2015.12.01
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意外と知らない"アクティブ・ラーニングのねらい"(vol.1)

教育関連の新聞、書籍、雑誌など、「アクティブ・ラーニング」の特集を目にすることが多くなりました。皆さんも見かけたことがあるのではないでしょうか。本稿では、アクティブ・ラーニングがなぜ注目されているのか、そしてどのようなものなのかについて、初等中等教育分科会の教育課程企画特別部会が2015年8月に発表した『論点整理』を中心に確認していきます。※2017年2月に公表された学習指導要領の改定案では、「アクティブ・ラーニング」という文言は使われず、「主体的・対話的で深い学び」と表現されています。

中央教育審議会と学習指導要領の改訂

「アクティブ・ラーニング」の前に、「中央教育審議会」について確認しておきましょう。中央教育審議会、いわゆる「中教審」は、皆さんもご存じのように文部科学大臣からの意見の求めに応じ、審議をして答える会議で、現在は第8期、五つの分科会から成り立っています。教育課程企画特別部会の下には、五つの部会と17のワーキンググループなどが設置され、専門分野を踏まえた議論がなされています。

審議の結果、つまり「答 申」は、新しい学習指導要領に反映されます。現在議論している内容は、2016年度(平成28年度)から2017年度の間に、中央教育審議会の答申として 発表される予定です。これを受けて学習指導要領が告示されます。小学校では、2018年度には移行措置が始まり、2020年度には全面実施される予定と言 われています。

2014年11月、この中央 教育審議会に対し、文部科学大臣が「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」を発しました。新しい時代にふさわしい学習指導要領 等の在り方について検討してほしいという内容ですが、これまで主に高等教育の分野で語られることが多かったアクティブ・ラーニングという言葉が、この諮問 によって、初等中等教育の分野に降りてきました。そして、この諮問に対して、2015年8月に発表された初等中等教育分科会の教育課程企画特別部会による 答申の案が、本稿で焦点を当てる『論点整理』なのです。

『論点整理』に見る「アクティブ・ラーニング」

「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学 び」、これが2015年10月現在、文部科学省で用いられている「いわゆる“アクティブ・ラーニング”」の定義です。先に述べた『論点整理』において、実 際にアクティブ・ラーニングという用語が用いられている文章は、以下の件(くだり)です。

こ のように、次期改訂が目指す育成すべき資質・能力を育むためには、学びの量とともに、質や深まりが重要であり、子供たちが「どのように学ぶか」についても 光を当てる必要があるとの認識のもと、「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)」について、これまでの議 論等も踏まえつつ検討を重ねてきた。(文部科学省「教育課程企画特別部会 論点整理」より引用)

育成すべき資質・能力があり、その資質・能力を育むためには、学びの量、質、深まりが重要と述べています。さらに、その学びの質の向上や深まりを求めるために、課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学びが有効であると主張しています。

育成すべき資質・能力

2020年から全面実施される次期学習指導要領で求められる「育成すべき資質・能力」とは、どのようなものなのでしょうか。

学校教育法第30条第2項に おいて、学校教育において重視すべき三要素は、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体的に学習に取り組む態度」とされています。これをもとに、 次期学習指導要領においては、育成すべき資質・能力を以下の3点で整理することが考えられています(「三つの柱」と呼ばれています)。

(1) 何を知っているか、何ができるか(個別の知識・技能)
(2) 知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)
(3) どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力、人間性等)

すなわち、子供たちが「何を 知っているか」に加えて、「知っていることを使ってどのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」ということです。そのために、子供たちに、知 識・技能を身につけさせると同時に、思考力・判断力・表現力等と学びに向かう力、人間性等を総合的に育む必要があるとされています。

ここで期待されているのが、アクティブ・ラーニングという学習方法です。

アクティブ・ラーニングの意義

「育成すべき資質・能力」すなわち、「三つの柱」を育成するため、なぜアクティブ・ラーニングに期待が寄せられているのでしょうか。

個別の知識・技能は、主体 的・協働的な問題発見・解決の場面において活用することで定着し、構造化されるとしています。思考力・判断力・表現力等は、知識として教えられて身につく ものではないことは読者の皆さんもおわかりかと思います。これらが必要となる学習場面、すなわち、主体的・協働的な問題発見・解決の場面を経験することで 磨かれていくとされています。学びに向かう力は、実社会や実生活に関連した課題などを通じて動機づけを行うことで興味がわき、努力し続ける意思が喚起され るとしています。

図2:アクティブ・ラーニングと三つの柱の関係

一言で、「主体的・協働的な問題発見・解決の場面」と言ってしまうとわかったような気になりますが、問題発見・解決の場面では、次のような思考・判断・表現を行うことが必要です。

  • 問題発見・解決に必要な情報を収集・蓄積すること
  • 既存の知識に加え、必要となる新たな知識・技能を獲得すること
  • 知識・技能を適切に組み合わせて、それらを活用しながら問題を解決していくために必要となる思考を行うこと
  • 必要な情報を選択すること
  • 解決の方向性や方法を比較・選択すること
  • 結論を決定していくために必要な判断や意思決定を行うこと
  • 伝える相手や状況に応じた表現をすること

ここまでを整理すると、現在 注目を集めているアクティブ・ラーニングは、「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び」であり、その学習過程が、次期学習指導要領で育成しようと している資質・能力(三つの柱)を育むために有効であるということになりますが、あくまでアクティブ・ラーニングは手段でしかない、ということを忘れては なりません。

次回は、アクティブ・ラーニングが注目される中、学校現場に求められていることについて確認します。

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「アクティブ・ラーニング」の発端は、平成20年9月に文部科学大臣から発せられた「中長期的な大学教育の在り方について(諮問)」に対する答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて(答申)」(平成24年8月)です。次期学習指導要領の改訂の背景については、『教育展望』の7・8月合併号に「これから求められる教育のグランドデザイン」と題して、文部科学省初等中等教育局教育課程課長・合田哲雄氏の文章が掲載されています。『総合教育技術』の10月号では、「アクティブ・ラーニングと学校教育の未来」と題して、前述の合田哲雄氏、学習院大学教授・佐藤学氏、文部科学大臣補佐官・鈴木寛氏の座談会が掲載されています。併せてお読みいただくと理解が進むと思います。
参考資料

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 中尾 教子

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