2014.04.24
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若い先生が意識すると良い事

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

新年度が始まり三週間が経ちました。

順調に始まったでしょうか?

 

前回も書いたように小学校の学級担任はなかなか大変です。

特にそれまで学生だった人が、教師として採用され、いきなり担任になった場合などは、さらに大変だと思います。

それまでの生活は、お金を払っていた(学費)立場だったものが、今度はお金をもらう立場になるのです。

求められるもののレベルが全く違ってきます。

大学生であれば、少し位、授業の開始時間に遅れても大丈夫かもしれません。

しかし、学校の先生が、時間に遅れることは許されません。

また、人との関わりに関しても大学生であれば、ちょっとしたミスが許される場合もありますが、学校の先生の立場では、子どもに関してミスが許されないような状況もあります。

子どもの怪我やいじめなどは、親も非常に敏感に反応してきます。

そういった部分での感覚を研ぎ澄ましていかないと様々なトラブルに巻き込まれることになります。

 

今回も若い先生が気にすると良いことをまとめました。

技術的なことよりも基本的な考え方のようなものです。

若い先生が少しでも気持ちよく仕事ができることを願います。

 

「学級における担任の立場」

若い先生が学級担任に初めてなった場合、それまでの経験は、ボランティアだったり、臨時の教員であったりということが多いです。

その場合、役割が補助的であることが多く、その役割は、授業をメインで作っていく立場ではありません。

補助的立場では、授業の流れからこぼれ落ちそうな子どものケアーをします。

軽度発達障害の子ども、家庭的に難しい問題を抱えている子ども、友達とケンカをしてしまった直後の子どもなど、様々な問題を抱えている子どもの対応をすることが多くなります。

そういった補助的役割を多く経験してきた人が初めて学級担任になって授業を自分で作り上げる時、注意することがあります。

それは、特別な支援を必要とする子どもへの関わり方です。

どうしてもそういった子どもが気になってしまうので、様々な場面で対応することになります。

そうするとクラスの他の子どもへのケアーが手薄になります。

問題を起こした子どもの対応をしている間、他の子どもは何も指示がされず、ただ、友達としゃべっている時間がすぎるということがよくあります。

一人の問題のある子どもの成長も大切です。

しかし、その子を除いた他の子ども達の成長もとても大事なことです。

どちらが大事と言えるものではないので、バランスを考えながらやっていくことが大事になります。

しかし、先ほども書いたように若い先生は、どうしても問題のある特定の子どもへの関わりに重きを置く傾向があります。

他の子ども達は、なんとなく疎外感を感じ、少しずつ教師から心が離れていってしまい、徐々にクラスの状況が悪くなっていくというケースが良く見られます。

様々なことを気にしながら学級経営をしてください。

 

 

「授業を楽しむこと」

若い先生には、自分が楽しめる授業ができるようになることをおすすめします。

 

教えるべき内容は、各教科で決まっています。

それと自分が得意とする部分とを関連させていくのです。

私の場合、若い頃、世界中をあちこち旅して回っていました。

そういうことがあり、地理や外国に関する知識は得意分野です。

それなので、そういったことを学習に利用していきます。

 

具体的に説明します。

3年生の社会では、私の学校のカリキュラムでは、学区の様子を知る事から始まります。

学校の屋上に上り、東西南北の様子を見るという流れです。

そこで、使ったのが人工衛星からの画像です。

私は普段使い慣れているヤフーの地図を利用しました。

設定を変えることで、地図が衛星からの写真に変わります。

それを利用して、日本の大きさ、緑の多さなどの説明を行いました。

次に、子どもが興味を持っているものを見せました。

今回のクラスでは野球に興味を持っている子どもが多かったので、ニューヨークのヤンキースタジアム周辺の画像を見せました。

かなりの大きさで見ることができます。

ニューヨークを見たついでに、自由の女神を見ました。

その後、エジプトのピラミッドとスフィンクス、パリの凱旋門とエッフェル塔を見ました。

真上から見たピラミッドの画像は、なかなか興味深いものです。

 

そうやって世界旅行のようなものをした後に、自分たちが住んでいる市に焦点をあてていきました。

関東地方、埼玉県、埼玉県北部・・と徐々に拡大していくと、子ども達も知っている施設が見えてきました。

ヤフーの地図で限界まで拡大すると、自分たちの学校の校庭で遊んでいる人がいる様子も見ることができました。

子ども達は、自分たちがいる校舎が見えると歓声があがりました。

 

このような流れで授業を進めると、世界と日本、そして自分の住んでいる市の関係がなんとなく見えてきます。

「世界のスケールで見ると、自分の住んでいる市は小さいけれど、実際に自分の目で見えている景色はとても大きく、不思議な感じがした。」という感想を書いている子どもがいました。

小学校3年生ですが、物事を多面的に見ることができています。

 

こういった衛星写真を使った授業は本当に面白いものです。

社会や理科において有効に活用することができます。

計画している自分がわくわくしてきます。

こんな授業をやることができれば、子どもも楽しみながら学ぶことができます。

 

色々なやり方があると思います。

チャレンジしてみてください。

 

 

「一喜一憂しないこと」

色々と気を遣う時期です。

子ども達も環境が変わり、気も遣います。

そういった状況では、一日一日子どもの状態が変化していきます。

そういった子ども達の変化にあまり一喜一憂しないことをお勧めします。

ちょっとした変化で子どもの様子は変わってきます。

天気が少し悪くなり、気圧が低くなると、それだけで子どもの様子は変わってきます。

気圧の影響で脳の血流量が変わるからだと言われています。

また、新年度にそれまで午前中授業だったものが午後までの通常の授業になった初日も子どもにとっては変化の大きい日となります。

そういった日には調子の悪くなる子どもも多く出てきます。

新しい環境で頑張ろうとしていた分、反動が大きく出てしまうこともあります。

一日調子が悪くとも、次の日には良くなっていることもあります。

あまり一日一日のことで一喜一憂せず、少し長い目で見てあげるとよいのかもしれません。

 

 

「ほどほどを意識すること」

学校教育活動においては、なかなか、こちらが思ったように上手くはいかないことが多いです。

子どもがこちらが思っているように動いてくれないことはよくあります。

そういった時に、叱ってしまったり、怒ってしまうことがあります。

しかし、それは、先日も書いたように教師の技術不足であることが多いです。

周到な準備をしたとしてもうまくいかない時があります。

そんな時のために「ほどほど」を意識することをお勧めします。

 

若い先生は、良い意味で希望に満ちています。

自分が関わることで、子どもがより良く成長してほしいと思っています。

そのこと自体は間違っていませんし、大切なことなのですが、そういったことが裏目に出てしまうこともあります。

思いが強すぎることが、子どもにとっても教師にとっても厳しいものとなってしまうことがあります。

いくら教師ががんばっても、家庭環境や子どもの素質の問題などから良い方向へ変化していかないこともあります。

教師の経験が増えてくると、教師として「できること」と「できないこと」が分かってきます。

そうなると大きな期待はあまりしなくなります。

しかし、若い先生は、思いや期待が大きい分、反動から、子どもに強く当たってしまうことがあります。

理想と現実のギャップの大きさが原因です。

「ほどほど」で良いと思えると子どもの見方も変わってきます。

子どもなりに色々と大変な環境にありながらもよくやっていると思えるようになります。

子どもに対しても、自分に対しても「ほどほど」を意識することができるとクラスが穏やかな雰囲気になるはずです。

意識を少し変えることで、大きな変化をもたらす可能性が大きいです。

是非、「ほどほど」を意識してみてください。 

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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