2002.10.08
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保護者、学校、地域一体となった「地域立学校」を目指して 埼玉県志木市教育委員会

学級崩壊、学力低下、不登校児童の増加など、教育を取り巻く諸問題は、もはや学校だけの力ではどうすることもできないほど深刻になっている。学校、保護者、地域住民一体となった改革が必要なのである。

 全国初、1クラス「25人程度学級」の実現、「ホームスタディ制度」の実施、市内全小中学校のシラバスを保護者全戸に配布するなど、画期的な教育施策を打ち出して全国から注目されている埼玉県志木市。先ごろ、国が推進する構造改革特区構想を受け、「地域立学校」構想を提出し、話題を呼んでいる。
志木市教育委員会教育政策部の金山康博次長に、これらの施策の検討の経緯や、今後の取り組みについてお話をうかがった。


 


 

 

志木市のホームページ。25人程度学級やホームスタディ制度についての情報も公開。

 
 
 

 
 
 
 

「義務教育の入り口から出口まで」サポートする教育改革の事業計画書。

 
 
 
 
 
 
 
 
 

志木市独自のユニークな教育事業。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

■地域立学校とは

 小泉内閣が進める構造改革特区への認定を目指し、志木市は、今年8月29日、「教育」「自治」「福祉」の3分野で構想案を提出した。教育特区構想の中で謳われている、「地域立学校」とはどういう構想なのだろうか。

「学校の門の内と外との温度差をできるだけ小さくしたい、地域ぐるみで学校と一体となって子供たちをともに育みたい、という考え方が、この構想の背景にはあります。普段の生活の中で、自分の子が学校に通ってでもいなければ、学校が何をしているのか、どういう場なのか、地域の人はほとんど知ることもありません。しかし、保護者、学校、地域など、子どもを取り巻くすべての人が、教育に対して責任を持つ、という意識が必要だと考えているのです。ですから、市立とか町立よりもっと小さな、たとえば町内会立といった単位で、地域みんなで学校をよくしよう、いい学校を作ろう、という動きを進めていきたいのです。」

 この構想には、現状では県が採用している小中学校の教員を、市が独自で採用するということも含まれている。埼玉県で行われる教員採用試験の合格率は小中高等学校平均で8.7倍、中学校では実に19.7倍という難関となっているが、この構想により、子どもを愛する心や、教育に対する強い意欲を持ちながらも教員になれなかった人にも門戸が広がり、また、地域の独自性のある学校づくりにも生かされることが期待できる。

■市民の声から生まれた「ホームスタディ制度」

 志木市はこれまでも、市長を中心とし、市民の意見を直接聞く「タウンミーティング」をしばしば開催し、教育施策に生かしてきた。たとえば、本年度より実施することになった、「ホームスタディ制度」も、不登校の子どもに悩むある母親の声から構想されたという。
 この制度は、学習意欲があるにも関わらず、不登校や入院、自宅療養などで長期間学校に来られない子どもひとりひとりに対し、学級担任のほかに、教育ボランティアや臨床心理の専門ケースワーカー、保護者専用相談員などからなるプロジェクトチームを結成し、在宅学習のサポートや学校復帰への支援を行うというもの。しかし、何がなんでも学校に復帰させることが目標ではなく、「社会的自立のできる人間」を育てることが最終目標なのだという。在宅学習の期間を出席扱いにするかどうかは、校長の裁量であり、その判断を教育委員会は支持していく体制であるのも注目すべき点である。

■ 校長は社長でなければならない

 「志木市では、特徴ある学校づくりのためには、各校長に相当な権限を委ね、それぞれにアイデアを前面に出して、特徴ある学校作りをして欲しいと考えています。いわば、校長ひとりひとりが社長でなければならないと考えています。そして、それをバックアップするのが教育委員会の役割だと考えているのです。」

 たとえば、学校内の改革は校長裁量で自由にできても、法律を変えることはできない。でもそれが必要なら教育委員会がサポートするのである。本年度より実施されている「25人程度学級」の実現は、その好例であろう。1学級40人という学級編制の基準を、25人程度にするという要望を市教育委員会から埼玉県教育委員会に提出し、「教職員定数の範囲内で」という条件のもと、特例として認められたのである。

 志木市ではほかにも、小学校卒業までに25メートル泳げるようになることを目標に、市内全小学校1校につき25万円を指導員謝礼として配布する「小学生泳力向上支援制度 いろはガッパ応援団」事業、放課後の空き教室を利用して、教育ボランティアが個別指導を行う「中3チューター制度」、再び学びたいという社会人向けに小学校を会場として小中学校の教科書を用いた授業を行う「リカレントスクール」など、さまざまな試みを行っている。「地域立学校構想」は、これらの試みの集大成といえるものだろう。

 「自分のまちの子は、まちのみんなで育てる」と金山次長。こうした、地域発の教育改革が、今後全国的に広がっていくことに期待したい。


志木市のホームページ
http://www.city.shiki.lg.jp/

 

 

(取材・構成:学びの場.com)

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