2010.03.30
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支えられて・・・(最終回)

岡山県教育委員会津山教育事務所教職員課 主任 高岡 昌司

 今回で最終回となりました。連載を書いた経験はありましたが、半年間も続けたのは初めてです。期間を限定したことで、結構、ワクワクしながら、日頃から感じている事を自由に執筆させていただきました。お読みいただき、ありがとうございました。

1年間の中で、連休明けの5月~6月そして、運動会明けの10月~11月は特に学級内でのトラブルが起こりやすく、また、教師と子どもの関係、クラスの状態が顕著に現れやすい傾向があります。最終回は、私の忘れられない苦い思い出を紹介します。

 随分昔になりますが・・・新採3年目の秋のこと。
当時、私は6年生37名の担任をしていました。私は、一人一人の子どもたちと毎日、生活ノートという交換日記のようなもの(帰りの会で子どもが書いて、翌日、返事を返す)をしていました。
 大成功だった(と思っていた)運動会後から数週間ほどした10~11月のある日、女子のグループの中でA子がはずされるという出来事がおこりました。A子がつらい気持ちを生活ノートで訴えてきたことでわかりました。普段の様子を見ていた中では全く気づきませんでした。私はA子を励ましながら、グループの子達に必死にA子の気持ちを伝え続けました。その結果、好転するどころか、グループのたちの不満が私の方へ向くことになりました。
 「先生は、私たちだって弱いことを全然わかっていない」
 「先生に、あれこれ言われたくない」
 「何もかも嫌だ。学校は面白くない」等々
決して、クラスが荒れているという状態ではなかったのですが、担任の私とそのグループの女子とは全く関係が切れてしまいました。

 当然、保護者が心配して相談にきました。同時に、学年主任へも私のクラスへの不安を相談したようでした。当時の頼りない私では・・・担任だけに任せることは不安だったのでしょう。どうしたらよいのか、苦しむ日々が続きました。
 私は自分なりに担任として必死に解決の道を探っていたわけですが、自分の力だけではどうすることもできませんでした。しかしながら、あるきっかけで、A子のことがクラスの中でオープンとなり、私とグループの子達だけの視点から、第三者の視点が入ったことで自分達の言動を見つめ直すこととなりました。また、保護者の後押しも大きなきっかけとなり、子どもとの関係は徐々に修正され、子どもたち同士のかかわりもよくなりました。最終的には、全員が明るい表情で卒業していくことができました。

 後々になって聞いたことでしたが、私が苦しんでいた時、学年主任の先生は保護者に対して、「高岡という人間は、決して苦しいことから逃げたり、ごまかしたりする教師ではありません。熱意を持って子どもたちと今、向き合っています。不安でしょうが信じて見守ってやってください。」とはっきりと言ってくださっていたのでした。この学年主任の言葉に私は涙が止まりませんでした。これからどんなことがあろうとも「決して、逃げたりごまかしたりはしない教師になろう」と強く決意しました。
 また、女子グループの子の母親が、「高岡先生は間違っていない」と言い続けてくれていたことも知りました。「私が否定している担任に対して、お母さんはまた別の見方をしている」ということを伝えてくださっていたのでした。子どもにとっては、親の言動はとても大きな影響力があったようです。
 これらの支えは、今でもずっしりと心の中に深く残っています。

 このような一連のことがきっかけとなり、好転することとなりました。私は、まわりの多くの方に支えられて、教師という仕事を続けてくることができたのだとつくづく思います。
きっと皆さんも同じではないでしょうか。また、今もこれから先も同じでしょう。

 一般的に、教師は年数を経るごとに、プライドばかりが高くなり、素直に非を認めたり、課題を受け入れたりすることが難しくなると言われます。思い上がってしまいがちな自分自身を振り返るうえでも、私にとって忘れられない思い出です。
 新採用時代、よく可愛がっていただいた校長先生は「先生が先生になったらおしまいである。自己満足した時に成長は止まる。」と、教師が思い上がることへの戒めを常に口にしておられました。

 私は、これまでたくさんの教育実習生を担当した経験があります。私が彼らに一番に伝えたことは、この校長先生の言葉でした。驕りがちな自分自身を戒めること、謙虚な姿勢が人も自分も育てること、周りの方の支えがあってこそ自分自身の力も発揮できること、をこれからも自戒しながら伝えていきたいと思います。
 
 半年間、誠にありがとうございました。


写真:共著『学び合い、分かり合う授業づくり―「教えること」の見直しから』(明治図書出版)2007  
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高岡 昌司(たかおか しょうじ)

岡山県教育委員会津山教育事務所教職員課 主任
教育行政職3年目です。授業談義できる場を求めています。この場を借りて授業実践や学級経営についての意見交換ができたらいいなあと思っています。専門は社会科教育です。

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