2017.10.20
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主権者教育とは?

先月末の衆議院解散を受け、総選挙が公示されました。公職選挙法の改正により、昨年より選挙権を持つ年齢が引き下げられています。高校生でも選挙権を持つ生徒が出てくることや、法が施行されて初の国政選挙があったということもあり、昨年は「主権者教育」という言葉がだいぶ注目を集めました。ちなみに勤務校は定時制で4年次まであることもあり、全日制の学校に比べて幅広い年齢層の生徒たちが学んでいます。当然、選挙権を持つ生徒の割合も高いですし、就労していることで教員以外の大人と接する機会も多いという特徴があります。

 さて、こうした現状を踏まえ、主権者教育とは何か、どんな指導を行うべきか、自分なりに考えたことを書きたいと思います。

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

主権者教育≠選挙教育

昨年度、「主権者教育」という言葉が注目された際、「主権者教育」と「選挙についての指導」を混同している人や文章が多くありました。主権者教育というのは、選挙に特化したものではなく、国や地域のあり方について、自分から積極的に関われるようになるためのものだと考えています。当然、その手段の一つには選挙があるわけなので、選挙権年齢引き下げを機に、そこをより丁寧に指導することは悪いことではないと思います。ただ、選挙の仕組みや選挙違反ばかりに焦点を当てて指導し、肝心の「自分の国や地域のあり方を自らが考える」という部分が軽視されると、本末転倒になってしまいます。また、選挙違反の説明を聞いて、「そんなに面倒なら関わらなければ良いんでしょ?」という話になっても困ります。

 したがって、政治や選挙の仕組みなどの基本的事項を押さえながらも、地域の将来のあり方に関わろうと思えるような指導が必要になってくると思います。このバランスを意識することはとても重要で、公民科など一部の教員だけでなく、すべての教員が同じ認識を持つことが求められます。

選挙に関する教育

 主権者教育は選挙に関するものだけでないという話をしましたが、選挙権年齢が引き下げられたことは大きな変化ですし、何より選挙権を持つ生徒とそうでない生徒が混在することになるわけなので、これを機に、これまで以上に丁寧に説明していく必要はあると思います。

 本校では、地元の選挙管理委員会と連携し、選挙講座を実施しました。ただし、選管に1コマ分の出前授業を丸投げするというのでなく、本校としての要望を取り入れた講座の全体像をこちらで考え、そこに選管からお手伝いいただくという形です。具体的には以下のように進めました。

(0)事前学習・・・授業で実施
 公選法改正の経緯や内容などを、総務省・文科省作成の副教材「私たちが拓く日本の未来」を使用して学習します。

(1)選挙に関するミニ講義・・・選管へ依頼
 授業で学習済の内容は割愛し、選挙運動や違反等を中心に取り上げていただき、15分程度のミニ講義をお願いしました。

(2)模擬演説会
 「◎◎市長選挙」の模擬演説会を行いました。ここでは保護者の方から協力をいただき、立候補者役をお願いしました。演説内容に沿った選挙公報を作成し、それをもとに演説していただき、その後、質疑応答になります。ここでは生徒から出た質問に対し、その場でアドリブで答えてもらう形にしています。このやり取りが活性化すると、白熱して面白い行事になると思います。

(3)投票
 選管より記載台と投票箱を借用し、本物と同じ材質の模擬投票用紙を用いて投票を行いました。本校の選挙管理委員が用紙配付や開票などの作業も体験しました。この作業を通じて、誤字や乱雑な文字の判別の難しさなども感じることができたようです。

 こういった感じの流れで講座を設けたところ、生徒や参加した保護者からの評判は良好でした。前半の講義と後半の活動とのバランスも大事なポイントだったと思います。

 ちなみにこうした講座はすでに多くの学校で取り組まれており、公約から生徒に考えさせて代表を選んだり、外部からゲストを呼んで立候補者役を頼んだり、様々な工夫がなされているようです。そのへんは学校や生徒、地域の事情に応じて、よりよいやり方を模索していくことが大事だと思います。

主体的に考える

前述した選挙講座と並行して、国や地域のあり方に主体的に関わろうとする主権者教育を行う必要があります。こちらは法令と違って、1度説明して「わかった!」というものではないので、選挙の有無に関わらず、継続的に行っていくことが求められます。

 私の授業では、p4c「=philosophy for children(子どものための哲学)」という手法を取り入れ、正解のない問いについてあれこれ対話する活動を行っています。そのねらいや内容は以前の記事に書いていますので、以下のURLよりご覧ください↓
https://www.manabinoba.com/tsurezure/016000.html

 こうした活動の中で、地域課題などを題材にして対話をすることがあります。最初は関心がなさそうな生徒も、他の生徒が自分の考えを述べる姿を見て、最後の方は熱く持論を展開する一幕もあります。もちろん、1回の対話だけで成長するわけではありませんし、話すことができていなくても頭の中ではしっかり考えているケースもあります。いずれにしても、授業の中にこのような機会を設けていくことで、すぐに成果は出ないものの、地域のあり方について主体的に学び考えようとする態度を育てることができると考えています。それが、政治に関心を持つことにも繋がり、若者の政治参加も進んでいくのではないでしょうか。

思考の前提となる知識

生徒が自ら考える活動は大切ではありますが、思考の前提となる知識をないがしろにするわけにはいきません。対話や活動的な企画を実施することにばかり注力してしまうのも問題です。ただし、知識といっても選挙についての知識という意味ではありません。国や地域の将来を考えるにあたり、現状や歴史的背景を知ることは必要です。つまり、それぞれの教科・科目で習得すべき基本的な知識や技能が大事だということになると思います。

 以上の内容をまとめると、「主権者教育」という言葉を聞いて「選挙」の話題にだけ飛びつくのではなく、まずは日々の授業を大切にしながら、必要な知識・技能を「習得」すること。さらに、それらを「活用」して、与えられた課題に対して思考したり判断したり、その結果を表現したりすること。そして最終的には、国や地域の課題を自ら発見し解決策を模索していく「探究」に繋がっていくというイメージだと考えています。

ということで、選挙が近づいてきましたが、「主権者教育だ」と言いながら、選挙前に慌てて選挙違反の注意を促すだけの指導でなく、長期的な視野に立った主権者教育が実践されていくことを期待し、記事を書いてみました。主権者教育について、良い事例をお持ちの方がいたら、ぜひご紹介いただきたいと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

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