2021.02.10
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意外と知らない"カリキュラム・マネジメント"(第2回) ~データに基づいた評価・改善や、学校外も見据えた人的・物的体制の確保~

第1回では、「カリキュラム・マネジメントの三つの側面」の一つである「教科等横断的な視点での取組」について、考えてきました。第2回では、残りの「実施状況の評価と改善」と「人的・物的体制の確保」について、考えていきたいと思います。

2.実施状況の評価と改善

内容はもちろん、目標・方法・体制など全部振り返る!

カリキュラム・マネジメントに取り組む上で、その内容は適切であったか、また効果的であったか、定期的に実施状況の評価をして、その結果に応じて改善することが大事です。授業と同様、カリキュラム・マネジメントについても、振り返り(評価)や改善が重要なのです。

これはいわゆる、PDCAサイクルと呼ばれるものでPlan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)という4段階を繰り返しながら取り組むものです。カリキュラム・マネジメントについても、計画・実行するだけでなく、PDCAサイクルの考え方を用い、評価や改善まで行った上で、再度、計画や実行に反映して繰り返し取り組んでいくことが重要です。

“①何を”、“②どのくらいのスパンで”、“③どうやって”

では、PDCAサイクルで“①何を”、“②どのくらいのスパンで”、“③どうやって”評価・改善していくと良いのでしょうか?

“①何を”については、もちろんカリキュラムです。カリキュラムやそれに関わる内容について、どのような視点で見ることができるでしょうか。まず思い浮かぶのは、“内容”です。カリキュラムの内容が適切であったか、効果的であったか、ということを評価・改善します。このほか、実施する“方法”や“体制”、“時期”、その“順番”、さらには、“目標”そのものが適切であったかということも評価し、改善する必要があります。場合によっては「学校教育目標」から変えてしまうということも検討すべきかもしれませんし、そもそも目標を改めて考えるという場を設けることが、カリキュラム・マネジメントを実施するうえで、重要なポイントとなります。

大きいサイクルと小さいサイクル

“②どのくらいのスパンで”については、大きいサイクルと小さいサイクルを意識しましょう。大きいサイクルとは、例えば学期や年間などのスパンです。大きいサイクルでは、ある程度の時間をかけて取り組まなければ、適切に効果が測れない内容(育成したい資質・能力の育成状況等)を評価・改善していきます。

一方で、小さいサイクルとは、例えば単元、週ごとなどのスパンです。小さいサイクルでは、すぐ次の実践に活かすべき内容や、大きいサイクルにすると時間の経過で忘れてしまうようなことなどを、評価・改善します。また、小さいサイクルの蓄積結果を、大きいサイクルの振り返りの材料とすることもできます。

“③どうやって”については、測定する内容にもよるので、一概には言えませんが、データに基づいた評価・改善を意識することが重要です。例えば、上述②の大きいサイクルの場合、育成したい資質・能力が育成されているかどうかを、テストやアンケートで測定する例がよく見られます。

アンケートの場合、例えば、年度の初めに児童生徒にアンケートをして、同じ内容のアンケートを学期末や年度末に行います。それらの結果を比較し変化を確認することで、当初の目標に対し、どの程度の資質・能力を育成することができたかという評価をし、これに基づいて改善していくという方法もあるでしょう。このとき、児童生徒のデータだけでなく、教職員の取組についてもデータを収集し、評価・改善に努めることが大事です。

また、上述②の小さいサイクルの場合、授業で気づいたことなど、ちょっとしたメモを残しておくだけでも改善の糸口になる可能性もあります。例えば「この教科のこの単元であれば、こういった資質・能力を合わせて育成できるかもしれない」、「この資質・能力は、この単元と結び付きが良いと思っていたが、別の単元の方が良いかもしれない」という気付きなどをメモに残しておき、教職員間で共有すると、「1.教科等横断的な視点」の側面でも評価・改善することもできるかもしれません。

“実態の把握”

なお、評価・改善にあたって、重要なポイントの一つは“実態の把握”です。元々どのような状況・状態なのか、どのような課題があるのか、ということを予め把握したうえで、改善する目標を決め、改善するための計画を進めなければなりません。

「児童生徒の実態はどうか」、「学校の実態はどうか」、「地域の実態はどうか」、これらの把握をすることが評価・改善の最初のポイントとなるでしょう。

3.人的・物的体制の確保

広い視野をもち、自校ですべて完結させない

最後に、カリキュラム・マネジメントを行ううえで必要な資源についてです。

教育目標の達成のために、人員体制や教材・備品等が十分でない場合もあります。自校で育成を目指す資質・能力の育成に必要な資源は何か検討し、確保しましょう。

人的体制については、学校全体で取り組むという、チーム学校としての体制が求められます。学校の規模にもよりますが、比較的大規模な学校の場合、全教職員に役割が与えられるよう、複数の研究部会を立ち上げ、どの教職員も必ずどこかの部会に属するようにしたり、小規模な学校の場合は、地域の小・中学校と連携して、地域合同でチーム学校を作ったりすることも考えられます。

また、特に、中学校や高校では、教科等横断的な取組がしやすくなるような体制の検討が必要です。上述のような教科横断的な研究部会の立ち上げも方法のひとつですが、教科を超えた相談ができる場を定期的に設けるだけでも、互いの状況を把握する機会になります。このとき、第1回の記事で例示したような「教育課程全体で取り組む課題」が設定されており、全教職員にその共通理解があれば、「教育課程全体で取り組む課題」をキーとして、教科ごとの視点で同じ資質・能力について、話がしやすくなるかもしれません。「2.実施状況の評価と改善」にも記述した「評価・改善のための気づき」をメモした内容を共有する場として活用しても良いでしょう。

物的体制については、特に、GIGAスクール構想で学校に児童生徒用の端末(コンピュータ)やネットワークが整備されていますが、目標とする資質・能力を育むために、それらをどのように役立てるか、またどのように活用できるかも含めて検討する必要があります。そのためには、端末の使い方や、そもそもどのような場面で活用できるかというディスカッションや研修も必要でしょう。

これらの人的・物的体制についても、評価・改善は必要です。例えば、人的体制としては、年度末には、校内の体制が適切であったか評価し、次年度に向けた改善を検討したり、物的体制としては、改めて整備された端末でできることをしっかり確認し、活用実態を把握したうえで、必要に応じてアプリケーションやシステムの追加整備を検討したりすることも必要でしょう。

校外の資源も活用

また、学校内の人的・物的資源を最適に活用できたとしても、自校だけで出来ることには、限りがあります。例えば、地域の方々や近くの大学との連携なども検討して、外部とうまく連携ができると、視野が広がるかもしれません。必要に応じて、教育委員会との連携を強化したり、他校や企業とのつながりをもつことも考えられます。

第3回では、実際の取組事例を紹介します。

構成・文・イラスト:内田洋行教育総合研究所 研究員 眞鍋悠介

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

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