2015.02.10
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意外と知らない"21世紀型スキル"(vol.2)

意外と知らない

"21世紀型スキル"とはどのような能力か? そして、どのように育成し、評価するものかについて、4回にわたり詳しく紹介するシリーズの第2回目です。

前回は、アメリカの労働省や日本の経済産業省が定義した労働者に求められるスキルについてご紹介しました。今回は、IT化とグローバル化がさらに進むことを前提として定義された「21世紀型スキル」について紹介してみたいと思います。

「21世紀型スキル」概念の誕生~21世紀スキルパートナーシップ〈P21〉

IT 化等により業務の専門化や複雑化が進む中、付加価値が求められる仕事には、学力等のハードスキルと対比される概念である、「ソフトスキル」が重要だと言われるようになりました。ソフトスキルは、「効果的なコミュニケーション、創造力、分析力、柔軟性、問題解決力、チームビルディング、傾聴力等の、他者と触れ合う際に影響を与える一連の能力」と定義されています。

2002年、アメリカでは全ての子どもたちが21世紀に相応しい教育を受けられるように、将来グローバル経済社会において活躍できる人材になるように、そしてアメリカの発展に寄与してくれるようにという目的で、マイクロソフト、シスコシステムズ、アップル、オラクル、インテル、デルといったIT 企業等の主導の下、教育省等の教育機関と共に非営利団体「パートナーシップ フォー 21stセンチュリー スキル(P21)」が設立され、次のような21 世紀の職場で求められるスキルの体系的整理、既存の学校システムへの導入の仕方の検討が始まりました。

  1. Information and communication skills:情報・メディアリテラシー、コミュニケーション力
  2. Thinking and Problem-solving skills:分析力、問題発見・解決力、創造力
  3. Interpersonal and self-directional skills:協働力、自己規律力、責任感・協調性、社会的責任

21世紀型スキルの学びと評価プロジェクト〈ATC21S〉

2009年1月にロンドンで、シスコシステムズ、インテル、マイクロソフトをスポンサーとして、「21世紀型スキルの学びと評価プロジェクト(Assessment and Teaching of Twenty-First Century Skills Project〈ATC21S〉)」が始まりました。2010年にはオーストラリア、フィンランド、ポルトガル、シンガポール、イギリス、アメリカが参加国として加わり、「21世紀型スキル」は次のように定義されました。4領域10スキルがあります。知識(Knowledge)、技能(Skills)、態度(Attitude)、価値(Values)、倫理(Ethics)の頭文字をとって「KSAVEモデル」とも呼ばれます。

  1. 思考の方法(Ways of Thinking)
    (1)創造力とイノベーション
    (2)批判的思考、問題解決、意思決定
    (3)学びの学習、メタ認知(認知プロセスに関する知識)
  2. 仕事の方法(Ways of Working)
    (4)情報リテラシー
    (5)情報通信技術に関するリテラシー(ICTリテラシー)
  3. 仕事のツール(Tools for Working)
    (6)コミュニケーション
    (7)コラボレーション(チームワーク)
  4. 社会生活(Skills for Living in the World)
    (8)地域と国際社会での市民性
    (9)人生とキャリア設計
    (10)個人と社会における責任(文化的差異の認識および受容能力を含む)

「生きる力」との違い

「生きる力」は、1996年に中央教育審議会で、次の三つなどであると定義されています。

  1. 基礎・基本を確実に身に付け、いかに社会が変化しようと、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力
  2. 自らを律しつつ、他人と共に協調し、他人を思いやる心や感動する心などの豊かな人間性
  3. たくましく生きるための健康や体力

現行学習指導要領では、知識基盤社会の到来を念頭に、変化の激しい社会を担う子どもたちには、(1)確かな学力、(2)豊かな心、(3)健やかな体の調和のとれた「生きる力」の育成が必要であり、基本的な知識・技能の習得、これらを活用して課題を解決するための思考力・判断力・表現力、そして主体的に学習に取り組む態度などを育むことが重要であるとされています。

組織のリーダーには「生きる力」が強い、つまり知力・精神力・体力のレーダーチャートが大きな正三角形を描く人材が求められています。

この「生きる力」に「テクノロジーの力を利用できること」をより色濃く加えたものが「21世紀型スキル」であると考えても良さそうです。また、「生きる力」には「21世紀型スキル」に無い要素として、(3)健やかな体があります。少子高齢化社会である日本で生きるには、健康を維持する能力も不可欠です。

その他の団体による子どもたちに必要な能力の定義

経済協力開発機構(OECD)は、「主要能力(キーコンピテンシー)」が次の三つのカテゴリーから構成されるとしています。

  1. 社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力(知識や情報を活用する能力や、テクノロジーを活用する能力を含む)
  2. 多様な社会グループにおける人間関係形成能力
  3. 自律的に行動する能力

また、欧州委員会(EU)では、生涯学習のためのキーコンピテンシーとして、次の八つを挙げています。「外国語におけるコミュニケーション力」が挙げられているのは、隣町へ行く感覚で国境を自由に行き来できるEUならではと言えそうです。

  1. 母語におけるコミュニケーション力
  2. 外国語におけるコミュニケーション力
  3. 科学技術における数学的能力と基礎的能力
  4. デジタル能力
  5. 学ぶことを学ぶ力
  6. 社会的・市民的能力
  7. イニシアチブと起業家の感覚の力
  8. 文化的意識と表現の力

2回目のまとめ

日本全国の学校で「生きる力」の育成は行われているので、「21世紀型スキル」の大部分のスキルの育成は行われていることになりますが、自治体や学校がタ ブレット端末を導入する背景には、「21世紀型スキル」の「テクノロジーの力を利用できること」部分の育成という目的や期待があるものと思われます。次回 からは、そのメインとなる「問題解決能力」の育成と評価の取り組みをご紹介したいと思います。

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 江本真理子

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