2026.02.09
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世界標準CBTプラットフォーム「TAO」次世代版 世界中の誰もが同じ機会を得られるテスト基盤へ

コンピューターを用いて実施されるテスト方式であるCBTComputer Based Testing)は、従来、多くが紙で行われてきたテスト(PBT)に代わり、現在では世界各国および日本において広がりを見せています。
こうしたCBTの拡がりの中、PISA調査や欧米各国の学力調査、国内では文部科学省CBTプラットフォーム「MEXCBT」で採用されてきた世界標準のCBTプラットフォーム「TAO」が、次世代版へと進化しました。また、2026年1月には、オープンソース(ソースコードを公開し、誰でも利用・改良できる開発方式)版であるTAO Community Editionも全世界に向け公開されました。
世界106か国で実施されたPISA2025において採用された、世界標準CBTプラットフォーム「TAO」次世代版について紹介します。

特長

1)世界中の誰もが同じ受検機会を得られるアクセシビリティ

国際的なウェブアクセシビリティ基準「WCAG (Web Content Accessibility Guidelines)2.1 AA」に準拠するとともに各国政府のウェブアクセシビリティ規格にも対応しています。視覚・聴覚・肢体・認知・言語など、さまざまな特性を持つ受検者に配慮したユーザーインターフェースを取り入れており、受検者ごとに最適な環境での受検を可能にします。タブレットPCやモバイル端末でも、画面サイズに応じたレスポンシブデザインによりレイアウトが最適化され、タッチ操作も可能です。

2)クラウドネイティブ構造により大規模な拡張・連携ができるプラットフォーム

従来のモノリシックアーキテクチャー(一つのアプリケーションにまとまっている構成)から、機能ごとに独立して動作するモジュール型プラットフォーム:クラウドネイティブ構造(クラウド環境を前提に設計された柔軟で拡張性の高い構成)へと刷新しました。問題作成、テスト管理、受検、採点、結果提供、ポータルサイトまでの機能を独立したモジュールとして提供することで、利用者は目的や規模に応じて必要な機能を柔軟に選択・拡張できます。

これにより、アクセス集中時でも自動的にリソースを拡張し、百万人規模が受検しても安定した稼働を実現します。多様なネットワークや端末を通じて、国家規模の学力調査から、資格試験まで、様々な試験を安定して実施できます。セキュリティも各国政府の要件に合わせて厳格に構築できます。


3)国際技術標準で学習管理システムと柔軟に連携

TAOは、教育のデジタル基盤を支える「オープンスタンダード」に準拠し、最新の国際技術標準に対応した設計を採用しています。これにより、学習管理システム(LMS)や各教育ツールと安全・柔軟に連携できます。また、教育機関や試験団体などの独自の分析・レポートシステムとも連携できるように、API(Application Programming Interface/異なるシステム同士を連携させるための接続仕様)も利用できます。利用者は、自らのシステムにTAOを柔軟に“組み込む”ことが可能です。

■学習管理システムとの連携(セキュリティと連携機能を強化したLTI1.3規格に対応):LTI(Learning Tools Interoperability/学習eポータルなどと外部ツールを安全かつ簡単に接続する国際技術標準)に準拠した学習管理システム (LMS)から直接TAOを起動でき、ログイン情報などを自動連携。受検後の結果などを安全にLMSに戻すことが可能です。

■テスト問題の共有(問題表現と拡張性を強化したQTI3.0規格に対応):TAO上で作成した問題は、QTI(Question and Test  Interoperability/問題・テスト形式を共通で扱うための国際技術標準。ツール間で問題を共有しやすくなる。)対応の他システムでも利用できます。また他社ツールで作成した問題もTAO上で利用可能となり、テスト問題の相互利用を促進します。

※従来版はQTI2.2、LTI1.1までの対応

※QTI™ および LTI® は 1EdTech Consortium, Inc. の商標または登録商標です。Question & Test Interoperability(QTI)™、Learning Tools Interoperability(LTI)® は1EdTech Consortium, Inc.の登録商標です。
※TAO® はOpen Assessment Technologies S.A. が開発・商品化しています。 TAO® はOpen Assessment Technologies S.A.の商標です。

