2002.08.06
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教師、父母、生徒、市民一体となった「学び合いの場」の実現!《愛知サマーセミナー》

2002年7月20日(土)~23(火)、第14回愛知サマーセミナーが開催された。名古屋市内の学校、千種区役所、千種公園などを会場とし、900講座が開講。参加者は延べ2万6千人に上る一大イベントとなった。

学ぶというのは本来楽しいことであるはず。また、何歳になっても新しいことに興味をもち、学ぶということは人生を豊かに生きる上で必要なことである。その道に熟練した者が、学びたいものに教える「学び合い」の場をみんなで実現していこう、そんな思いから生まれたのがサマーセミナー(通称サマセミ)。
サマーセミナーでは、誰もが先生であり、生徒でもある。教師も、父母も、生徒も、市民も、誰でも講座を出すことができ、そして、誰でもが自分の興味に沿って講座を受ける、4日間だけの「夢のセミナー」なのである。

ボランティアスタッフの学びのへの熱い想いがイベントを支えている!

今年で14回目を迎えるサマセミだが、1989年にスタートしたときは、72講座、4500名足らずの参加者だった。それが年を追うにつれ、拡大し、今回開催された講座数は900余り。参加者は延べ2万6千人。

サマセミを運営しているのは、主に愛知の私学に通う高校生、教師、生徒の父母たち、それに市民を加えた四者で構成される愛知サマーセミナー実行委員会。講座の受講はすべて無料。運営資金は、父母と先生らが出しあったお金と、パンフレットへの広告協賛金で賄われている。もちろん、スタッフも講師もすべてボランティアだ。

今回のサマセミメイン会場となったのは、名古屋経済大学市邨(いちむら)中学・高等学校。開場早々、次々とセミナー開場に向かう参加者に、パンフレットを配ったり、会場案内をしたりと、ボランティアスタッフは大忙しの様子。

パンフレットには、4日間に開催される講座がズラリ。ジャンルも幅広く、「昔話伝承の世界―日本の民俗社会から」、「21世紀の国際語エスペラント入門」「歌おうゴスペル! 踊ろうゴスペル!」「高校生と親のための人間関係講座」「水餃子講座」などなど、ざっとタイトルを見るだけでも、参加したくなるような講座ばかりで、迷ってしまう。講師も、中学校教師、大学教授、一般の社会人、主婦、高校生など多彩。

実行委員長の寺内義和さん(愛知私教連委員長)によると、サマセミでは、ゴミ処理場を実際に見学するなど、実体験を中心としたフィールドワークがここ数年で充実してきているという。また、自分のあこがれの職業に、実際に就いている人から直接、その職業について語ってもらう「なるには講座」も定着してきた。職人からベンチャー企業の社長まで、借り物でない生の声が聞けると好評なのだという。

しかし、これだけの規模のセミナーが、すべてボランティアスタッフの手によるものだとは驚きである。不登校、引きこもりの急増、学級崩壊、授業崩壊など教育を取り巻くさまざまな問題に対し、市民が一丸となって取り組もうという「熱い思い」がサマセミの原動力なのだろう。こうした、「市民参加の教育づくり」の輪が、全国的にも広がっていくことに期待したい。

■おもしろ講座・イベントのご紹介!(ごくごくほんの一部です)

どれも個性あふれる授業だったが、そのほんの一部を駆け足で紹介しよう。

サマ-セミナー校長講演

「だれでもが先生になれる」このサマセミ。今回のサマセミの校長先生は、なんと五輪マラソンメダリストの有森祐子さん。会場には有森さんの恩師や恩師の教え子も参加していて、これには有森さんもビックリ!マラソンの感動や生き方を伝える力強い講演だった。

はじけろ!群舞「島唄」「ロックソーラン」

教室内は、熱気でムンムン! 指導するスタッフが熱心に参加者達に振り付けを教えていた。後半にはかなりまとまってきたが、その後は・・・

クワガタムシ、採って飼って増やしてみよう

教室の前と後ろには大きな飼育箱がいっぱい!しかも外国産のクワガタも参加!!クワガタファンが熱心に質問していた。講師の清水さんは、本業は会社員。サマセミの講師をして以来、会社での認知度がアップしたのだとか。

シネマセマジック最新版

教えと学びの実験室、指導案&アイデア集のコーナーでもおなじみ、勝野先生の講座。2進数と10進数の違いを映画のワンシーンを使って紹介していた。

身近な福祉、身近な介護

校舎内での車椅子の操作などいろいろな福祉・介護の体験が気軽にできる。特に車椅子は急なスロープや段差など公共空間でのバリアーを意識してもらうように工夫されていた。

子どもの遊びと学びの広場@千種公園

千種公園の芝生に座って、みんなで竹とんぼ作りに挑戦。講師のアドバイスと手先の動きを見ながら、子どもたちは熱心に竹を削っていた。

放射線を見てみよう!実測してみよう!

特設バスでの講座。放射線を可視化できるような装置や、日常で放射線がどれぐらい出ているのかなど、放射線について身近な存在であることを気づかせてくれた。

韓国料理を作ってみよう

本場の食材を使って、チヂミなどの韓国料理を作る体験学習。家庭科室付近は、とても香ばしい美味しそうな匂いが漂っていた。

市長さんとからさわぎ

松原 名古屋市長と生徒の熱いディスカッション・バトル!!テーマは「地震の警戒宣言」。「あなたが市長だったら警戒宣言が出たときにまず考えなくてはならないのは何だと思いますか?」質問を皮切りに、様々な意見が出され、非常時の備えや対応・知識が大切なのだと改めて認識させられる良い機会になった。

バリアフリーライブ

今回のサマセミのテーマは「バリアーフリー」。その特別企画として、視覚障がい者バンドのALMAとサインダンサーSachiさんとの共演・バリアフリーライブが行われた!! 息のあった歌声と繊細でかつダイナミックなダンスは、サマセミに参加した人たちをほっと一息つかせてくれた。
※その他の講座の紹介は、サマーセミナーオフィシャルHPのサマセミWEBニュースで速報公開中!

■事務局本部に潜入!---スタッフ・講師・生徒・父母の「厨房」状態!?----

多くの講座・イベント企画を影で支えているのが、事務局本部だ。中へ入ってみると、すごい熱気。まるで慌ただしく忙しい厨房の中にいるよう!
パンフレットにちらしを入れる父母の方々、黙々と速報レポート書くスタッフ達、バタバタと講師のためのお弁当を用意する人、講座の準備をする先生、イベント運営状況や進捗などを報告・確認する生徒スタッフなどなど、それぞれの持ち場で、忙しく、しかし楽しげに立ち働いていた。本当にご苦労様!(中には、徹夜疲れかウトウトしてしまっている人も・・・)

■サマセミを運営する人たちに突撃インタビュー!!

今回のサマセミのキーマンの方々にお話をうかがった。

世界が広がった---- 生徒代表 八木さん(淑徳高校3年)

八木さんは、今回のサマーセミナーの生徒代表で、愛知高校生フェスティバル(フェス)実行委員会の副実行委員長である。フェスとは愛知県内の高校生・中学生が集まって、学校間の隔たりをこえて、ボランティア活動、学校間の交流、社会への訴えなどの活動を共にしている団体。サマセミへの参加もフェスの活動の一環である。
「高1の時にフェスのお手伝いに参加したのがきっかけで、4月から企画に携わるようなり、サマセミの企画にも携わるようになりました。サマセミに参加してよかったことは、いろいろ世界が広がったこと。今まで高校の友達だけの交流から、いろいろな人の交流があり、社会勉強になっています。
今後は、先生と父母、市民が隔たり無く一体となったイベントを企画したいですね」

「平和」についてもっと語り合いたい---- 父母代表 山田さん

「いろいろ大変なことももちろんありますが、それ以上に達成感や感動があります。サマセミが無事終わった瞬間なんて、涙ものです」そうおっしゃった山田さんは、愛知父母懇談会(父母懇)を代表して活躍されている。父母懇とは、私学の父母と先生が、子どもと私学のために活動する自主的な「父母と教師の会」で、サマセミには、企画・運営・講座の開講受講などいろいろなかたちで参加している。
 父母懇の大きなテーマは「平和」。現在は名古屋市と積極的に共同企画を進めている。
「サマセミの活動は、自主的にやってきているから、人権を尊重できるし、みんな一生懸命勉強していますね。自分にとってもいい刺激になります」

社会に根付いた真の学習を広めたい---- 寺内先生(サマーセミナー実行委員長)

「生徒達は、市民と繋がると羽ばたきます。多くの人から見られているというある種のプレッシャーが与えられるからです。これは地域の教育力ということにつながるものと考えています」

寺内先生は、現状の教育問題を見据えた上で、「学び」の焦点について次のように語った。

「ひとつには、自分で考え学ぶこと、やらされるのではなく、自発的に学ぶということ、そしてもうひとつは、現実と繋がる力、つまり社会との接点を増やしていくということが大切だと思います。
サマセミのように『誰でもが教え、学べる』という場を作ることによって、学校での『先生-生徒』という縦の関係ではなく、『共に教え合い学び合う』という横の構造が生まれるのです」

今、子どもたちは、学校で先生から受動的に教えられることに慣れてしまって、自分で考える力が欠けていると言われている。しかし、学ぶことは本来楽しいものであるはず。「教えたいことを教え、学びたいことを学ぶ」という、まさにサマセミ的な場こそが本来の学びのあり方ではないだろうか。

「今、多くの人が自分のことで精一杯ですね。学校もまだまだ教育に迷いが多いです。私たちは、地域の中で子どもを守り教育していく活動と、学校から地域に働きかける活動を同時に行い、教師、生徒市民が一体となったうずを巻き起こしたい。横の構造をも越えたサマーセミナーを今後は目指したいですね」

取材・構成:学びの場.com

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