2026.04.13
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意外と知らない"教科等横断的な学び"(第2回) 「教科等横断的」な実践

第1回では、「横断/横断的」という言葉そのものに着目し、歴史的な経緯や、その意味について紹介しました。第2回では、「教科等横断的な学習を目的とした具体的な試み、取組」について着目し、具体的な題材によって、みなさんがイメージする参考となれば幸いです。

「教科等横断的な学び」の実践①

「教科等横断的」という考え方を「総合的な学習の時間」としてとらえ、実践する事例は枚挙にいとまがないため、ここでは「複数の教科がそれぞれの学習活動を充実させて行う活動」として研究されている一部のみ紹介します。

まずは、国立教育政策研究所の研究「『現代的な諸課題』を扱う教科等横断的な単元の開発と実践」をとりあげます。

本研究では、特に理科と社会科・地理歴史科を横断的に実践するための単元開発が試みられており、その一例として、中学3年生向けに「プラスチックごみ問題」を共通のテーマとした単元が、下表のようにとりあげられています。

単元全体としては1つの課題に対して取り組みを深める構成としながら、各教科でそれぞれ持つ目標に沿って学習を深める構成となっています。また、「問題を見出し、自分たちに何ができるかを考える」という、「現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力」を獲得するための単元・授業例が、この他にも複数とりあげられた報告書となっています。

授業時間 担当教員 授業内容
1時間目 理科・社会科 問題を見いだす。
2時間目 理科 プラスチックの性質を知り、プラスチックが普及した理由を考える。
3時間目 社会科 世界や日本が行っているプラスチックごみ問題への対策について知る。
4時間目 理科・社会科 学習して得られた知識を元に自分たちにできることを探る。
※「現代的な諸課題」を扱う教科等横断的な単元の開発と実践 単元事例1より抜粋し作成

「教科等横断的な学び」の実践②

続いて、埼玉県教育委員会の研究事例を紹介します。

2カ年計画で行われた本研究では、1年目では研究協力委員(教員)が育成したいと考えている「学習の基盤となる資質・能力」と「現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力」の組み合わせをまとめ、他教科と関連付けた単元等を構想した上で、2年目で授業実践を実施する流れとなっています。

ここでは研究の中で行われた実践事例として、国語を下地として、国語以外の各教科と横断させた学習活動を紹介します。

学習活動の全体では、「主体的に新たな価値観を生み出す創造性を養うための言語能力の育成」を課題と置いて、「相手に伝えるための解説動画を作成する」活動を国語の単元等として位置づけています。

そして各教科で実施される学習活動の中で行われる実技を学習素材として、実技を正しく行うための要点を確認した上で動画を撮影することで、他教科の実技で成功を目指すことと、国語で設定された、相手に上手く伝えるという目標が同じ方向を向く活動となっていると考えられます。

また本報告書では、様々な教科に携わる教員が参画されており、異なる教科を組み合わせた実践事例がこの他にも多数とりあげられています。

教科 学習活動の概略
国語以外の教科 実技の要点を確認し、要点が分かるように動画を撮影する。
 理科:蒸留の実験
 保健体育:マット運動・走り幅跳び
 音楽:アルトリコーダー
 家庭科:裁縫
国語 1時間目 課題を確認し、活動計画を作成する。
2時間目~4時間目 生徒グループ内で動画を作成する。
5時間目 動画を確認し、アドバイスをし合う。
6時間目~7時間目 解説動画をブラッシュアップして完成させる。
※埼玉県教育委員会「教科等横断的な視点に立った授業づくりに関する調査研究(令和6年度)」より作成

学校質問調査では

ここまでの確認では、言葉としては様々な言い方が使われながらも、1つの教科の中だけで学習を完結させるのではなく、複数の教科・領域にまたがる学習活動の実践が試みられてきたことがうかがえます。それでは、このような異なる教科を横断的に学習する取組は、現在どの程度学校教育の中で浸透しているのでしょうか。

参考資料として、全国学力・学習状況調査の中で実施されている質問紙調査では、各学校に対する質問として「調査対象学年の児童(生徒)に対して、前年度までに、各教科等で身に付けたことを、様々な課題の解決に生かすことができるような機会を設けましたか」という項目が設けられています。

昨年度の時点では、小中学校ともに80%以上の学校が「どちらかといえば、行った」と解答しています。

また、「行った」という解答が増加傾向にあることから、少しずつではありますが、各教科で身に付けた内容と諸課題の解決を意識的に結びつけて取り組む学校が多くなってきていることがうかがえます。

また、どの調査年度でも小学校の方で「どちらかといえば、行った」以上を選択した学校の割合は多くなっており、複数教科にまたがる学習場面設定が容易であることなどを由来として、小学校のほうがより積極的に実施可能な環境にあることも推測されます。

「教科等横断的な学び」の力を測る試み

学習指導要領が掲げる「資質・能力」を評価する方法として、従来の教科別テストではとらえきれない力(問題発見・解決、情報活用、思考・判断など)を教科等横断的な視点から測ろうとする調査が見られます。ここでは、千葉県と大阪府の取組、そして国際的な取組であるPISA調査を代表例として、その実践例を見ていきます。

千葉県(ちばっ子学びの未来デザインシート)

千葉県は、令和2(2000)年度から令和6(2024)年度まで展開した「ちばっ子『学力向上』総合プラン」の中で、「学習の基盤となる資質・能力としての『問題発見・解決能力』が育成されているか、教科別ではなく、教科等横断的な視点で学力の習得状況を調査測定する試み」として、「ちばっ子学びの未来デザインシート」を実施しました。

例えば、公開されている令和5年度の小学6年生向けの問題を例に取ると、1つの大問として「体力テスト」という一連の活動をテーマとして、その中で表の読解や計算、インタビュー、動画による観察、改善の提案といった、複数の教科で育まれる能力を総合的に出題する構成となっており、まさに「既存教科の複数の領域を1つの活動で同時に学ぶ」という、教科等横断的な学習が意識された出題内容となっていました。

また、動画などCBT独特のコンテンツを用いた問題も出題され、「実際の活動に即した能力の評価」という観点がかなり意識されていることがうかがえます。

大阪府(小学生すくすくウォッチ)

大阪府独自のテストである「小学生すくすくウォッチ」では、各教科の出題とは別に、「教科横断型問題(わくわく問題)」が出題されています。教科の枠に捉われず、現代的な諸課題や地域・身の回りの問題など、解が一つではない問いに対し、複数の資料や文章・会話から、自分の考えを論理的に形成し、多様な表現方法で解答するという取組がなされています。

一例として、令和6年度には「食」に関して「資料から情報を読み取り、自分の伝えたいことを示した上で、実際に伝えるためのポスターをかく」という出題がなされています。朝食や食品ロスなどに関する資料から自らテーマを選び、従来からある、文章のみを記述する解答ではなく、図や絵も使った解答とすることで、より多様な思考力、判断力、表現力を問うことができるものとなっています。

出題テーマとしても特産品や観光業の中にみられるような、大阪府ならではの題材がとりあげられることも多く、「地域や学校の特色に応じた課題」という観点による学習活動を想定した出題となっていることがうかがえます。

また、解答の評価方法についても、取り組んだ子どもたちの良い所を特に評価し、星の数で返すという特徴がみられます。

PISA調査

OECDによる実施されているPISA調査では、一般に知られる「科学的コンピテンシー、読解力、数学的リテラシー」の主要3分野に対する調査の他に、いわゆる「革新分野」と呼ばれる、主要3分野の枠組みを超えた分野に対する調査が実施されています。

特に、各調査回で新たに導入される革新分野は、表でも確認できるように、その時代において特に注目度の高い、日本で言うところの「現代的な諸課題」がとりあげられ、導入以降の調査でも必要に応じ継続的な調査分析が行われています。

主要3分野についても日本で扱われるような教科科目とは異なる枠組みとなっており、まさに「教科等横断的な評価」の1つのモデルケースと言って差し支えないでしょう。

調査実施年 新登場した革新分野のテーマ テーマの概要
2015年 協働問題解決能力 複数人が解決に必要な知識や労力を出し合うことによって、問題解決を試みるプロセスに必要な能力
2018年 グローバル・コンピテンス 知識やスキルを組み合わせ、地域間・文化間にある問題について、異なる文化を持つ人々と交流し、行動する能力
2022年 クリエイティブ・シンキング 日常のなかで課題を解決・表現するための創造的なアイデアを生み出し、評価、改善に取り組む能力
2025年 ラーニング・イン・デジタル・ワールド ICTを活用した自律的な学習を通して、問題を解決し、新しい知識を獲得する能力
※国立教育政策研究所パンフレット、PISAホームページより作成

民間による「教科等横断的なテスト」の取組

教科等横断的な力を測ろうとする取り組みは学力調査の範囲に限らず、民間等で実施されるテストとしても確認できます。

一例として、朝日新聞社が主催する「未来をつくる学びテスト」では、小学3年生に向けて、決断力・想像力・表現力を問うテストを年1回首都圏で実施しています。

公開されている過去問題としては、実際の新聞記事を題材として、日常生活で見聞きするような内容に対する問いを受けた自身の考えを述べる問題などが見られ、各教科の知識技能と同様に、課題解決能力につながる教科等横断的な力が学校以外の場でも求められていることがうかがえます。

次期学習指導要領における「教科等横断的な学び」

この記事は2026年に書かれていますが、みなさんがご存知の通り、今年度から来年度にかけて学習指導要領の改訂が見込まれています。

ここで改訂に先立ち、2025年9月に公表された「教育課程企画特別部会 論点整理」のなかで、「カリキュラム・マネジメントの現状と課題」として、「『なぜカリマネが必要なのか』が十分に咀嚼されない中、現行の書きぶりが結果として『カリマネ=教科等横断の視点での教育課程編成』と理解され、単元配列表の作成が目的化している場合もある」という課題が顕在化しているとの指摘がなされています。

「教科等横断的な学び」に相当する考え方に基づいた、教育課程の編成・指導計画の作成等が求められることに変わりはないと思われるものの、「教科等横断的な学び」があくまでも「カリキュラム・マネジメントの一側面である」という改めて確認する必要があると考えられます。

今回の記事では、「教科等横断的な学び」をめぐる具体的な取組や評価の事例をいくつか取り上げ、学習指導要領にある用語がどのように具体化されているのかという例に触れました、実際にはそれぞれの学校や地域でさまざまな制約や条件が存在していますが、今回紹介したような事例に触れることで、様々な場面で取り組まれる学習活動や評価がどう「教科等横断的」なのかと考えるための、具体的な一歩としてイメージしていただければと思います。

今後、次期学習指導要領の議論が進むにつれて、「教科等横断的な学び」の位置付けや表現も、少しずつ姿を変えていくことが予想されます。しかしながら、用語としては異なっていても「”生きる力”をはぐくむ」という目的は以前より変わらず存在し、またこれからも求められていくことが考えられます。これが新しい言葉になったとしても「教科等横断的な学び」の方向性を保つための一助となれば幸いです。

構成・文:内田洋行教育総合研究所 主任研究員 小林 純一

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