2022.06.24
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

部活動の地域移行について

部活動の地域移行の期限が示されました。批判もあるようですが、成し遂げなければならない絶対事項です。問題は山積みですが、考えている問題とは別のところにも問題があります。その解決方法を提案していきます。

旭川大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

はじめに

2022年6月6日スポーツ庁の有識者会議において、なかなか進まない「学校における働き方改革」を促進する意味を込めて、2023年4月から2025年の末の3年間を目途に、部活動を段階的に地域へ移行するよう提言がありました。「やっとか…」という感じです。

私は北海道に来て3年が経ちましたが、来る以前には部活動指導員をしていました。その頃は行政ではすでに部活動の地域移行を提言していましたが、学校側との意見の調整が合わず、部活動と連携した地域スポーツクラブの設立が上手く進まなかったことがあります。
また北海道の部活動指導員の登録をして2年ほど経ちますが、未だに一度も連絡が来ません。こちらはそもそも地域移行という感覚がないのかもしれません。
日本の文化だとは思いますが、現場は大きな変化は望んでいないようです。そのためこのようなことは半ば強制的に進める必要があります。遅くはなりましたが、今回はやっと行政の強い意志を出せたのだと思います。

部活動の地域移行=塾

私の学生時代は、部活指導をしたくて教員を目指していたため、部活動が地域に移行するのは少し寂しい気がします。また現在、部活動指導をがんばっている先生方を気の毒に思います。そのような同士が多いからか、部活動の地域移行にいろいろと批判もあるようです。
ケガなどした時の責任の所在は? 指導が過熱してしまうのでは? 生徒の過労につながるのでは? などいろいろあります。しかし、これら問題と思っていることはさほど問題ではありません。なぜならば、地域に移行するということはスポーツの「塾」に行かせることと同じだからです。
現在、皆さんは塾に対して同じような疑念を抱いていますか? 塾に対してケガした時の責任をどうとるのかと問い詰めますか? 指導が過熱しないように注意してくださいと言いますか? 生徒の過労についてどう考えているのかと聞きますか? もし合わなければ生徒は辞めて他のところに行くだけです。
学校のようなしがらみがない分、部活動よりもそのような行動が取りやすいため、むしろ部活動であったそれらの問題は地域に移行した方が解決すると考えていいでしょう。本当の問題はそこではありません。 

本当の問題は…

それよりも心配しなければならないことは、指導者と施設の問題です。

まず指導者ですが、なかなか見つかりません。学校だけでなく日本社会全体で働き方改革を進めないといけないですが、そこまでの動きはないようです。
また見つかったとしても、これまで同様に15時から16時の間の時間からスタートするのは難しく、もっと遅い時間からスタートすることになります。なぜならば指導者は仕事が終わってから、子どもたちは学校が終わって移動してからになるからです。

そうすると次に施設の問題が浮上してきます。同じような時間帯にいくつものスポーツが体育館やグラウンドを使用することになります。
学校の部活動だった時には2面ある体育館の1面は半面ずつを男バスと女バスで使用し、もう1面は男女バレー部が時間を分けて使用。卓球部は空いている廊下のようなスペースで行い、それに加えバドミントン部もあるため曜日ごとにローテーションして使用するというような譲り合いで成り立っていました。
しかし、地域に移行することにより、今度はそれに大人の使用団体との絡みも出てくるため、間違いなくかなり使用が制限されることになるでしょう。その問題解消のための施設の建設が進んでいるようには思えません。

先の問題は始めてから起こり、工夫しながら改善していくことが可能です。しかしこちらの問題はそもそも始められない事態におちいってしまいます。こちらの問題は早くに手を打つ必要があります。

問題解決のために「大学スポーツとの連携」

このような問題を解決するのに、私に1つアイデアがあります。それは「大学スポーツと連携」です。大学スポーツ界では大改革が起き、大学スポーツ協会(UNIVASユニバス)という高校でいう高体連にあたる最高統括機関が創設されました。
これまで大学スポーツは競技ごとで運営していたため、規模や人気などで高校スポーツに後れを取っていましたが、今後は大きく発展していくでしょう。

