2020.11.12
小笠原で4年生理科「季節と生き物」(1)
ご覧いただきありがとうございます。私の住む白馬山麓 #hakubavalley は、三段紅葉(山に積もる白い雪・色鮮やかな紅葉・山裾を埋める針葉樹の緑)が終わり、山麓エリアにもついに(!)11月4日の明け方には降雪がありました。
さて、今回も都内より約1000km南に位置する小笠原諸島父島にある小笠原小学校での実践報告です。小笠原諸島は亜熱帯に位置し温暖多湿な海洋性の気候や歴史的な背景から、東京都とは言えかなり特色ある教育活動が行われています。そこで、今回は小笠原小学校での4年生理科「季節と生き物」をお伝えします。
長野県公立小学校非常勤講師 清水 智
1.単元の目標
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動物を探したり植物を育てたりしながら,動物の活動や植物の成長の様子と季節の変化に着目して,それらを関係付けて,身近な動物の活動や植物の成長と環境との関わりを調べること を通して,それらについての理解を図り,観察,実験などに関する技能を身に付けるととも に,主に既習の内容や生活経験を基に,根拠ある予想や仮説を発想する力や生物を愛護する態度,主体的に問題解決しようとする態度を育成する。
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動物を探したり植物を育てたりしながら,動物の活動や植物の成長の様子と季節の変化に着目して,それらを関係付けて,身近な動物の活動や植物の成長と環境との関わりを調べること を通して,それらについての理解を図り,観察,実験などに関する技能を身に付けるととも に,主に既習の内容や生活経験を基に,根拠ある予想や仮説を発想する力や生物を愛護する態度,主体的に問題解決しようとする態度を育成する。
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2.「春といえばこれ!」が内地と違う小笠原。

天候による気温変化が小さいのも小笠原特有の気候の一つ。
教科書に例示されているような「春といえばこれ!」といった教材で例示されているようなものは、小笠原にはあまりないのです。
例えば、桜。父島には濃い赤色が特徴の緋寒桜(ヒガンザクラ)という品種があります。学校の裏庭にも咲いているこの品種ですが、内地で言うまだ冬の時期(1月・2月)満開となります。4月の授業をするころには、既に葉桜のピークといったところです。 また、初夏の青々とした森の様子や秋の紅葉、冬の氷が張る様子など季節感を感じるものが教科書例示とは大きく異なるのです。ですので、この「季節と生き物」単元においては、教科書から離れることは必須。上記に示した学習指導要領での目標と小笠原の気候や動植物を授業者側こそが関係づけなければいけませんでした。そこで取った方法は……。
3.3つの工夫①「教室掲示を通年型に」

そこで取った工夫は以下の3つです。
*教室掲示を通年型に
これはよく行われる方法ではありますが、時短・手軽さを考えて、プリントアウトした
①温度計
②活動の様子
③観察カード数名分
を教室後方の上部に1年間かけて貼っていきました。
プリントアウトサイズを固定することで見栄えもよくなり、また、授業で黒板に掲示することなどにも流用しやすくなります。また、今回の単元では度計グラフでの縦軸を広げました。通年を通して、それほど大きな気温変化がない小笠原ですから(最低気温15度以下・最高気温35度以上となるのは年に数回あるかないか)、教科書付属等のワークシートでは気温変化を実感しにくいのです。縦軸を大きくすることで、変化の度合いが大きくなり、季節ごとの気温の違いがより明確になります。
4.3つの工夫②「無料配布の観光ガイドブックの活用」
*無料配布の観光ガイドブックの活用
世界自然遺産小笠原、観光業が盛んな島ですから、島内には無料で配布されている観光パンフレット等がいくつもあります。そのパンフレットに掲載されている、動植物の写真を切り張りしながら、自分で観察した動植物にプラスαしていきました。
世界自然遺産小笠原、観光業が盛んな島ですから、島内には無料で配布されている観光パンフレット等がいくつもあります。そのパンフレットに掲載されている、動植物の写真を切り張りしながら、自分で観察した動植物にプラスαしていきました。
5.3つの工夫③「観察する樹木はビーデ」

真夏のビーデ。休み時間は子供たちの遊び場になる。
教科書で例示されている「ヘチマ・ゴーヤ」はグリーンカーテン化し、観察対象の一つにしたのですが、もう一つの植物として、校庭に植えられている「ビーデ(ムニンデイコ)(小笠原では南洋桜とも呼ぶ)」も観察対象としました。ビーデは冬になると落葉し、2~3月になると赤橙色の花をもとの方から徐々に開花していきます。
登下校では必ず目にする位置にあり、子供たちの生活の中に位置付いている植物だからこそ、定点観測を通して様子の変化に気付きが生まれるのではないかと考えたからです。
写真にもあるように、通年を通して青々としている芝生の腰を下ろし、My温度計で気温を計測し、ビーデの様子を観察し、観察カードに記録していくことを月に1回程度の割合で続けました。
6.おわりに
常夏というよりかは常春に近い気候の小笠原の父島。冬でも20度近くまで日中の気温が上がり、3月の卒業式には半袖が活躍するようになります。東京都内とは言え、温暖な気候にある学校だからこそ、この単元では扱う教材、ワークシート、学習過程などいくつもの工夫が必要になってきます。

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