の大切さを学ぶ | ゲームを通して株式投資に関する理解を深めてもらう |
入手方法 | 各地で開催されている「たまごとお金の話」紙芝居上演に出席する | 積み立て投資ゲームのサイトにアクセス |
主な対象 | 小学生、中学生 | 特に限定無し |
※当記事の情報は、公開当時のものです。