そのユニバスではアメリカの大学スポーツに倣うと提言しているため、今後は文武両道化が求められることが推測され、地域とつながる活動については明言しています。
文武両道化により「強豪校=私学」の構図が変わり、国公立も私学と対等に戦いやすくなるはずです。地域とつながる活動については、選手による学生コーチとしての中学生のスポーツクラブの指導もしくは指導アシスタントがいいと思います。
学生の指導体験になり、その喜びから「教員になりたい」と思う学生が増えることにもつながり「教員不足問題」の解決の糸口となっていくかもしれません。
加えて、部活動指導を続けたい先生は一定数いるため、その先生が勤務先の学校ではなく、自宅付近で指導するようにしていき、そして学生コーチがアシスタントコーチとなれば、ますます学生コーチは教員の姿を目の当たりにして、指導の勉強をしながらあこがれとリスペクトを抱くようになり、より「教員になりたい」と思うようになります。

また中学生にとっては学生コーチが来ることにより、あこがれやリスペクトを抱き、将来について考えるきっかけとなってキャリア教育につながるでしょう。

これらのような相乗効果を生み出すためには、より多くの大学の参加が必要です。私学一辺倒となっている大学スポーツですが、行政は教員養成課程を多く抱えている国公立大学に大学スポーツへの参加及び強化を促していくことが必要となります。
日本の文化から、今回のような強い提言をしていく必要はありますが、そのことで部活動の地域移行がかなり進みやすくなることは間違いないでしょう。国公立大学には交付金を支払っているので決して間違ったことではないと思います。

総合型「広域」スポーツクラブ

実のところ前述したことは10年ほど前に、私がバスケットボールの指導者として実践した経験からです。大学に勤めながら大学スポーツの女子バスケ部の監督兼コーチをし、隣の市の中学校の男子バスケ部の部活動指導も手伝っていました。
大学生は無名選手が集まったチームでしたが県の最高記録を更新しました。下の年齢と関わることで自覚が出て、大きな成長を遂げました。中学生はいわゆるヤンチャな生徒たちでしたが、上の年齢と関わることで見本を間近で見ることができ、進学を考える生徒が増えたようです。
施設に関しても中学校が使えないときは大学で合同練習をしたり、大学の体育館を貸したりして問題を解消していました。

更に良いことは大学が関わることで、ニーズが高まるということです。実は他にももうひとつの中学校の女子バスケ部の指導にも携わっていました。
車で1時間半から2時間くらい離れた中学校だったので、週末を利用して連携していましたが、小学校時代は市大会敗退でしたが、中学で県ベスト4に入るまでに成長しました。

行政では総合型地域スポーツクラブの設立を促していますが、なかなか難しいようです。大学が関わることでニーズが高まり「総合型『広域』スポーツクラブ」が可能となります。

最後に

部活動の地域移行は、教育現場が疲弊する前に解決しなければならない絶対事項です。1つを変えるために、多くの変更が必要とされています。
部活動は日本の文化であり、日本のスポーツを支えてきました。それは間違いありません。しかし教育に完成形がないように、その部活動さえも変わる時期を迎えています。反発もありますが、一丸となって進んでいくことを願っています。

赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川大学短期大学部 准教授・元パーソナルストレッチトレーナー・バスケットボールコーチ
幼児体育指導、小学校のスポーツ少年団指導、中学校の部活動指導、高校の体育指導、大学の体育指導及び部活動指導と、全年代の子どものスポーツ及び体育指導の経験を生かし、子どもの運動能力の向上を図る研究を行う。

同じテーマの執筆者
  • 江尻 寛正

    倉敷市立連島南小学校 教諭

  • 高橋 英路

    前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
    山形県立米沢東高等学校 教諭

  • 高橋 朋子

    近畿大学 語学教育センター 准教授

  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

  • 赤羽根 和恵

    東京福祉大学 国際交流センター 特任講師

  • 常名 剛司

    静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭

  • 藤井 三和子

    兵庫県立兵庫工業高等学校 学校心理士 教諭

  • 川島 隆

    浜松学院大学 現代コミュニケーション学部子どもコミュニケーション学科准教授

  • 都築 準子

    愛知県公立中学校勤務

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop