2021.04.21
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<特集>学習者用デジタル教科書(vol.1) 東京学芸大学附属小金井小学校 実践事例紹介

2020年3月1日時点の学習者用デジタル教科書の整備率は、公立学校全体で7.9%でしたが、GIGAスクール構想によって1人1台端末が整備され、今後急速に普及すると思われます。デジタル教科書によって何ができるようになるのか、先生の指導や子どもの学習の在り方はどのように変わっていくのか、5回にわたって考えていきます。

vol.1は、昨年度(2020年度)4社のデジタル教科書の評価を行った東京学芸大学附属小金井小学校の、鈴木秀樹教諭へのインタビューです。

東京学芸大学附属小金井小学校では、まず2018年から学習者用のデジタル教科書を試験導入し、2020年にはEduMallを導入、デジタル教科書を子供たちの端末へ個別にインストールする必要もなく、1つのプラットフォームに統一した環境を実現しました。5年生を対象に国語、算数、理科、社会の4教科の学習者用デジタル教科書を正式導入し、更にMicrosoft Teams for EducationやMicrosoft Formsも授業のツールとして利用し、1人1台の端末を活用し、これからの学校での授業を実践しています。

※本文中の学習者用デジタル教科書(国語)は光村図書を使用しています。

Q1 学習者用デジタル教科書を導入したきっかけを教えてください。

鈴木秀樹 教諭(以下、鈴木教諭):本校では、「ICT×インクルーシブ教育」を標榜しており、学び方は子供たちが自ら獲得すると考えています。

2018 年に教科書メーカーのセミナーに出席して、デジタル教科書の説明を受け、これはインクルーシブ教育に使えると確信し2018年、2019 年と国語でテスト導入をしてきました。2020 年からEduMallを導入して、教科書メーカー各社のデジタル教科書を一つのプラットフォームで利用できる環境を整え、2020 年にまず5 年生を対象に主要 4 教科の導入をしました。

  • 教室には映像 作成・放映用の機材が取り揃えられています。

  • 天板部分が大型ディスプレイになる特殊なテーブルが用意されてい ます。

  • 鈴木先生から本日の授業について課題の説明が行われます。

  • すぐに、グループに分かれて課題に取り組みが始まります。

Q2 学習者用デジタル教科書を授業で活用するための工夫やご苦労はありましたか。

鈴木教諭:最初は、デジタル教科書に用意されている、「マイ黒板」を教えこもうとしたのですが、あまり興味を示さないのです。実は子供たちはデジタル教科書の機能を覚えるのがすごく早いので、すぐに子供たちから「こういう風に使わせてほしい」と要望が出てきました。そこで、早々に使い方を子供たちの自由にしました。また、本年はコロナの影響もあり一人一台の端末を使えるように取り組みました。ただ「キーボード」については、授業で教えず「キーボー島アドベンチャー」で休み時間にフリーに使って良いとしたところ、子供たちの間で盛り上がって、キーボードについて大体の事ができるようになりました。

更に毎回授業で「Microsoft Forms」を使って授業のふり返りをすることとし、必ずキーボード操作が必要な場面も用意したことで、自然とキーボード操作が進みました。実は、デジタル教科書だけではお互いの「共有」が出来ない事が大きな課題でした。そこで「Microsoft Teams」を活用して、デジタル教科書では出来なかった「共有」ができるようにしています。また、数名のグループに分かれて意見交換、共有をしています。各自のデジタル教科書の画面をグループメンバー内で共有できるよう、各グループに大型ディスプレイがあります。(本校では、グループテーブルに大型ディスプレイが埋め込まれたものも使用されています)

  • EduMallにログオンして、デジタル教科書を利用開始。

  • Microsoft Teamsにキャプチャ画像を貼り付けて皆と共有します。

  • グループでの意見交換。(テーブルの天板が大型ディスプレイになり各自の発表資料を映しています)

  • Microsoft Formsで今日のふり返りを入力します。

Q3 学習者用デジタル教科書を導入して得られたメリットはどんなところですか。

鈴木教諭:先ず、色々な形で学びに困難を抱えている子供たちに対するサポートが手厚い事が挙げられます。

紙の教科書では学びの入り口に立つのが大変な子供たちも、デジタル教科書では十分に学ぶことができて、意欲的になれることが大きなメリットです。例えば、ディスレクシア※の子供は、紙の教科書では読むことで苦労しますが、デジタル教科書であれば、文字を拡大したり、ハイライト表示したり、音声読み上げ機能も使え、教科書を読むことができます。その結果意欲的に取り組むことができるようになるのです。つまり合理的配慮が必要な子供に非常に効果的と言えます。また、デジタル教科書は、教科書に自由に書き込みができて、簡単に消すことができるので、本文に書き込んだりしながら、試行錯誤の時間を用意できることも大きな魅力です。

※学習障がいの一種で、知的能力および一般的な理解能力などに特に異常がないにもかかわらず、文字の読み書き学習に著しい困難を抱える障がい
  • コンテンツを拡大して確認します。

  • マイ黒板を使って、考えをまとめます。

  • グループ内で各自が考えを発表しグループメンバーと意見交換。

  • グループ内で各自が考えを発表しグループメンバーと意見交換。

Q4 今後の展開やご要望についてお聞かせください。

鈴木教諭:本年度学習者用デジタル教科書を4教科使うことで、教科書メーカーそれぞれのデジタル教科書の評価を行います。それによって教科書メーカー各社に提言を行って、良い物にしていただきたいと考えています。

また、デジタル教科書には色々な機能がありますが、授業では全く不要な機能もあり、それよりも改善をしてほしい機能に注力してほしいですね。一方で、デジタル教科書ではありませんが、タブレットの入力用に用意されている「スタイラスペン」については、まだまだ紙と鉛筆のようには行きません。

本校では一応ペンを用意していますが、活動によっては全く使いません。是非改善をしていただきたいですね。このあたり学校からどんどん意見をしていかないと良くなっていかないと思っています。

  • クラス全員に対して、グループ代表が発表。

次回vol.2では、光村図書出版にお話を伺います。

文・画像提供:ウチダ教育用デジタルコンテンツカタログ vol.131

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

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