2026.01.12
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もっと知りたい"生成AIの教育利用"(第4回) 教科の学びの中で、生成AIをどう生かすか

1回、第2回では、「生成AIがどんな役割で使われているのか」に注目し、令和5(2023)年度と令和6(2024)年度の変化を見てきました。第3回では、さらに視点を変えて、「校種」「教科」「活用段階」という切り口から全体像を整理しました。
4回では、どんな場面で、どのように使われているのかを、さらに具体的に見ていきます。あわせて、「活用段階 × 教科」で見たときの傾向を簡単に整理し、本シリーズ全体のまとめとしたいと思います。



教科の学びに活用するには、まずこの5つの使い方から

第3回の最後で、「各教科の学びにおいて積極的に用いる段階」では、下記の上位5項目の役割が活用の6割を占めていることをご紹介しました。

  1. 生成AIと相談しながら思考を洗練・深堀する
  2. チェック・評価させる
  3. 絵や音楽、物語等を作成させる
  4. 物事を説明・解説させる
  5. 文章を校正・添削させる

教科の学びに活用するなら、まずこの5つから考えてみるのが良さそうだ、というところまでが前回の内容でした。第2回で取り上げた「思考の洗練・深掘り」を除いた4つの役割について、事例を紹介していきます。

1. チェック・評価させる

児童生徒の考えやレポート、作品などを生成AIに見てもらい、第三者の視点からコメントをもらう使い方です。決して「AIに採点を丸投げする」わけではありません。

たとえば、良い点と改善点を挙げてもらう、どこがわかりにくいか、どこをもう少し詳しく説明したほうがよいかを指摘してもらう、といったフィードバックを受け取り、それを手がかりに自分の取組を見直していく、という流れです。

例えば、体育の事例では、生徒は幅跳びの基本動作を習得する授業の中で、振り返りや自己評価を入力し、それに対して生成AIからフィードバックとアドバイスを受けます。生成AIがいい点は褒めつつ、具体的な改善点をアドバイスしてくれるので、生徒は自分の課題を自覚し、改善に向けた目標を立てやすくなり、学習意欲の向上にもつながったそうです。

このように、「チェックや評価」は、AIの評価を鵜呑みにすることが目的ではなく、自分では気づきにくい視点からのコメントをもらい、それを踏まえて自分たちで学びを深めるための補助役として使われている点がポイントだと言えるでしょう。

2. 絵や音楽・物語等を作成させる

生成AIのわかりやすさや楽しさが伝わりやすい、典型的な活用です。ただし、「各教科の学びにおいて積極的に用いる段階」では、「おもしろかった」で終わらせず、学習のねらいと結びつけて使おうとしている点が特徴的です。自分の表現を考えるためのヒントとして使う、テーマや構図を考える足がかりとする、といったかたちで、学習の本筋と結びついた使い方がなされています。

例えば、国語科で、和歌に込められた心情や情景を理解するために、まず和歌から読み取った情景を文章で表現し、その文章をもとに生成AIで画像を生成します。和歌から自分が感じ取った情景を視覚的に表現し、他者が生成した画像と比較する活動を通じて、情景をきちんと表現するためにどのような言葉や表現が必要なのか、といった点を意識できるようになりました。

ここでのポイントは、画像生成そのものを目的にしているのではなく、「様々な言葉からより適切な表現を考えるための素材」として生成AIを使っていることです。生成AIは、自分のもつイメージを素早く可視化することを通じて、「自分はどう表現したいのか」を考えるきっかけを提供する役割を担っていると言えるでしょう。

3. 物事を説明・解説させる

難しい内容や分かりにくい概念について、生成AIに説明させるような活用です。一般的な検索エンジンでも情報は得られますが、生成AIの場合は、「高校1年生にも分かるように」「身近な例を交えて」などと注文をつけることで、説明の仕方そのものを自分に合わせて変えることができます。

また、生成AIなら、こちらが何度質問してもしつこいと面倒がられることはなく、毎回ちゃんと相手をしてくれますので、自分が納得できるまで説明を深めていける対話相手として使える点も、大きな利点といえるでしょう。

この項目に含まれる活用は、単に「事実を調べる」目的ではなく、より複雑な事象の背景や要因を理解することをねらいとしている点が共通しています。

例えば、社会課題について考える場面では、「なぜそのような状況になっているのか」といった問いに対して、多面的な観点から生成AIに説明させるような活用がなされています。こうした使い方は、従来の検索エンジンではなかなか難しく、これまでは先生に相談するしかない場面も多かったところでしょう。

ただし、このような使い方をする際には、生成AIの「ハルシネーション」に注意する必要があります。いつも事実を述べているとは限らず、時にはもっともらしく見える誤情報を混ぜてくることがあります。生成AIの説明はあくまで参考として受け取り、必要に応じて信頼できる他の情報源と照らし合わせて確認する姿勢が大切です。

4. 文章を校正・添削させる

特に国語や外国語で多く見られる活用です。より自然な表現、より分かりやすい言い方の候補を提示してもらったり、文法の誤りを指摘してもらったりすることで、自分の文章をブラッシュアップする場面で使われています。

