2026.01.12
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もっと知りたい"生成AIの教育利用"(第3回) 校種別・教科別・活用段階からみた生成AI活用の状況

1回・第2回では、「生成AIがどのような"役割"で使われているか」に着目し、令和5(2023)年度と令和6(2024)年度における役割の変化を中心に見てきました。第3回となる本稿では、視点を少し変えて、校種や教科、活用段階という切り口から生成AI活用の傾向を見ていきます。

校種✕利用種別での傾向

はじめに、校種ごとの事例数を「教育利用」、「校務利用」に分けて集計した結果を示します。

学校種 校数 事例数
校務利用 教育利用
小学校 25 74.4%(61件) 25.6%(21件)
中学校 30 44%(84件) 56%(107件)
高等学校 10 50%(25件) 50%(25件)
中等教育学校 1 33.3%(2件) 66.7%(4件)

ここから、次のような傾向が読み取れます。

  • 小学校:教育利用に関する事例が相対的に少なく、校務利用が中心
  • 中学校・高等学校:教育利用と校務利用が概ね半々
  • 中等教育学校:1校のみのため他校種と同列には扱いにくいが、教育利用の比率は高い

この違いは、小学校では生成AIの教育利用に消極的だからというより、制度面の制約によるところが大きいと考えられます。特に影響が大きいのは、小学校段階で児童が自ら操作して利用できる生成AIサービスが、まだそれほど多くないという点です。代表的なサービスの利用条件は概ね次のようになっています。

主な生成AIサービスの年齢要件(2025年12月現在)
サービス 最低年齢要件 補足
ChatGPT(OpenAI) ・13歳未満は利用不可
・13〜17歳は保護者の同意が必要
Gemini(Google) 一般のGoogleアカウントでは、13歳以上が利用可能 Google Workspace for EducationではGemini for EducationおよびNotebookLMに対する年齢制限が撤廃され、児童生徒全員が利用可能
Microsoft Copilot 通常は13歳以上(地域によっては18才以上) 教育機関テナントでは、Microsoft 365 Copilot ChatおよびMicrosoft 365 Copilot が13歳以上の生徒で利用可能
※各社の規定は頻繁に更新されるので、実際に利用する際には必ず最新情報を確認してください。

他にも、「みんなで生成AIコース(みんなのコード)」など、小学生でも利用可能な生成AI関連サービスも現れつつありますが、学校現場全体から見れば、まだごく一部にとどまっているのが実情です。このように、サービスによっては小学生が自由に使うことが難しい場合があります。その結果、小学校では生成AIを「児童生徒が自分で使う」教育利用よりも、教員が活用する校務利用の事例が相対的に多くなっていると考えられます。 一方、中学校、高等学校では、生徒が自ら生成AIを利用する活動を組み込みやすく、教育利用と校務利用がバランスよく見られる結果となっていました。

教科ごとの傾向

次に、教育利用に限定して、教科ごとの事例数を確認します。

教科 教育利用の事例数 教科 教育利用の事例数
国語・書写 17.8%(33件) 技術・家庭 5.4%(10件)
外国語・外国語活動 16.8%(31件) 体育・保健体育 5.4%(10件)
総合的な学習(探究)の時間 11.9%(22件) 音楽 3.8%(7件)
理科 10.3%(19件) 道徳 3.8%(7件)
算数・数学 7.6%(14件) 情報・専門教科情報 3.2%(6件)
社会・地理・歴史・公民 7.0%(13件) 生活 0%(0件)
図画工作・美術 7.0%(13件)

国語と外国語が、もっとも事例数の多い教科となっています。これは、生成AIがテキストの生成・編集を得意とすることと強く関係していると考えられます。国語や外国語では、「読む・書く・話す」と言った言語活動が中心であり、文章の構成案やたたき台の作成、表現の言い換えや推敲、文章の誤りの指摘や改善案の提示と言った形で、生成AIを学習活動に組み込みやすい領域と言えるでしょう。

活用段階からみた傾向

続いて、「活用段階」という視点から事例の傾向を整理します。「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver. 2.0)」では、児童生徒による生成AIの利活用場面として、次の3つの段階が整理されています。

  1. 生成AI自体を学ぶ場面
    生成AIの仕組み、利便性・リスク、留意点などを学ぶ。
  2. 使い方を学ぶ場面
    より良い回答を引き出すための生成 AI との対話スキル、ファクトチェックの方法等を学ぶ。
  3. 各教科等の学びにおいて積極的に用いる場面
    問題を発見し、課題を設定する場面、自分の考えを形成する場面、異なる考えを整理したり、比較したり、深めたりする場面等での利活用

ガイドラインでは、これらの場面を行き来しながら、情報活用能力の一部として生成AIの理解や活用力を高め、最終的には各教科の学びをより良くする方向で生成AIを位置づけていくことが示されています。

つまり、児童生徒が生成AIを活用する際には、

  • まず「生成AIとは何か」を理解する
  • 次に「どのように使えばよいか」を学ぶ
  • そのうえで、各教科の学びに積極的に用いる

という段階を踏むことが重要だ、という考え方が前提にあります。今回の調査で、この3つの段階に即して教育利用の事例を分類したところ、以下のようになりました。

活用段階 教育利用の事例数
生成AI自体を学ぶ段階 19.6%(28件)
使い方を学ぶ段階 18.9%(27件)
各教科の学びにおいて積極的に用いる段階 61.5%(88件)