製品発表会より

OAT Co-CEO 町田 潔氏

2025年12月5日に株式会社内田洋行 新川本社ビルにて開催された製品発表会では、2023年に内田洋行のグループ企業となった開発元のOpen Assessment Technologies S.A.(本社:ルクセンブルク。以下、OAT)のメンバーが、TAOの誕生とこれまでの歩みを振り返るとともに、次世代版として進化したTAOの魅力について語りました。その模様を紹介します。

TAOの歴史と強み

OAT Co-founder&Co-CEO Mark Oswald氏

発表会の冒頭では、共同創業者であるマーク氏がビデオメッセージで登場し、TAOの誕生から現在、そして今後に向けたビジョンについて語りました。

「TAOは2002年、フランス語で『コンピュータベーステスト』を意味する名称(Testing Assiste par Ordinateur:TAO)として生まれました。問題作成から配信、採点、データ分析までを一貫して行えるモジュール型のアセスメント基盤として構想され、ルクセンブルク大学をはじめとする研究機関と連携しながら、優れたアーキテクトや開発者の手によって初期バージョンが構築されました。

数年間の運用を経て、TAOはOECDのPISAに関わる機会を得ます。大規模展開や膨大なメタデータ管理に耐えうるアーキテクチャ設計が評価され、約30か国が参加した初のCBT版PISAを支える基盤として採用されました。世界規模のデジタルアセスメントを支える基盤として評価・採用されたことは転機となりました。この経験を通じて、コンピュータベーステストの可能性が世界中に認識され、PISA以外のプロジェクトからもTAOへの関心が高まっていきました。

2011年にアセスメント業界の国際会議に参加し、市場にはオープンソースのアセスメントプラットフォームが存在しないことに気づきました。あらゆる技術分野にオープンソースの選択肢がある中で、教育アセスメントにおいても同様にオープンソースの選択肢が必要だと考え、OAT社を設立しました。その後、TAOは世界中に顧客を持つプラットフォームへと成長しました。

TAOの根幹にあるのは、今後もオープンソースであり続けるという姿勢です。現在では160か国以上で利用され、多言語対応も進み、初等中等教育から高等教育、資格試験まで幅広い分野で活用されています。」

最後に、マーク氏はアセスメントに関わるエコシステム(複数のシステムや技術等が連動する仕組み)における相互運用性の重要性にも触れ、オープンスタンダード(国際技術標準)への貢献を続けていく姿勢を示しました。

世界中、必要とされる場所で、デジタルアセスメントの実施をサポート

OAT Co-founder&Open source Ambassador Patrick Plichart氏

共同創業者であり、オープンソースアンバサダーであるパトリック氏からは、教育アセスメントを取り巻く国際的な動向や、「オープン」なアセスメントにコミットするOATのミッションについて語られました。

「政策としてデジタル推進が進み、教育アセスメントにもデジタル化が拡がる中で、アクセシビリティや公平性、国際技術標準への対応、データ保護、透明性といった要素が、これまで以上に求められています。

さまざまな環境の違いによって教育リソースへのアクセスが制限されている現状を無視するのではなく、ツールによって解決していくことが重要です。

また、AIが産業全体を変革する中で、教育分野におけるデジタルアセスメントも例外ではありません。AIは友でもあり、敵でもあり得ます。電子計算機が登場した際には、より高いレベルの問いに対応していくために利用されてきました。AIもまた、適切に活用することで学びを支援する強力なツールになり得ます。AIを活用してよりよい学習を実現していく姿勢が求められます。

こうした動向を受け、TAOは『公平性』『透明性』『持続可能性』を備えたオープン性を、価値・ミッションの中核に据えています。利用の障壁やバイアスを取り除く『公平性』、証左やプロセスを追跡可能とする『透明性』、特定のベンダーに依存することなくコミュニティとともに進化し続ける『持続可能性』を持つオープンな教育デジタルアセスメントこそが、誰もが公平な機会で評価を受けられる世界を実現するために重要です。

地域や環境による格差を超え、世界中の誰もが同じく教育アセスメントにアクセスできる未来を支える基盤として、大きな可能性を持っています。」

さらにパトリック氏は、小型コンピューターである「Raspberry Pi」を手に取り、ICTインフラが十分に整っていない教育環境においても、現代的なデジタルアセスメントを利用できることを示しました。

進化し続けるTAO 今後の展開

OAT Vice President of Product Management&President of OAT Corporation(US) Jeffrey Cuff氏

