2020.02.19
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意外と知らない"小学校プログラミング教育"(第2回) コンピュータのことを知ろう。

前回(第1回)では、小学校プログラミング教育とはどのようなものかについて、紹介しました。第2回となる今回は、小学校プログラミング教育で学ぶ知識にフォーカスし、"コンピュータ"について知っておくべきことを簡単に紹介します。

コンピュータのことを知る1:コンピュータは“魔法の箱”ではない。

あまり意識されていないかもしれませんが、昨今、冷蔵庫や時計、踏切や自動販売機など、子供たちが普段から接する多種多様なものにコンピュータが使われています。しかし、子供たちはその存在に気付いているでしょうか。そして、その仕組み(大まかな原理)を知っているでしょうか。
コンピュータが当たり前の時代に生まれた子供たちは、コンピュータを受け入れているかもしれませんが、当たり前過ぎて “コンピュータはなぜ動くのか?”、“コンピュータがなかったらどうなるのか?”等を意識しにくいかもしれません。
“実はこんなところにもコンピュータが使われている”、“そしてそれは人が作っている”ということに、まずは気付くことが大切です。
これが、前回の記事に記載したプログラミング教育のねらいの②-2(情報社会がコンピュータ等の情報技術によって支えられていることに気付くこと)にあたります。

また、コンピュータは“魔法の箱”ではありません。人間の感情や複雑な背景を読み取って親切に問題を解決してくれるものは、今後開発が進むかもしれませんが、現時点ではあまり身近ではないでしょう。人間が問題を解決するための手順に沿ってコンピュータにプログラムしているということに気付くことも大切です。
昨今では、センシング及び画像解析技術の発達から人間の感情を読み取るコンピュータもありますが、これももちろんプログラミングによって人間が開発したものです。AI技術によってその判断精度が向上することはありますが、人間が開発したプログラムが基になっています。

コンピュータのことを知る2:コンピュータは人間とはちがう。

コンピュータの特性として、次のようなことが挙げられるでしょう。

・空気や行間を読まない。

例えば、“たくさん”や“大きく”と言われてもコンピュータはわかりません。何が何個、どこが何ピクセルのように伝える必要があります。

・何回やっても疲れないし、怒らない。

例えば、人間が数十回やるだけで疲れたり嫌になったりする計算も、コンピュータは何千回、何万回と繰り返しやってくれます。もちろん、文句も言いません。

・何回でも決められた同じ手順で処理をする。

例えば、決められた手順を途中で間違えることはありませんし、何度やっても手順が変わることはありません。また、瞬時に処理してくれるため、試しに(シミュレーション的に)やってみて、間違いがあれば人間が修正をしながら進めることができます。
プログラミングをする時には、これらのコンピュータの特性を理解していなければなりません。特に“決められた同じ手順で”処理をするということは、問題を解決するための必要な手順を人間が考えたうえで、コンピュータにプログラムしなければならないのです。
これらが前回の記事に記載したプログラミング教育のねらいの②-1(プログラムの働きやよさに気付くこと)にあたります。

そして、コンピュータのことを知ったうえで、コンピュータを悪用せず、より良くしていこうという態度を育むことが、前回の記事に記載したプログラミング教育のねらいの②-4(コンピュータ等を上手に活用して、よりよい社会を築こうとする態度を育むこと)にあたります。
コンピュータは“空気や行間を読まない”ので、善悪の判断もしません。人が判断をしてコンピュータを使わなければならないこと、そしてもちろん、より良くするために使おうという態度を育みましょう。

プログラミング教育は小学校だけ?:中学校や高校でも継続して育まれる

このように小学校のプログラミング教育では、コンピュータや情報技術のことを知り、コンピュータの特性を踏まえてプログラミングの体験をすることで、問題解決には必要な手順があることを学習します(空気や行間を読まないので、問題解決に必要な手順をプログラムしなければならない)。
そして、これらの資質・能力は、中学校や高校で継続して育まれていきます。
特にプログラミング教育で育む知識及び技能については、「小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議」での「議論の取りまとめ」で、小・中・高の学校段階に応じて次のように示されています。

小学校プログラミング教育の手引(第二版)第2章(2)小学校プログラミング教育で育む資質・能力 ① 知識及び技能 (p.13)より転載(※第三版でも同内容)

小学校段階では“気付く”、中学校段階では“プログラムが作成できる”、高校段階では“問題解決に活用できる”という段階が見て取れます。
このように、プログラミング教育は小学校だけでなく、中学校では技術科を中心に、高校では情報科を中心に、継続して行われていきます。

これからの時代、どのような職業に就こうと、これらの資質・能力は必要になってきます。プログラミング教育は、小学校での育成を踏まえて、中学校、高校と継続されるため、小学校で育成すべき資質・能力は、小学校段階で適切に育まなければなりません。

まとめ

子供たちがプログラミング体験をする前に、今回ご紹介したような前提知識を持つことで、プログラミング体験をより豊かにし、プログラミングを体験することによってその理解をより深めることができます。

第3回では、プログラミング体験にフォーカスし、プログラミング教育のねらい①プログラミング的思考、②-3:コンピュータ等を上手に活用して、身近な問題を解決しようとする態度を育むことや、プログラミング教材について紹介します。

構成・文・イラスト:内田洋行教育総合研究所 研究員 眞鍋悠介

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

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