11月10日の記事で「考える力」について書かせていただきました。その中で、話し合いにおいて、『事実と考え(主張・解釈)を区別し、意識させること』の重要性を主張しました。今回は、その具体的な手立て(道具)として例を挙げていた、トゥールミン図式について紹介します。
<トゥールミン図式の概要>
自分の考えをまとめるためにトゥールミン図式を活用しています。トゥールミン図式とは、議題に対する「主張(結論)」を支える根拠を「事実・根拠(データ)」と「理由づけ」に分けて、3つの要素を構造化(図式化)したものです。イギリスの分析哲学者トゥールミンが提唱した議論レイアウトを参考にしています。
<トゥールミン図式の基本レイアウト>
(D)データ (C)主張
事実、資料から根拠 →→→ 立場や結論
2,3つの事例 ↑
↑
↑
(W)理由づけ
(D)と(C)の関連
自分の考え、資料と主張の関連理由
※ここにその子なりの考えが表現される
<ポイント>
(C) 主張はズバッと短く。AorB、賛否、二者択一など。
(D) 根拠は少なくても2~3つは挙げる。
(W) 主張(C)と事実・根拠(D)を関係づける理由(W)を具体的に書く。
このトゥールミン図式は、主に調べ活動のまとめのワークシートとして活用しています。議論場面において、同じ立場でも事実や根拠が異なること、逆に同じ事実や資料でも理由や考えが違うことを確認できます。子ども同士や教師と子どもで批判,検討し合う学び合いの道具として活用します。
PISA型読解力で言われる「連続型テキスト(物語、解説、等)と非連続型テキスト(図、地図、表等)の中から情報を取り出すだけでなく、そこから自分なりに解釈したことを熟考・評価する」という活動をトゥールミン図式の中に明確に位置づけるということであると捉えています。
<トゥールミン図式を活用した実践事例>
(中学年 安全なくらし単元「火事からくらしを守る」の実践から)
~学校は安全といえるかについて議論したB男~
B男は、単元導入段階では、「消火器が多いだけでは不安である」と、安全とはいえないと主張していました。第二次の調べ活動を通して、自分の主張が変わったことをトゥールミン図式にまとめました。
B男のトゥールミン図式より
(D)の根拠に、
・119で連絡、消防車は5分以内に来る
・消火ホースは1本20mあってつなげられる
・消火栓が各階に2,3個ずつある
・38の消防団の内、半分が応えんにくる
・はしご車は校舎よりも高い、ポンプ車も川や池から水
・消防士さんの訓練、ひなん訓練をしている 等を挙げ
(W)の理由づけには
「どこでもホースは届くし、消防車は5分以内に来る。38消防団の半分がすぐに応援に来てくれるから、パニックは心配だけど、学校は安全と言える」と調べ活動から得た複数の根拠を結びつけました。
最終的に、(C)の結論は「安全と言える」を選びました。
B男は議論における様々な意見に揺れながら、調べた資料や聞いた事に対して、安全であるという意味づけをしながら、自分の言葉で発言しました。トゥールミン図式での主張について、友達を説得するために再構築しています。ただ、どちらの立場の子も、中学年らしく自分のこだわりが非常に強いため、なかなか相手の意見を受け入れられない様子もありました。当然、感情的になり、事実と考えを区別することが難しい場面も見られます。
しかしながら、子どもたちの感情や思いつきを受容しながらも、「根拠」と「考え」を意識して区別することで、根拠をもとに自分の考えを語る力をつけていくことにつながります。年間を通して、繰り返し活用することでスキルアップしながら身につけていきます。6年ともなると、なかなか見応えのある議論ができるようになります。
中学年の場合はワークシートを吹き出しにしたり、作成段階で積極的にアドバイスしたりしています。まだまだ、客観的に納得できるような資料や働きかけの工夫が不十分です。
社会科に限らず国語や算数など他教科でも活用できます。
※写真は、ミュージカル風景“はじけ踊る身体表現”
<参考文献>
☆福澤一吉著「議論のレッスン」(生活人新書)2002。☆足立幸男著「議論の論理」(木鐸社)1984。☆高岡昌司「兵庫教育大学附属小学校研究発表会要項」社会科部提案、2005。
<トゥールミン図式の概要>
