そろそろ5月も終わります。
新年度が始まって、2か月が経とうとしています。
学級の状況はどの様な状況でしょうか?
特に若い先生のクラスはどの様な状況でしょか?
今回は、若い先生(特に初任者)の学校での置かれている立場というものについて、レストランを例にしながら書きたいと思います。
以前は、小学校の学級担任は、「個人商店の店主」というようなイメージを持っていました。
今回、この文を書くに当たって色々と考えていたら「一人で切り盛りしているレストランのシェフ」という表現の方がより適切なのではと気付きました。
レストランは、味(授業の質)について厳しく問われます。
店内の雰囲気(教室環境)についても同様です。
評価され、SNSなどでそれらの情報が飛び交います。
「食べ物(授業)がイマイチ美味しくない。」
「隣のレストラン(クラス)の食べ物は美味しいのに・・・」
というような情報が親の間で飛び交います。
レストランであれば、いきなりお店に入った見習いの人が、お客に出す料理を作るようなことはありません。
始めは、皿洗いなどの仕事、次の段階として、基本的な食材を切ることなどを担当します。
時間を掛けながら、先輩シェフの技術を盗むように学びながら、技量を高めていきます。
そして、ある一定のレベルに達したと先輩が認めると、簡単な料理から作ることが許されるという流れだと思います。
しかし、学校の現場は、これまで書いたレストランの状況とは明らかに違います。
大学を出て、採用試験を通った人が、いきなりクラス担任を任されます。
これは先ほども書いたように「小さなレストランを一人で任された」ようなものです。
初任者は、それまで、大学で理論などを学び、教育実習などで現場を少しは見ていますが、本格的に学級経営をした経験はほとんどありません。
それなのに、いきなりレストランの「ただ一人のシェフ」のような立場になってしまいます。
例えば、アジ(4年生の算数)を調理(授業)するとします。
ベテランは、何度もアジの調理をしたことがあります。
ヒラメ(4年生の国語や理科)やマグロ(3年生の算数)を調理したこともあります。
包丁などの道具や調味料の使い方も慣れている上で、調理(授業)をしていきます。
こういった状況で、若い教師がベテランと同じような美味しい料理を作ることは難しいことです。
勿論、若い教師でも美味しい料理を作れる人はいます。
それは、センス、感覚の良い人で、料理人であっても教師であっても同様です。
ただし、それはほんの一握りの人だと思われます。
初任者を含めた若い教員は、経験が少ないので、準備や練習のために多くの時間を費やす必要があります。
しかし、それがなかなかできないような状況が今の学校現場です。
若いからという理由でレストランの見習いの仕事の様なこともしているような状況です。
例えば、学校に早く来て、掃除などをするなどのことです。
そういったことの中から、社会人として大切なことを学んでいくのだと思いますが、限られた時間の中では、優先順位が違うように感じます。
とにかく、授業のための準備に多くのエネルギーを掛けるべきです。
どんなに子どもと一緒に遊んであげる先生でも、ギャグが面白い先生でも、授業が上手でない先生は、子どもから慕われません。
学校において、一日の大半は「授業」です。
その授業の「質」を高めることが何より大切です。
また、若い教師の中には、事務仕事を効率的に行うことができていない人が多いように感じます。
事務仕事も広い意味で子どものためになりますし、必要なことです。
そういったことの中で、学校という仕組みを理解していくという面もあります。
そして、事務仕事のほとんどには「締切」があります。
遅れそうになると、担当者から催促されます。
そうなるとどうしても事務仕事を優先的に行うということになります。
日々の授業の準備は担任個人の任せられている部分が多いので、どうしても後回しになる可能性が高くなります
けれども、明らかに「事務仕事」よりも「次の日の授業の準備」の方が若い人にとっては重要です。
ただでさえ、経験の無さから上手に調理ができないことに加えて、十分な準備や練習ができていないままお客への調理(授業)をすることになります。
美味しい料理を作ること(良い授業を行うこと)はさらに難しくなります。
通常のレストランであれば、美味しくないお店には次からお客は行きませんが、学級というレストランは違います。
美味しくないと思いながらも、その店に毎日、子どもは通い、その料理を食べなくてはならないのです。
そういった状況に気付き、改善していこうと思うことのできる教員は、少しずつ良いものへと変化していきます。
一年間で随分成長します。
見違えるようになります。
しかし、そういった状況に気付かず、独りよがりなことをしていると、味は悪いままです。
子ども以上に親がフラストレーションを感じ、色々と行動を起こします。
先ほど書いたようにSNSなどでどんどん情報が流されます。
以前であれば、立ち話だけだったのもが、今は、スマホなどの情報機器を使って、非常に頻繁に、そして大量の情報(噂話のようなもの)が親同士でやり取りされます。
そして、担任に対して、「様子を聞くこと」から始まり「改善の提案」や「管理職への相談」などのアクションを起こしていきます。
更に状況が悪くなると、教育委員会に苦情を伝えるようなことへとなっていきます。
若い先生は、仕事の優先順位を付けることや時間のコントロールをすることで、授業の準備の時間をしっかりと取ることをすると良いと思います。
教師の仕事の中で、「事前にできるもの」と「事前にできないもの」があります。
授業の準備などは事前にできるものです。
例えば、流れをしっかりと確認すること、発問を考えること、板書の計画を立てること、プリントを作ること、関連する内容で子どもが興味を引きそうなことをネットから探すことなどです。
そういったものとは違い、事前に用意できないものもあります。
子どもが急に具合が悪くなってしまった、子ども同士がけんかをしてしまったなどのことです。
事前に出来るもの(授業の準備)にしっかりと時間を掛けることで、日々のクラスが安定してきます。
準備の時間を確保できることで、上手くいかなかった部分への振り返りも可能になり、同じ失敗を減らすこともできるようになります。
そういうことの積み重ねの中で、「授業力」が付いてきます。
是非、地道に「授業力」を上げるべく努力をしていってください。
充実した日々になることを願っています。
以前、若い教師の学級経営などについて書いた文章があります。
興味のある方はお暇な時にお読みください。

鈴木 邦明(すずき くにあき)
帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。
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