救命活動を通じて命の大切さ、市民の義務を学んで欲しい 慶應義塾一貫教育校
目の前で突然に人が倒れたら!とっさに判断して適切に対処できる人はほとんどいないのではないだろうか。しかし、救急車が到着するまでに、心肺蘇生法、止血など簡単な手当てをすることができれば、助かる確率はぐんと高まるのである。慶應義塾では、2002年より、小中高等学校で一貫して初期救命手当て(BLS)の授業を行っている。小中高生までを対象とした継続・反復形式のBLS教育は、日本でははじめての試みだという。
10人ずつのグループに分かれ、実際に、初期救命法を体験
倒れている人を見つけたら、まず周囲の人に声をかけ、助けを求める。次に倒れている人の意識、呼吸を確認。
息ができるように気道を確保してあげる。
嘔吐しやすいように横向きにし、安定した体制で寝かせてあげる
これが安定した体制 実技用マネキンを使って心臓マッサージを行う。適切な力を加えると緑の光が点滅。強すぎても弱すぎても合格点にならない。 最初は恥ずかしがっていた生徒たちも真剣。 人工呼吸の時には人工呼吸用マスクを使用。一方向弁がついていて、自分の息を送り込むことはできるが相手の息は入ってこない。病気などの感染予防に有効だ。 慶應大学医学部助教授の堀進悟先生
BLS委員会が東京救急協会と共同で作ったオリジナル教材(500円)。小中学生でも理解できる分かりやすい内容だが、大人でも充分活用できる。
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5月13日、慶應義塾高校(横浜市港北区日吉)体育館において、高校1年生を対象にBSL講習が行われた。BLSとは、Basic Life Support を略したもので、市民が行う救命手当てのこと。慶應義塾のBLS委員会では、BLSを「日常生活の中で突発する健康危機に市民が即座に判断し、とるべき行動をまとめたプログラム」と定義し、2002年から慶應義塾の小中高全体で、学校活動の一環として取り組んでいる。 ■BLS講習で学ぶこと ■生徒の死を無駄にしないために何ができるか なぜ、慶應義塾がBLS教育を行うことになったのか。その経緯を慶應大学医学部助教授の堀進悟先生にうかがった。 「きっかけは一人の生徒の死亡です。1998年12月、慶應義塾志木高校で、10kmマラソン中の生徒が心肺停止に陥り死亡しました。現場には救護医もいましたが、救命できませんでした。」 この成功がきっかけとなり、2002年から、慶應義塾の小中高等学校すべてを対象として、BLS講習が開始されることとなった。志木高等学校での経験を参考に、講習プログラムの再検討も企画され、講習の逆評価も採用されることとなった。これらの活動を行うための支援組織として、BLS委員会が設立され、一貫教育校の教員を中心に、東京救急協会スタッフもメンバーとなり、講習プログラムの開発に参画した。 ■成人よりも児童からの講習が効果的 「中学生はともかく、小学生にBLSが理解できるだろうか、あるいは心肺蘇生術を行う体力があるだろうか、という懸念がありました。」 慶應義塾では、既に2000人を越す生徒が受講し、ライセンスを取得。体育祭でデモンストレーションを行ったり、高校生による市民一般への実技指導が行われるなど、BLS教育の輪が広がりつつある。生徒からのフィードバックをもとにプログラムを改定するなど、調査研究も継続している。 「講習の効果を科学的に検証し、子どもに一番適したプログラムを作り上げていくのが目標です。いいものを作ればきっと全国に広がっていくはずです。」 「言葉だけで」命の大切さを教えても伝わるはずがない、と堀先生。児童生徒たちに、実践を通じて命の大切さ、市民の義務を学んでもらいたい。 「学校の中で、勉強やスポーツができないと、生徒は自信を失います。BLS講習をうけて、人の命を救うことができる自信を持たせれば、子ども達にとって、自分たちが他人に何かを貢献できるという自信につながるのではないでしょうか」
(取材・構成:学びの場.com)
★財団法人東京救急協会は、応急手当の普及を目的に平成6年に設立された団体。発足以来、毎年10万人以上が応急手当の講習を受講している。
★人工呼吸に使用したマスクは同協会から支給。 ★もし、あなたの学校でも講習を実施したい場合は、まずは地域の消防署にお問い合わせを。
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