教師、父母、生徒、市民一体となった「学び合いの場」の実現!《愛知サマーセミナー》
2002年7月20日(土)~23(火)、第14回愛知サマーセミナーが開催された。名古屋市内の学校、千種区役所、千種公園などを会場とし、900講座が開講。参加者は延べ2万6千人に上る一大イベントとなった。
学ぶというのは本来楽しいことであるはず。また、何歳になっても新しいことに興味をもち、学ぶということは人生を豊かに生きる上で必要なことである。その道に熟練した者が、学びたいものに教える「学び合い」の場をみんなで実現していこう、そんな思いから生まれたのがサマーセミナー(通称サマセミ)。
サマーセミナーでは、誰もが先生であり、生徒でもある。教師も、父母も、生徒も、市民も、誰でも講座を出すことができ、そして、誰でもが自分の興味に沿って講座を受ける、4日間だけの「夢のセミナー」なのである。
ボランティアスタッフの学びのへの熱い想いがイベントを支えている!
今年で14回目を迎えるサマセミだが、1989年にスタートしたときは、72講座、4500名足らずの参加者だった。それが年を追うにつれ、拡大し、今回開催された講座数は900余り。参加者は延べ2万6千人。
サマセミを運営しているのは、主に愛知の私学に通う高校生、教師、生徒の父母たち、それに市民を加えた四者で構成される愛知サマーセミナー実行委員会。講座の受講はすべて無料。運営資金は、父母と先生らが出しあったお金と、パンフレットへの広告協賛金で賄われている。もちろん、スタッフも講師もすべてボランティアだ。
今回のサマセミメイン会場となったのは、名古屋経済大学市邨(いちむら)中学・高等学校。開場早々、次々とセミナー開場に向かう参加者に、パンフレットを配ったり、会場案内をしたりと、ボランティアスタッフは大忙しの様子。
パンフレットには、4日間に開催される講座がズラリ。ジャンルも幅広く、「昔話伝承の世界―日本の民俗社会から」、「21世紀の国際語エスペラント入門」「歌おうゴスペル! 踊ろうゴスペル!」「高校生と親のための人間関係講座」「水餃子講座」などなど、ざっとタイトルを見るだけでも、参加したくなるような講座ばかりで、迷ってしまう。講師も、中学校教師、大学教授、一般の社会人、主婦、高校生など多彩。
実行委員長の寺内義和さん(愛知私教連委員長)によると、サマセミでは、ゴミ処理場を実際に見学するなど、実体験を中心としたフィールドワークがここ数年で充実してきているという。また、自分のあこがれの職業に、実際に就いている人から直接、その職業について語ってもらう「なるには講座」も定着してきた。職人からベンチャー企業の社長まで、借り物でない生の声が聞けると好評なのだという。
しかし、これだけの規模のセミナーが、すべてボランティアスタッフの手によるものだとは驚きである。不登校、引きこもりの急増、学級崩壊、授業崩壊など教育を取り巻くさまざまな問題に対し、市民が一丸となって取り組もうという「熱い思い」がサマセミの原動力なのだろう。こうした、「市民参加の教育づくり」の輪が、全国的にも広がっていくことに期待したい。
■おもしろ講座・イベントのご紹介!(ごくごくほんの一部です)
サマ-セミナー校長講演
はじけろ!群舞「島唄」「ロックソーラン」
クワガタムシ、採って飼って増やしてみよう
シネマセマジック最新版
身近な福祉、身近な介護
子どもの遊びと学びの広場@千種公園
放射線を見てみよう!実測してみよう!
韓国料理を作ってみよう
市長さんとからさわぎ
バリアフリーライブ
■事務局本部に潜入!---スタッフ・講師・生徒・父母の「厨房」状態!?----
■サマセミを運営する人たちに突撃インタビュー!!
世界が広がった---- 生徒代表 八木さん(淑徳高校3年)
八木さんは、今回のサマーセミナーの生徒代表で、愛知高校生フェスティバル(フェス)実行委員会の副実行委員長である。フェスとは愛知県内の高校生・中学生が集まって、学校間の隔たりをこえて、ボランティア活動、学校間の交流、社会への訴えなどの活動を共にしている団体。サマセミへの参加もフェスの活動の一環である。
「高1の時にフェスのお手伝いに参加したのがきっかけで、4月から企画に携わるようなり、サマセミの企画にも携わるようになりました。サマセミに参加してよかったことは、いろいろ世界が広がったこと。今まで高校の友達だけの交流から、いろいろな人の交流があり、社会勉強になっています。
今後は、先生と父母、市民が隔たり無く一体となったイベントを企画したいですね」
「平和」についてもっと語り合いたい---- 父母代表 山田さん
「いろいろ大変なことももちろんありますが、それ以上に達成感や感動があります。サマセミが無事終わった瞬間なんて、涙ものです」そうおっしゃった山田さんは、愛知父母懇談会(父母懇)を代表して活躍されている。父母懇とは、私学の父母と先生が、子どもと私学のために活動する自主的な「父母と教師の会」で、サマセミには、企画・運営・講座の開講受講などいろいろなかたちで参加している。
父母懇の大きなテーマは「平和」。現在は名古屋市と積極的に共同企画を進めている。
「サマセミの活動は、自主的にやってきているから、人権を尊重できるし、みんな一生懸命勉強していますね。自分にとってもいい刺激になります」
社会に根付いた真の学習を広めたい---- 寺内先生(サマーセミナー実行委員長)
「生徒達は、市民と繋がると羽ばたきます。多くの人から見られているというある種のプレッシャーが与えられるからです。これは地域の教育力ということにつながるものと考えています」
寺内先生は、現状の教育問題を見据えた上で、「学び」の焦点について次のように語った。
「ひとつには、自分で考え学ぶこと、やらされるのではなく、自発的に学ぶということ、そしてもうひとつは、現実と繋がる力、つまり社会との接点を増やしていくということが大切だと思います。
サマセミのように『誰でもが教え、学べる』という場を作ることによって、学校での『先生-生徒』という縦の関係ではなく、『共に教え合い学び合う』という横の構造が生まれるのです」
今、子どもたちは、学校で先生から受動的に教えられることに慣れてしまって、自分で考える力が欠けていると言われている。しかし、学ぶことは本来楽しいものであるはず。「教えたいことを教え、学びたいことを学ぶ」という、まさにサマセミ的な場こそが本来の学びのあり方ではないだろうか。
「今、多くの人が自分のことで精一杯ですね。学校もまだまだ教育に迷いが多いです。私たちは、地域の中で子どもを守り教育していく活動と、学校から地域に働きかける活動を同時に行い、教師、生徒市民が一体となったうずを巻き起こしたい。横の構造をも越えたサマーセミナーを今後は目指したいですね」
取材・構成:学びの場.com
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