2011.11.15
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甘さを比べよう! 【食と科学】[小4-6・特別活動]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第六十三回目の単元は、「甘さを比べよう!」。焼き芋の甘さ、その秘密に迫ります。

寒くなってくると欠かせないのが焼き芋。サツマイモが健康食として注目されるようになってから、様々な料理や加工品が紹介されていますが、中でも焼き芋は サツマイモ料理の基本です。焼き芋を作るには、電子レンジでチン、これが簡単です。でも電子レンジではおいしい焼き芋はできません。なぜなら焼き芋の甘さ はゆっくりと時間をかけて加熱されることで引き出されるからです。焼き芋の甘さについて考えながらその秘密に迫ります。科学クラブ(クラブ活動)で1時間 ほどの活動です。

「甘さ比べ」実験の手順

サツマイモを4等分に切る

(1)サツマイモを半分に切り、さらに半分に切る。

二通りの方法で加熱

(2)次の二通りの方法で加熱する。
■電子レンジ(強)で5分間加熱。
■電子レンジ(弱)で10分ほど加熱。
電子レンジで加熱する前に、子どもたちにどちらがおいしいか聞きます。ほとんどの子が、「長い時間の方が甘い」と予想しました。そこで、おいしさを比べる ポイントについて話し合いました。子どもたちからは、甘さ、ほくほくさ、固さ、しっとり感といったポイントが出てきました。

食べ比べてみると

加熱したサツマイモを取り出して、皆で食べ比べるために切り分けます。試食の結果は、
「時間が長いほうが甘い」
「ほくほくさもたっぷりだ」
 と、加熱時間を長くした焼き芋の方がおいしいという子がほとんどでした。中には、ほとんど変わらないという子もいました。原因は、サツマイモの切り方が一様でなく厚さにばらつきがあったせいだと思われます。

皆で切り分けて食べ比べ

ここで、焼き芋が甘くなる仕組みを説明します。サツマイモにはアミラーゼという酵素が含まれています。でんぷん自体は甘くはありませんが、加熱されるとこ の酵素が働き始め、でんぷんを細かく分解して甘い麦芽糖に変えてくれます。アミラーゼが活発に働くのがおよそ65℃から75℃の温度帯です。ですから甘い 焼き芋を作るためには、この65℃から75℃の時間帯をいかに長く保持するかがポイントになります。

どっちがおいしいかな?

電子レンジ(強)では、急激に温度が上がりアミラーゼが十分に働きません。柔らかいけど甘くない焼き芋になってしまいます。電子レンジ(弱)の場合は、温 度変化がゆっくりであるため、電子レンジ(強)で加熱した時よりも甘い焼き芋になるのです。とはいえ、電子レンジではサツマイモの内部の温度が一気に上が りますので、でんぷんが糖に変わる時間が極端に短く、甘みの薄い焼き芋になってしまいがちです。
さて、焼き芋といえば「石焼き芋」。電子レンジの代わりにオーブントースターで加熱すると、かなり石焼き芋の甘さとおいしさに近づきます。石焼き方式で は、温められた石からイモにゆっくり熱が伝わるので、甘くなる温度帯の時間も長くなります。ですから、熱した灰の中に埋めて焼く方法や、大きなつぼや鉄釜 で蒸し焼きにする方法でも、ゆっくりと時間をかけてサツマイモを加熱するため、アミラーゼによる麦芽糖の生成が徐々に増え、甘さが十分に引き出されるので す。
授業の展開例
  • 焼き芋の醍醐味は、たき火をしながら作ること。キャンプなどでたき火をする機会があったら、ぜひ焼き芋作りに挑戦してみましょう。
  • 干し芋は、蒸かしたての状態から、時間をかけて干して作ります。おいしい干し芋を作るためには、ゆっくり、じっくり蒸かすのが基本であることは焼き芋と変わりません。干し芋を作ってみましょう。表面に出た白い粉は、酵素が作った糖分が表面に浮き出たものです。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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