自分の考えをまとめるためにトゥールミン図式を活用しています。トゥールミン図式とは、議題に対する「主張(結論)」を支える根拠を「事実・根拠(データ)」と「理由づけ」に分けて、3つの要素を構造化(図式化)したものです。イギリスの分析哲学者トゥールミンが提唱した議論レイアウトを参考にしています。
<トゥールミン図式の基本レイアウト>
(D)データ (C)主張
事実、資料から根拠 →→→ 立場や結論
2,3つの事例 ↑
↑
↑
(W)理由づけ
(D)と(C)の関連
自分の考え、資料と主張の関連理由
※ここにその子なりの考えが表現される
<ポイント>
(C) 主張はズバッと短く。AorB、賛否、二者択一など。
(D) 根拠は少なくても2~3つは挙げる。
(W) 主張(C)と事実・根拠(D)を関係づける理由(W)を具体的に書く。
このトゥールミン図式は、主に調べ活動のまとめのワークシートとして活用しています。議論場面において、同じ立場でも事実や根拠が異なること、逆に同じ事実や資料でも理由や考えが違うことを確認できます。子ども同士や教師と子どもで批判,検討し合う学び合いの道具として活用します。
PISA型読解力で言われる「連続型テキスト(物語、解説、等)と非連続型テキスト(図、地図、表等)の中から情報を取り出すだけでなく、そこから自分なりに解釈したことを熟考・評価する」という活動をトゥールミン図式の中に明確に位置づけるということであると捉えています。
<トゥールミン図式を活用した実践事例>
(中学年 安全なくらし単元「火事からくらしを守る」の実践から)
~学校は安全といえるかについて議論したB男~
B男は、単元導入段階では、「消火器が多いだけでは不安である」と、安全とはいえないと主張していました。第二次の調べ活動を通して、自分の主張が変わったことをトゥールミン図式にまとめました。
B男のトゥールミン図式より
(D)の根拠に、
・119で連絡、消防車は5分以内に来る
・消火ホースは1本20mあってつなげられる
・消火栓が各階に2,3個ずつある
・38の消防団の内、半分が応えんにくる
・はしご車は校舎よりも高い、ポンプ車も川や池から水
・消防士さんの訓練、ひなん訓練をしている 等を挙げ
(W)の理由づけには
「どこでもホースは届くし、消防車は5分以内に来る。38消防団の半分がすぐに応援に来てくれるから、パニックは心配だけど、学校は安全と言える」と調べ活動から得た複数の根拠を結びつけました。
最終的に、(C)の結論は「安全と言える」を選びました。
B男は議論における様々な意見に揺れながら、調べた資料や聞いた事に対して、安全であるという意味づけをしながら、自分の言葉で発言しました。トゥールミン図式での主張について、友達を説得するために再構築しています。ただ、どちらの立場の子も、中学年らしく自分のこだわりが非常に強いため、なかなか相手の意見を受け入れられない様子もありました。当然、感情的になり、事実と考えを区別することが難しい場面も見られます。
しかしながら、子どもたちの感情や思いつきを受容しながらも、「根拠」と「考え」を意識して区別することで、根拠をもとに自分の考えを語る力をつけていくことにつながります。年間を通して、繰り返し活用することでスキルアップしながら身につけていきます。6年ともなると、なかなか見応えのある議論ができるようになります。
中学年の場合はワークシートを吹き出しにしたり、作成段階で積極的にアドバイスしたりしています。まだまだ、客観的に納得できるような資料や働きかけの工夫が不十分です。
社会科に限らず国語や算数など他教科でも活用できます。
※写真は、ミュージカル風景“はじけ踊る身体表現”
<参考文献>
☆福澤一吉著「議論のレッスン」(生活人新書)2002。☆足立幸男著「議論の論理」(木鐸社)1984。☆高岡昌司「兵庫教育大学附属小学校研究発表会要項」社会科部提案、2005。




高岡 昌司(たかおか しょうじ)
岡山県教育委員会津山教育事務所教職員課 主任
教育行政職3年目です。授業談義できる場を求めています。この場を借りて授業実践や学級経営についての意見交換ができたらいいなあと思っています。専門は社会科教育です。
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