主体的・対話的で深い学びの視点で授業改善し続けるには New Education Expo 2019 現地ルポvol.5

新学習指導要領では、主体的・対話的で深い学びの視点で、授業を改善し続けることが求められる。学校全体で授業改善に取り組むには、どんな工夫が有効なのだろうか。元・文部科学省視学官の澤井陽介国士舘大教授と、四谷小学校の石井校長と経堂小学校の横田研究主任が、成功の秘訣を語ってくれた。
主体的・対話的・深い学びの実現の観点から「授業改善」を考える
国士舘大学 体育学部教授……澤井 陽介氏
新宿区立四谷小学校校長……石井 正広氏
世田谷区立経堂小学校………横田 富信氏
授業改善を続けるための手立て

「主体的・対話的で深い学び」の観点で授業改善を続けていくには、校内研究の活性化が重要です」。元・文部科学省視学官である国士舘大の澤井陽介氏は、セミナー冒頭でそう指摘した。校内研究は授業者の発問や説明といった「指導力の研究」になりがちだが、授業を改善していくには「授業づくりの研究」を心がけるべきと澤井教授は言う。
そのためにはまず、「授業記録」をしっかり取るのが効果的。本時の目標、教師の発問とそれに対する子どもの発言、板書内容等を、時系列で記録していくのだ。この授業記録を見ながら、「主体的・対話的で深い学び」になっているか、具体的に検討していく。
たとえば「主体的な学び」になっているか否かは、「教師の問いかけた課題が子どもにしっかり届いているか」「子どもは見通しを持って学習にのぞめているか」等の観点でチェックする。「対話的な学び」になっているか否かは、「子ども同士の発言がつながっているか」「課題や教師の発問に正対しているか」等の観点で精査。「深い学び」になったか否かは、「本時の目標に向かっているか」「子どもが考える場面はしっかり焦点化されているか」「学習のまとめは子どもが行っているか」等の観点で点検するといいそうだ。
研究主任として授業改善を推進

続いて、校内研究を活性化させて授業改善に成功している先生方が、その取り組みを報告した。
東京都世田谷区立経堂小学校の横田富信氏は、研究主任として校内研究の活性化を図ってきた。キーワードは「全教員の参加」。すべての先生が主体的に、温度差なく校内研究に取り組めるように、4つの手立てを講じたという。
①組織づくり
②授業づくり
③協議会づくり
④振り返り
学校長として授業改善を推進

①学校組織で課題を共有
②課題解決に向けた組織的な取り組みの方向付け
③教員一人ひとりの実践力の向上を図る
年間で予定されている校長による授業観察や年次研修での研究授業などは約50回になる。それを校内で授業公開を行い、先生同士で授業を見合う機会としてきた。教員一人ひとりが担当学級の「学力向上プラン」を作成し、そのプランに基づいて授業を公開し、他の教員が授業を観察。事後の振り返りで改善点を見つけ出し、さらなる改善に取り組んでいけるようにしている。
「今までの授業改善を否定するのではなく、これまでの授業改善の延長線上に、主体的・対話的で深い学びの実現がある」と石井校長は語り、すべての教員が日常的に主体的に授業改善に取り組める環境を整えるのが、学校長の使命だと語った。
2校の事例から学ぶ授業改善のコツ

この2校の発表を受けて、澤井教授は授業改善のコツを説明した。
まず経堂小のケースは、研究主題の立て方や体制づくりが奏功して、「ベテランの先生が率先して研究授業を行うなど、校内がとても良い雰囲気で取り組めている」と指摘した。そして四谷小のケースは、「シンプルかつ具体的な授業改善環境を作っているので、先生方一人ひとりが取り組みやすい」と評価した。
このような体制作りに加え、学校が一丸となり同じ方向を向いて授業改善を進めていくには、重要な用語の解釈等について学校全体で共通理解を図ることも大切だと、澤井教授は言う。その筆頭が、「深い学び」の定義だ。「深い学び」は目新しい言葉であり、ややもすれば解釈が人によって異なりがちだが、その内容は「知識を相互に関連付ける」「情報を精査して考えを形成する」など、これまで日本の教育が追求してきた既知の学びであると澤井教授は言う。そして「深い学び」とは、各教科等の目標を実現するために、各教科等の特質を踏まえた「見方・考え方」を働かせて学ぶことであるが、この「見方・考え方」は教科によって異なる。新学習指導要領を読むなどして、各教科等の目標と「見方・考え方」をよく研究し、すべての先生にその理解を徹底することが重要だと、澤井教授は締めくくった。
取材・文:学びの場.com編集部/写真提供:New Education Expo実行委員会事務局
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