例えば、中学校の国語科で、作文の推敲に生成AIを活用する実践事例があります。あらかじめ「どのような観点で直してほしいか」を具体的に指定したうえで、生成AIに改善案を出してもらいます。授業では、生成AIが提示した案をそのまま採用するのではなく、自分の意図にあっている表現を選び取りながら、自分の文章を洗練させていきます。

教師だけでは見きれない細かな表現の部分について、生成AIが書き直しの相談相手として支えることで、児童生徒一人ひとりが自分のペースで推敲を重ねられるようにしている、と捉えることができるでしょう。

活用段階×教科で見える傾向

最後に、第3回の続きとして、「活用段階×教科」で見たときの違いを簡単に整理しておきます。

教科 ①生成AI自体を学ぶ段階 ②使い方を学ぶ段階 ③各教科の学びにおいて積極的に用いる段階
国語 0.0% 9.8% 17.6%
社会・地理歴史・公民 2.9% 7.3% 6.9%
算数・数学 2.9% 4.9% 5.9%
理科 5.7% 4.9% 14.7%
生活 0.0% 0.0% 0.0%
音楽 0.0% 2.4% 2.0%
図画工作・美術 0.0% 2.4% 6.9%
技術・家庭 2.9% 4.9% 2.0%
体育・保健体育 0.0% 2.4% 6.9%
外国語・外国語活動 0.0% 4.9% 17.6%
情報・専門教科情報 5.7% 7.3% 2.9%
道徳 8.6% 4.9% 2.0%
総合・探究 34.3% 19.5% 6.9%
その他 37.1% 24.4% 7.8%

「各教科の学びにおいて積極的に用いる段階」に分類された事例を教科別に見ていくと、国語・外国語・理科の3教科での活用がよく見られました。国語・外国語については、第2回でも触れたように、そもそも言語活動と生成AIの相性が良い、ということが大きいでしょう。

理科については、「チェックや評価」「物事の説明・解説」といった使い方がよく見られました。実験レポートのチェックや、難しい概念・現象の説明などに、AIが関わっているイメージです。

一方で、「①生成AI自体を学ぶ段階」「②使い方を学ぶ段階」については、教科の分布が異なり、いずれも教科外での活用が多いという特徴があります。

  • 生成AI自体を学ぶ段階
    総合的な学習(探究)の時間:34.3%
    その他(学活など):37.1%
  • 使い方を学ぶ段階
    総合的な学習(探究)の時間:19.5%
    その他(学活など):24.4%

これは、当然のことながら、各教科の授業時間では、各教科本来のねらいを達成することが一番であり、生成AIそのものを学ぶ内容に十分な時間を割くのは難しい、という事情があるためだと考えられます。

その代わりに、比較的自由度の高い「総合的な学習(探究)の時間」や「学級活動」の中で、生成AIの基礎的な理解や使い方を学ぶ時間を確保している、という構図でしょう。

4回を通して見えてきたこと

最後に、4回分を通して見えてきたポイントをまとめておきます。

  • 令和5年度には見られなかった「議事録作成」「ダミーデータ作成」「学習のパートナーとしての多面的支援」といった役割が見出され、活用の幅が広がってきた。
  • 「データの整理・分析」「アイデア出し」といった活用が増加し、一方で「問題生成」の活用が減少した。
  • 教育利用では「思考の洗練・深堀」「絵や音楽の生成」、校務利用では「文書のたたき台作成」「計画や案の作成」といった使い方が、2年間を通して高い割合を維持している。
  • 生成AIを理解・体験する段階では、創造的な活用が多く、教科において活用する段階では分析・評価・文章添削など、多様かつ実用的な活用が見られた。
  • 生成AI自体やその使い方を学ぶ段階は、「総合的な学習の時間」や「学活」など、比較的自由度の高い教科外の時間に多く設定されていた。

生成AIは、今後も進歩し続けるでしょう。その中で、ここまで見てきた「どの役割なら活かしやすいか」「どの教科では、どんな活用ができそうか」という視点は、しばらく有効であり続けるはずです。本シリーズが、それぞれの学校・それぞれの教室で、「自分たちならどう活用するか」を考える際の一つの手がかりになれば幸いです。

井上 信介(いのうえ しんすけ)

株式会社内田洋行 教育総合研究所 主幹研究員

内田洋行入社以来、ユビキタスネットワークに関わる研究、システム開発、新規事業の立ち上げに従事。2012年から教育総合研究所に所属。専門分野は、初等中等教育におけるICT活用、とりわけ児童生徒用端末1人1台環境、遠隔・オンライン教育、教育DXなど。文部科学省や総務省の委託事業を多数担当し、実証研究を通じて、現場の実践に根ざした知見の収集分析とモデル構築に取り組んでいる。
また、大学・研究機関との共同研究などを通じて、ICTを基盤とした「学びの質的転換」と学校教育の新たな姿を探究している。国立教育政策研究所文教施設研究センター「創造的な学習空間の創出に関する調査研究(2021-2022)」に調査研究協力者として参画。

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