2019.05.21
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学び合える学級懇談会を

新年度が始まってしばらく経ちました。学校生活には慣れたものの、疲れが見え始めたり、悩みが出始めたりする時期かと思います。学校としてのスケジュールを見ると、この記事に授業参観や学級懇談会、学校開放などを行っている学校もあると思います。小中学校は基本的に自宅周辺にあるため、こうした行事に関して保護者の方の出席状況も良好かと思います。高校の場合は遠方ということもあってか、なかなか出席状況が芳しくありません。仕事などで忙しいという方もいる一方で、「この行事は、どうせ出てもね・・・」といった声があるのも事実です。しかし、これは保護者の方が悪いわけではありません。

私も子どもがおり、様々な行事のお知らせをいただきますが、仕事もある中ですべてに出席することは難しく、内容などから精選していくことになります。保護者の方も同様で、忙しい中時間をつくって来校するわけですから、「これじゃあ来る意味ないな」と思われたら、次年度からは来なくなるでしょう。そうならないためにも、どのような行事を企画すべきか?なかなか難しいところだと思います。今回は、私がクラス担任として、今年度実施した学級懇談会の事例を紹介します。

ちなみに前年度、前任校で行ったものも記事にしていますので、こちらもぜひ、お読みください。
「最初の学級懇談会」

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

学級懇談会の流れ

今年度の学級懇談会は以下のような流れで実施しました。なお、勤務校では、授業参観の後にいわゆるPTA総会、学年ごとのPTAを行い、1番最後に学級懇談会という流れになっていました。ちなみに、座席はあらかじめ教室の机を4つずつくっつけて机上に資料を置き、どこに座るかはフリーな状態にしておきました。

(1)チェックイン(自己紹介)
 …担任からはクラス近況説明を兼ねる

(2)ワーク(教育改革の流れを体験)
 ① 「十七条の憲法を作ったのは誰?」
 ② 「十七条の憲法を作った目的は?」
 ③ 「十七条の憲法にもう一条加えるなら?」
 ④ ③について、個人ワークの後、グループでシェア。グループごとに話し合って回答を1つに絞ってもらいました。グループの回答は、ミニホワイトボードに書いてもらい、それを黒板に貼って全体シェアしました。

(3)説明(3年間のスケジュール、変わる入試制度について)
(4)質疑応答
(5)チェックアウト(今日帰ったら、子どもに話したいこと)

といった感じです。ちなみにこの内容については、リクルート進学総研『キャリアガイダンス』掲載の保護者会の事例を参照させていただきました。パワーポイントの素材も無償提供されていますので、リンク先もぜひお読みください。

『キャリアガイダンス』vol.421 人生100年時代の高校生と保護者の未来意識

実施上の留意点

当日に向け、参加人数や内容を吟味したわけですが、当日やりながら修正を加えることは必須だと思います。特に、私は1年生の担任ということで入学式以来の対面ですから、どんな雰囲気になるのか読めない部分もあります。ですから、グループワークについては、雰囲気を見ながら、最後の最後まで「やらない」という選択肢も残しながら進めました。

これは授業についても言えることですが、参加者のノリや雰囲気、表情を常に観察し、自分が準備した内容が相応しいか、臨機応変に判断することが重要だと思います。また、逆に言えば、自分が準備したもの、ねらいを達成するために、そこまでの小さいトークや準備運動代わりのちょっとした動きなどを計算して入れていくことが求められると思います。終わってから、「参加者のノリが悪くて…」などというのは、大部分は講師側の力量不足である場合も多いような気がします。

グループワークでは、授業でもそうですが「誕生日が1番早い方がリーダーをお願いします」といった具合に、初対面でも必ず会話が生まれる方法でリーダー決めを指示するようにしています。他には「今使っている消しゴムが1番小さい人」とか、「今持っているペンが1番太い人」など、雰囲気が和むようなものだとより良いかと思います。ちなみにこれを「朝起きたのが1番早い人」などとすると、ある程度関係性ができている間柄では良いでしょうが、そうでない場合に、リーダーになるのが嫌でウソをついたり、自分で考えて言葉を発しなければいけないので、前述のものより難易度は上がってしまいます。やる側がそれを分かって指示しているなら良いですが、理解不足で指示して、なかなか決められないことに苛立ってしまっては、グループワークの最初からつまづくことになります・・・。

やってみて・・・

やってみてどうだったか?私としては、すごく良かったと思っています。特に、グループワークで保護者の方々がすごく協力的で非常に助かりました。さらに、グループワークの場面で私はひたすら無言で聞いていたのですが、そこで問題から派生した様々な対話がなされているのを聞き、私自身も多くの気づきがあったからです。

一例を紹介すると、「十七条の憲法に、一条加えるなら?」という問いに対し、「子どもも大人も一緒に休んで、どこかに出かけられるようにしよう」というものが出されました。小学校高学年くらいから習い事や部活を始め、それ以来、子どもの習い事・部活の休みと、保護者の仕事の休みが合う日なんて、まずない!という理由からでした。

確かに、私たち教員とすれば、週に〇回は休みにしている!とか、テスト前は1週間前から休んでいる!など、学校側の基準で休みを設定し満足(?)しているわけですが、保護者の方の休みと合うかどうかは分かりません。さらには、たまには子どもと一緒に出掛けたいな~という要望だって、ほとんど耳にすることはありません。というより、部活で保護者の方がいらしても、おそらく遠慮されているのか、そのような声を聞いたことはまずないのです。

こうした意見が1人ではなく、グループワークで揉まれ、グループの代表意見として出されたことは非常に参考になりました。他にも様々な意見が出され、生徒のグループワークとはまた違った視点も多く、私自身もよい学びをさせていただいたと思っています。

このように、せっかく保護者会・学級懇談会を企画するのであれば、双方にとって良い学びの場であることが重要だと思います。担任が一方的に話して終わり、何かプリントを配って終わり、プリントを読めば分かる・・・そんな行事は、忙しい中で年休を取って参加する意味はないわけで、参加者はどんどん減っていくと思います。わざわざ参加していただいた方に、いかに良い体験をして、プリントだけでは伝わらない「お土産」を持ち帰っていただけるか?それが重要なポイントだと思います。

ということで、今回は学級懇談会の事例紹介をしました。他にも創意工夫ある懇談会がありましたら、ぜひ教えてください!

高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

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