「生成AI自体を学ぶ段階」、「使い方を学ぶ段階」に分類される事例はいずれも約2割で、残りの6割は、「各教科の学びにおいて積極的に用いる段階」として整理されています。 もっとも、これは「成果報告書に記載された“代表的な事例”」を基にした集計であり、実際の授業実施頻度がこの割合通りであるとは限りません。(各校とも、成果報告書に記載する事例は、やっぱり生成AIを学習課題の解決に活用したイチオシの事例を選びたいと思って報告してくれているような気がします。)

段階ごとに見た「どの役割で活用されているか」

ここから、活用段階ごとに「どの役割で使われているか」をもう少し細かく見ていきます。

1. 生成AI自体を学ぶ段階

生成AI自体を学ぶ段階の事例は全部で28件ありましたが、そのうち「専門家の講演を聞いた」「説明を受けた」といった、児童生徒自身が生成AIを利用していない事例も多く含まれていました。児童生徒が実際に生成AIを使っている事例に絞ると、集計対象となる事例数は8件となり、その内訳は次のとおりです。

生成AI自体を学ぶ段階(実際の操作を伴う事例)
項目名 教育利用の事例数
絵や音楽、物語等を作成させる 5件
生成AIと相談しながら思考を洗練・深堀する 1件
データを整理・分析させる 1件
画像や動画から情報を読み取らせる 1件

2. 使い方を学ぶ段階

使い方を学ぶ段階では、上位の項目は次のとおりです。

使い方を学ぶ段階(上位4件)
項目名 教育利用の事例数
絵や音楽、物語等を作成させる 7件
生成AIと相談しながら思考を洗練・深堀する 5件
アイデアを出させる 5件
物事を説明・解説させる 3件

このように、「生成AI自体を学ぶ段階」と「使い方を学ぶ段階」のどちらにおいても、最も多かったのは「絵や音楽、物語等を作成させる」でした。

この2つの段階では、生成AIの仕組みや可能性・留意点を「体験を通して理解する」ことが主なねらいです。そのため、児童生徒にとって親しみやすく、生成AIの新しさや面白さが直感的に伝わり、結果の違いが目に見えてわかりやすいという意味で、「絵や音楽、物語などの生成」は最適な活用方法だと言えます。

この段階では「どう教科の学びに生かすか」よりも、生成AIとは何か、どんなことができるのかをわかりやすく体験させることが強く求められており、生成AIの新規性や楽しさを体験させる「見せ方」が重視されている、と整理できます。

3.各教科の学びにおいて積極的に用いる段階

一方、「各教科の学びにおいて積極的に用いる段階」の上位の活用は次のとおりです。

各教科の学びにおいて積極的に用いる段階(上位5項目)
項目名 教育利用の事例数
生成AIと相談しながら思考を洗練・深堀する 20件
チェック・評価させる 17件
絵や音楽、物語等を作成させる 13件
物事を説明・解説させる 12件
文章を校正・添削させる 10件

この段階に該当する事例は全88件でしたが、1つの事例の中に複数の役割が含まれている場合は、それぞれ個別にカウントしたため、「役割の出現数」としては全121件となりました。そのうち、上位5項目だけで約6割を占めています。

特に着目したいのは、「生成AI自体を学ぶ段階」「使い方を学ぶ段階」ではほとんど見られなかった「チェックや評価」が、「各教科の学びにおいて積極的に用いる段階」では2番目に多い活用となっている点です。

これらの項目はいずれも、各教科としての学習目標の達成に直接結びついた活用であり、教科の学びの質を高めるための「道具」として生成AIが用いられているといえます。生成AIを教科の学びに活用しようと考える際には、まずここで挙げた5つの使い方から検討してみると良いでしょう。

まとめ

ここまでの内容を整理すると、活用段階の違いは次のように整理できます。

  • 生成AI自体を学ぶ段階・使い方を学ぶ段階
    → 生成AIを理解し、体験することが主な目的。
    → 生成AIとは何か、どのような利便性とリスクがあるかを、わかりやすく示すことが重視される。
    → 絵や音楽、物語等の生成など、楽しさや新奇性が伝わりやすい題材が選ばれやすい。
  • 各教科の学びにおいて積極的に用いる段階
    → 教科の学習目標の達成や課題解決に直結する活用が重視される。
    → 思考の整理・深掘り、チェック・評価、説明・解説、文章の校正・添削など、学びの質そのものを高める役割が前面に出てくる。

前者の段階では、生成AIは「学びの対象」として扱われることが多く、後者の段階では、「学びを支える道具」として位置づけられている、ということです。今回の分析からは、まずは生成AIの理解・体験の段階を設けつつ、各教科の学びの中に本格的に組み込む試みが進みつつある、という段階的な広がりの姿が見えてきました。

最終回となる第4回は、「各教科の学びにおいて積極的に用いる段階」の具体的な事例や、「活用段階×教科」で見える傾向を紹介します。

井上 信介(いのうえ しんすけ)

株式会社内田洋行 教育総合研究所 主幹研究員

内田洋行入社以来、ユビキタスネットワークに関わる研究、システム開発、新規事業の立ち上げに従事。2012年から教育総合研究所に所属。専門分野は、初等中等教育におけるICT活用、とりわけ児童生徒用端末1人1台環境、遠隔・オンライン教育、教育DXなど。文部科学省や総務省の委託事業を多数担当し、実証研究を通じて、現場の実践に根ざした知見の収集分析とモデル構築に取り組んでいる。
また、大学・研究機関との共同研究などを通じて、ICTを基盤とした「学びの質的転換」と学校教育の新たな姿を探究している。国立教育政策研究所文教施設研究センター「創造的な学習空間の創出に関する調査研究(2021-2022)」に調査研究協力者として参画。

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