製品開発責任者を務めるジェフリー氏よりTAOのロードマップと、今後の機能強化について発表がありました。 ロードマップとしては、今の次世代版TAOのSaaS(Software as a Service・ソフトウェアをインターネット経由で利用する提供形態)提供に加え、2026年1月にオープンソース版、2026年9月提供開始を目指す新・問題作成環境の「TAO Studio」について紹介されました。

「TAO Studioは、次世代版TAOの中でテスト作成にフォーカスした新たなツールで、AIなどの新たなテクノロジーを使って『創造する』体験を提供することを目的として作られています。従来のテスト作成、テスト管理を刷新するものになります。

ここで、これまで作成してきたテスト問題を容易にTAOへ搭載できる機能として、Word文書をインポートしTAO上にCBT問題を作成する機能のデモビデオが投影されました。より簡単に問題を作成・管理することができるようになり、教員をはじめとする試験実施者にとって、利用しやすいシステムとなる予定です。

TAO全体としてのリリースサイクルの中で、SaaS版TAOエンタープライズの機能等をオープンソース版TAO Community Editionへも取り込むなど、双方に影響し合いながら、発展していくことも発表されました。

受検者を中心にした大規模アセスメント実施を支える

OAT Senior Director of Global Assessment Solutions Hatto Sterling氏

「はじめてテストを受けたとき、どのような感情を抱きましたか」。発表の冒頭、世界各国のグローバルアセスメントソリューション統括責任者を務めるハット氏は、受検者である生徒の視点に立った問いかけから語り始めました。テストに臨む受検者は、大きなプレッシャーやストレスなど、さまざまな感情を抱いている。一方で、知人の子どもがテスト結果のレポートを手にし、その結果や自分自身を誇りに思っている姿に触れた経験を紹介し、「私たちが常に心に留めておくべきなのは、このテストを受ける一人ひとりの受検者である」と強調しました。

続いて、OECDのPISA調査をはじめ、イタリアやフランスにおけるK-12向け学力調査など、TAOの海外ユースケースが紹介されました。両国が10年以上にわたりTAOを採用し続けている理由は、単なる使いやすさではなく、高い拡張性と堅牢性にあるそうです。

「PISA調査では、同一時刻に約2万人が同時に受検した実績があり、フランスでは同日に約55万3,000人が受検、そのうち最大15万人が同時刻帯にテストを受けています。こうした大規模実施においても、TAOは安定した運用を実現しています。

受検者にとっては画面上に問題が表示されるだけの体験ですが、その裏側では複数のクラスター構成やWeb WAF(Web Application Firewall・Webアプリを不正アクセスや攻撃から守るセキュリティ機能)など、多層的な対策が施されています。DDoS攻撃(Distributed Denial of Service Attack・大量通信でサービス停止を狙う分散型サイバー攻撃)などのサイバー攻撃を受ける状況下でも、生徒が影響を感じることなくテストに集中できる環境を支えています。」

また、資格認定分野における活用事例として、欧州人事局(EU Personnel Selection Office:EPSO)や、ノルウェー、アメリカでの試験事例も紹介されました。EPSOの事例では、予備テストや模擬試験を通じて、受検者が技術環境や操作に慣れるための配慮も行われているそうです。

こうした大規模かつ複雑なアセスメント運用を支えているのは、AIではなく人の力です。OAT社の「大規模インテグレーションチーム」と呼ばれる専門チームは、準備段階から結果が受検者の手元に届くまで、クライアントと伴走しながら支援を行っています。発表では、実施期間中に「ウォー・ルーム(作戦室)」を設け、即時対応が可能な体制を整えている事例も紹介されました。

発表の終盤では、「デジタルアセスメントのステークホルダーは誰か」という問いが改めて示されました。その中心にいるのは、児童・生徒をはじめとする受検者である。テストは総括的評価や診断的評価から、日々の学びを支える形成的評価へと移行しつつあり、未来は教師と教室、そして一人ひとりの生徒の中にあると語られました。

記者の目

全世界同時リリースされたオープンソース版の「TAO Community Edition」は、研究者や開発者を中心に、世界中で利用されています。アセスメント(学力評価)を通じて学びの質を高め、誰もが公平に評価される社会の実現を目指す取組は、これからの教育アセスメントの未来に向けた一歩になるのではないでしょうか。

「TAO」次世代版に関するお問い合わせはこちらから

構成・文:内田洋行教育総合研究所 主任研究員 大山 恵夢、研究員 鈴木 順登

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