2009.11.24
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

考える力 2 ~子どもの身体性~

岡山県教育委員会津山教育事務所教職員課 主任 高岡 昌司

 前回に続き、話し合い活動で、教師の発問と合わせて、気になっていることがあります。
 それは、子どもたちの身体性に関することです。「最近は、子どもをじっと席につかせておくだけでも大変です」という声をよく聞きます。一人ひとりに対する支援のニーズが増え、実際の学校現場は本当に大変だと思います。教師の対応をみると「ちゃんとしなさい」「前を向きなさい」などの声かけや姿勢を正すことに終始している場面が多いように感じます。
 しかしながら、考えてみると、どの子も45分なり50分ずっとよい姿勢のまま座っておくのは苦痛ではないでしょうか。脳科学の研究からもじっと座って考えるよりも動きながら考える方が脳は活性化するとも・・・言われます。
 授業は動と静、メリハリが大切です。私は、授業の中で、もっと動きのある授業展開をすることが、発問とともに必要だと思うようになりました。子どもが身体をひらき、心の開放がある中で、授業としてもメリハリをつけるためにも、ずっと座学という学習活動(形態)では難しいのではないでしょうか。

 今回は、私なりに実践してきた一例を紹介します。
 (1)挙手だけでなく、意見をもった子は次々と起立させる
 (2)自由に動くこと(相談すること)を保障する
 (3)小グループの活動を必ず授業の中に位置づける
 以上、動きをつくる活動を意図的に仕組むということです。

 (1)について、挙手だけで進める授業では動きがつくりにくい面があり、単調な授業の原因でもあります。教師からの指名や列指名などを取りいれながら、合わせて、「意見がもてた人は立ちましょう」と少しでも考えが持てた子には次々と起立させます。座っている子は当然、次第に考えざるを得ない状況になります。そこに教師が支援や助言に入ります。(参照:写真中)

 (2)について、起立した子は起立している者同士で、自由に意見交換をしてもよいこととします。座っている子へのヒントや言葉がけも授業のじゃまにならない範囲(子どもなりの授業全体への配慮)で認めます。ここでどの程度時間をとるのかなどは内容や状況によってかわりますから、毎回同じというわけではありません。45分の内3~5分のこともあれば、半分以上のときもあります。また、そのまま席に戻らず、集まったその場で発表をさせることもあります。(参照:写真上)
 もちろん、学習のまとめや意見の整理をするときなどは一旦席に戻り、ノートに書かせるなどのメリハリはつけます。

 (3)については、話し合いの内容によって、意見や立場が分かれる時などに、小グループで話し合いをさせます。机や椅子を動かすこともあります。時には、黒板前や席の周りに集まり相談したりすることもあります。(参照:写真下)社会科の話し合い(討論)などでよく実践しました。
 
 このように、1時間の授業の中で動きをつけることが、子どもの身体をひらき、心の開放につながりやすいと考えています。授業の雰囲気をやわらかくし、何でも話せる自由な場づくりを意図的につくりだすのです。このような指導を進めていくことで、いつしか友達同士で意見交換をすることが当たり前になってきます。最初は男女や好きな者同士で集まる傾向がありますが、ここに対しては、当然、自由に相談できることの意味や話し合いの意義を伝えながら、指導をいれていきます。
 「考える力」を育てる授業づくりでは、子ども同士の対話をどのタイミングで、どのようにシステム化していくのか重要であるように思います。(実際は試行錯誤の日々ですが・・・)
 カルテによる座席表指導案で有名な築地久子氏や服部英雄氏(兵教大附属小学校)など先達の実践に学びながら、子どもの身体性という視点から「考える力」について、私なりに取り組んだものです。
091124a.jpg091124b.jpg091124c.jpg

高岡 昌司(たかおか しょうじ)

岡山県教育委員会津山教育事務所教職員課 主任
教育行政職3年目です。授業談義できる場を求めています。この場を借りて授業実践や学級経営についての意見交換ができたらいいなあと思っています。専門は社会科教育です。

同じテーマの執筆者
  • 関田 聖和

    兵庫県神戸市立桜の宮小学校 特別支援教育士スーパーバイザー(S.E.N.S-SV)

  • 前川 修一

    明光学園中・高等学校 進路指導部長

  • 鈴木 邦明

    帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師

  • 村上 稔

    陸中海岸青少年の家 社会教育主事

  • 中村 祐哉

    広島県公立小学校 教諭

  • 泊 和寿

    石川県金沢市立三谷小学校 教諭

  • 宗実 直樹

    兵庫県姫路市立坊勢小学校 教諭

  • 今林 義勝

    福岡市立千早西小学校 教頭 今林義勝

  • 高橋 英路

    前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
    山形県立米沢東高等学校 教諭

  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

  • 笠原 三義

    戸田市立戸田第二小学校 教諭・日本授業UD学会埼玉支部代表

  • 篠田 裕文

    佛教大学大学院博士後期課程1年

  • 赤堀 達也

    旭川市立大学短期大学部 准教授

  • 川上 健治

    明石市立錦が丘小学校 教諭

  • 山本 裕貴

    木更津市立鎌足小学校

  • 深見 智一

    北海道公立小学校 教諭

  • 宮澤 大陸

    東京都東大和市立第八小学校

  • 今村 行

    東京学芸大学附属大泉小学校 教諭

  • 石元 周作

    大阪市立野田小学校 教頭

  • 平野 正隆

    東京都品川区立学校

  • 古市 剛大

    岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭

  • 安井 望

    神奈川県公立小学校勤務

  • 山本 優佳里

    寝屋川市立小学校

  • 青木 信一

    大阪市立中学校教諭、日本キャリア教育学会認定キャリアカウンセラー

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop