2018.07.25
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全ての教科学習のベースとなる「コア探究」授業 チームビルディングを学ぶ「マシュマロ・チャレンジ」—立命館宇治高等学校(前編)—

文部科学省「平成30年度研究開発学校」の指定を受けた立命館宇治中学校・高等学校に、新たに日本版コア科目「総合的な探究の時間」(以下「コア」)が創設された。既存教科にばらばらにある探究的教育活動の共通項目やベースを「コア」に集中させ、すべての教科に共通する資質を育てるための授業として位置づけられている。本時のテーマは「チームビルディング」だ。TEDトークでの講演動画で有名な「マシュマロ・チャレンジ」を通して、チームづくりを学ぶ。

授業を拝見!

学年・教科:高校1年 コア
単元:チームビルディング(マシュマロ・チャレンジ1回目)
目標:マシュマロ・チャレンジを通してチームビルディングを学ぶ。また、SCAMPER法を使ったアイディア出しを学ぶ。
指導者:片上 直人 教諭
使用教材・教具:パスタ20本、マシュマロ1個、テープ90cm、ひも90cm、はさみ1個、パワーポイント
※ 同学年の他のクラスでも、片上教諭が作成した教材を使って同時に実施された。

堅実を狙うか? 記録を狙うか? 意見が割れたらどうするか?

実際の仕事でも起こりうるシチュエーションを学ぶ

マシュマロ・チャレンジのルールは単純。乾燥パスタ(20本)でタワーを立て、できるだけ高くするのが目標だ。パスタ以外には、マスキングテープ(90cm)、ひも(90cm)、はさみが与えられる。

また、てっぺんには必ずマシュマロを置かなければならない。時間ギリギリに置こうとすると、タワーが崩れることもある。参加者は、そのリスクも含めて作戦を立てなければいけないのがミソだ。

作戦タイムは18分で、計測の間もタワーは立ち続けている必要がある。「ほんの一瞬だけ立った」というのは認められず、それなりの安定性が求められるというわけだ。ただし、パスタをテープで机に貼り付けるのは禁止されている。滑りやすいパスタをどう安定させるかのかが問われるゲームといえる。

確実な記録を狙い、低くて頑丈な塔を立てるのか。もしくは、限られた時間を考慮してとにかく高く組んでみるのか。もしチーム内で方向性が別れたら、どうやって話し合うのか……。実際の仕事でも起こりうるシチュエーションを、遊びを通して学べるのが「マシュマロ・チャレンジ」だ。

ゲームを通し、だんだんと生徒の個性が現れはじめる

1位は意外な作戦のチーム

授業は昼休み明け、4時間目に行われた。まずはワークシートを使い、「優れたチームとは何か」をそれぞれが考えて書き込む。「話さなくても意思疎通ができる!」「思ったことはなんでも言い合える」など、思い思いの考えが教室に飛び交った。全体として、コミュニケーションの円滑さについて述べる生徒が多かった印象だ。

ワークシートへの記入が終わったら、片上先生からルール説明を受ける。パスタを使うと聞き、興味津々の生徒たち。必要なアイテムを受け取り、いざタワーづくりがスタートした。

タイマーがスタートすると、生徒たちはさっそく作戦会議を始めた。全員で方向性を話し合うチームもあれば、限られた時間を有効に使うため、とりあえずパスタを加工し始めるチームも。工作が得意な生徒が、パスタを同じ長さに折ってもらうよう、他の生徒に頼むシーンも見られた。こうした様子からそれぞれの性格、それぞれの個性が少しずつ現れてくる。

  • マシュマロ・チャレンジに必要なアイテムが配られる。

  • パスタを同じ長さに折り始めるチーム。

  • パスタを手に取りながら、真剣に考える生徒。目の前にモノがあるとやはりアイディアがふくらむようだ。

  • 協力してパスタを組み立てる生徒たち。一人では形を作ることができないので、自然と協力することになる。

  • 課題に取り組む生徒たち。チーム内で二手に分かれて、それぞれが考えるシーンもあった。

中盤になると、早いチームはすでに全体像が見えてきた。一方でなかなか方向性が固まらず、形にできないチームもあった。計画はしたものの、思ったよりうまく形にならず、方向転換を迫られるケースも。他のチームの様子を見ながら「早く!」「そろそろ始めんと間に合わん!」と声を上げる生徒も出始める。

  • 比較的早い段階で形が見えてきたチーム。

  • 半分ほど出来上がったタワーを見ながら、生徒同士で話し合う。

そして終了間際、ここで意外な展開があった。ほとんど形ができておらず、残り30秒で「とりあえず貼れ!」とタワーを立てたチームが、49cmを積み上げて、まさかのクラス1位に躍り出たのだ。「ノープラン作戦!」と1位のチームは大興奮。最後の最後で大どんでん返しが起こったのだった。

  • 「とりあえず法」で組み立てようとする生徒。太い芯材を作ろうとしている。

  • 49cmの記録を残し、優勝となった作品。

結果を踏まえ、「次はどうしたら?」を考える

SCAMPER法でアイディア出しを加速させろ!

ワークシートに感想などを記入する生徒たち。

計測が全て終了し、あとは振り返りの時間だ。まずは実践的な取り組みとして、先生からSCAMPER法が紹介された

これはSubstitute(代える)、Combine(組み合わせる)、Adapt(適応させる)、Modify(修正する)、Put to other uses(ほかの使い道)、Eliminate(削減)、Reverse・Rearrange(逆転・再編成)の頭文字をとった言葉で、それぞれのアイテムをどう使うかについて短時間でアイディアを出すための方法である。

「例えば、このはさみやけど、これにひもを結んで、重りにしてもよかったよね」と解説があると、生徒からは驚きの声が上がる。与えられた道具は、本来の使い方以外で利用してもよかったというわけだ。

授業内容を踏まえ、生徒は再びワークシートを記入。曖昧だった「よくコミュニケーションをとる」という目標が、最終的には「組み立ての順序」や「計画性」へと具体化された。次時はこの反省を踏まえ、2回目のマシュマロ・チャレンジに挑戦する予定だ。

授業の知識を使う「理論派」、アドホックに積み上げる「とりあえず派」

優勝は「とりあえず派」、ただしPDCAサイクルの回しやすさは……

出来上がったタワーを見てみると「理論派」「とりあえず派」に分かれていた。「理論派」はテープに着目。机への設置面積が大きい方がタワーは安定すると考え、テープでパスタの足回りを補強したのだ。パスタを机に接着するのは禁止だが、足回りの面積を増やすのはルールの範囲内。決まりを守りつつベストを尽くした発想が光った。

同じく「理論派」の作品には、数学の知識を応用したものも多くあった。パスタで角柱を作り、安定した形を目指す方向性だ。しかし、実際にこの形を作ってみるとパスタが安定せず、なかなかうまく立たないという問題が見つかった。やってみなければ分からないこともあると生徒たちは学んだようだ。

「理論派」の作品例

  • 足になっているパスタにテープを巻き、滑らないように加工した。

  • 数学の知識を活かし、安定する形を模索した。

今回、1位をとったチームは典型的な「とりあえず派」。優勝には大興奮だったが、その一方で反省タイムになると、改善点が見つけにくいという課題があった。

「理論派」が「ここでテープを貼ったのがあかんかったんちゃう?」と具体的な振り返りをしているのに対し、「次はどうしたらいいんやろ……」と困り顔。

また、どちらのケースであっても、リーダーの生徒に指示された内容をよく分からないまま実行に移すメンバーがいた。全体のゴールが見えないままの作業は非効率につながってしまう。今回の「コア」授業は、こうしたことを肌身で学ぶことのできる時間だった。

生徒に聞く

これまでの授業との違い
優勝チームの生徒は……「めちゃくちゃ頭を使うのが新鮮でした」

普通の授業では、基本的に「座って先生の言うことを聞いているだけ」という感覚がありました。極端な言い方をすれば、自分で頭を使っているという感覚がなかったような気もします。
でも、今日の「マシュマロ・チャレンジ」のような内容だと、めちゃくちゃ頭を使うな、と。自分で考えなければいけなかったのが新鮮でした。今回はノープランでやって、たまたま優勝できたので、次回はしっかり計画を立てて進めるのが課題かなと思っています。

取材・文・写真:学びの場.com編集部

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