2014.09.30
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意外と知らない"日本の教科書制度"(vol.1)

意外と知らない

教科書採択問題や歴史教科書の検定問題等、教科書にまつわる話題が新聞やテレビで大きく報道される度、我々は「これは是か非か?」等と論じ合うことがあります。しかし、そもそも「日本の教科書制度」がどういうものか、その詳細を熟知している人はあまりいないでしょう。そこで、今回から3回にわたり日本の教科書制度の全容を解説したいと思います。正しい認識の元、教科書制度の意義や課題を考えてみましょう。

2014年4月、来年度から小学校で使用する教科書の検定結果が公表されました。

社会の教科書では初めて、すべての教科書会社の教科書で、竹島や尖閣諸島が「日本固有の領土」であると明記されたことが、ニュースになりました。この他にも歴史教科書の検定問題や、教育委員会での教科書採択問題等、教科書にまつわる話題が、テレビや新聞紙面等で大きく取り上げられることは珍しくありません。

本コーナーでは、これまでも法や行政の視点から教科書制度について述べてきましたが、今回から3回にわたって、我が国において教科書が、どのように制作され、どのように認定(検定)され、どのように選ばれ(採択され)て、子どもたちの手に届くのかを解説し、その過程を追うことで、日本の教科書制度の意義や課題を一緒に考えてみたいと思います。

教科書はどうやって作られる?

日本では、国が定めた学習指導要領が教育の基準となります。この学習指導要領に基づいた教育が学校で正しく行われるよう、教科用図書として制作されるのが学校教科書です。特別支援学校用や高等学校の専門教科の一部の分野を除き、編集・制作は民間の教科書会社が行い、国(文部科学大臣)の検定に合格して初めて、教科書として認められます。

右表のように、現在、小中学校の教科書として認められている教科書は教科ごとに複数存在します。いずれも学習指導要領に基づいて執筆されていますが、教科や単元によっては、着眼点や表現方法、資料や学習素材の示し方等に、それぞれ特徴がありますので、実際に教科書を使う各教育委員会は、これらの中から教科ごとに、良いと思うものを選択することになります(これを教科書採択といいます)。

例えば、小学校国語の教科書なら、東京書籍『新しい国語』、学校図書『みんなと学ぶ』、三省堂『小学生の国語』、教育出版『ひろがる言葉』、光村図書『国語』の5種類から選ぶことができます。

このように、国が学習指導要領という形で“あるべき教育の指針”を示した上で、教科書はある程度の自由度を持って民間が制作し、教育現場が複数のバリエーションの中から子どもたちに一番良い教育ができると思える教科書を選択できるというのが、日本の教科書制度の特徴と言えるでしょう。

これに対し、韓国では、小学校の全ての教科書を国が発行し、教育現場に選択の余地はありません(中学校では2010年に、日本と同様の検定制度に移行しました)。

また、フランスやイギリスでは、学習指導要領はありますが、教科書は民間の出版社が自由に作り、国の検定制度はありません。

このように、国によって教科書への関与度が全く異なる理由は、学校や授業における教科書の役割(使われ方)に関係があるようです。この件については、第2回目で詳しく紹介します。

教科書がタダでもらえるは当たり前?

日本では、子どもたちが小・中学校に入学すると、学校を通じて教科書が無料で給与されます(高校教科書は有償です)。これは、「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」に定められている制度であり、教科・分野ごとに毎年1種類の教科書が、児童生徒に無償給与されています。一人当たりの平均教科書費(2010年度用)は、小学校では毎年3,000円強、中学校では4,500円強で、これを国が負担しています。韓国でも無償給与されていますが、台湾やシンガポールでは有償(保護者負担)です。また、欧米では多くの国で、教科書は学校が保有し、これを児童生徒に無償貸与する方式を採っています。これらの国では学年終了時に、学校に返却しなくてはなりません。

我々日本人の感覚からすれば、ページの角を折り曲げたり、アンダーラインを引いたりすることもできず、一見不自由ではありますが、実はここにも、各国の授業における教科書への依存度の違いが見え隠れします。

構成・文:内田洋行教育総合研究所 研究員 江本真理子

※写真・文の無断使用を禁じます。

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